ワードやエクセルの軽いファイルならば、メールに添付して送れっても問題ないが、画像をふんだんに使ったPDFやパワーポイントのファイルは数十メガバイトの大容量になることも珍しくない。社内や社外の人と共有したくても、メールでそのまま送るのは迷惑だし、そもそも受け取れないかもしれない。そんな時に便利なのが「オンラインストレージ」だ。従来から各種サービスがあるが、容量や共有の仕方の面で進化を遂げたサービスが登場している。
オンラインストレージは簡単に言ってしまえば、インターネット経由のファイル保存サービスだ。保存(アップロード)したファイルは、パソコンとインターネット環境さえあれば、どこでも取り出せる(ダウンロード)のに加え、特定の人にファイルを公開して共有できるのが最大の魅力だ。
今回は無料で使えて、サービスの安定性も高いと思われる5種類のオンラインストレージを比較する。大容量ファイルをスムーズにさまざまな人とやりとりしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてほしい。
各サービスの容量と手続きをチェック
今回ピップアップするサービスは「Oosah」「Dropbox」「SkyDrive」「quanp」「firestorage」の5種類。すべて無料で利用が可能となっており、有料で容量や機能の追加を行っているサービスもある。
サービス名 | 運営会社 | 容量 | 対応言語 | URL | 有料オプション |
---|---|---|---|---|---|
Dropbox | Evenflow | 2GB | 英語 | http://www.getdropbox.com/ | あり。容量追加 |
firestorage | ロジックファクトリー | 無制限 | 日本語 | http://firestorage.jp/ | なし |
Oosah | Oosah | 1TB | 日本語(一部) | http://www.oosah.com/ | なし |
quanp | リコー | 1GB | 日本語 | http://www.quanp.com/ | あり。容量追加 |
SkyDrive | マイクロソフト | 5GB | 日本語 | http://skydrive.live.com/ | なし |
まず、各サービスを利用する上での手続きだが、どれも難しいことはない。基本的に名前と、メールアドレスの入力で完了だ。ただし、SkyDriveはマイクロソフトの各種サービスを利用するのに必要な「Windows Live ID」の取得が必要となる。逆に、すでにWindows Live IDを持っていれば、パスワードの入力だけで利用可能と一番お手軽だ。
一番特殊なのはDropboxだろう。ウェブサイト上で各種登録を行うわけではなく、まずは専用のアプリケーションをパソコンにダウンロードし、それを実行するとウィザードが起動する。後はウィザードに従って、必要な情報を入力していくようになっている。さらに、サイトもウィザードもすべて英語と日本人ユーザーにはわかりにくい面がたくさんあるが、それをカバーするだけの機能やサービスを持っている。詳しくは後述しよう。
続いては保存できる容量だが、firestorageが無制限とダントツだ。ギガバイト単位の巨大なファイルを扱いたい人にはピッタリだろう。次に続くのは最大1テラバイトのOosahだが、これには大きな難点がある。アップロード可能なのは、「JPEG」や「PNG」形式などの画像ファイル、AVIやMPEG、FLVなどの動画ファイルというようにメディア系のファイルに限られているのだ。資料用のデジカメ画像や動画を扱うには向いているが、エクセルやワード、PDFなど仕事上必須となるドキュメント系のファイルに対応していないため、ビジネスの現場ではやや使いにくい。
SkyDriveは最大5ギガバイト、Dropboxは2ギガバイト、quanpは1ギガバイトと先に挙げた2つに比べて少ないが、Dropboxとquanpは有料オプションで追加できるようになっている。Dropboxは月額9.99ドルまたは年額99.99ドルで50ギガバイトまで利用可能なプラン、quanpは月額300円で10ギガバイト、月額980円で100ギガバイトと電話サポートが受けられる2つのプランを用意しており、目的によって選べるようになっている。
アップロード/ダウンロードは簡単か?
次は肝心の使い勝手の面をチェックしよう。ここで見ていくのはファイルのアップロードとダウンロードの手順だ。
利便性という点ではDropboxに軍配が上がる。専用のアプリケーションを導入すると、パソコンの「マイドキュメント」フォルダー内に「My Dropbox」フォルダーが作成され、そこにファイルを保存すると自動的にオンラインストレージ上にアップロードしてくれる。ユーザーがアップロードという作業をほとんど意識する必要はない。
さらに優秀なのはファイルの変更履歴を残すことだ。例えば、企画書というファイルを毎日更新してアップロードを繰り返した場合、その履歴をすべてバックアップしてくれるので、3日前の状態に戻すこともすぐできる。間違ってファイルを上書きしても、すぐに元に戻せるのは心強い。このサービスを利用したいパソコンにそれぞれ専用ソフトを入れる手間はかかるが、それを差し引いても便利である。なお、ブラウザーを使ってのアップロード、ダウンロードも可能だ。
firestorage、Oosah、SkyDriveの3つはブラウザーからファイルをアップロード、ダウンロードするタイプだ。ブラウザーのある環境ならば自宅、会社、ネットカフェを問わずに利用できるのが大きな魅力といえる。
firestorageで面白いのは、複数のファイルを同時にアップロードした場合、それらをZIP形式のファイルとして1つにまとめる機能があることだろう。大量の資料や写真をアップロードしたいときに便利だ。firestorageでダウンロードするには、アップロード時に発行されるダウンロードURLへのアクセスが必須となる。他人にファイルを渡すときにはそのURLをメールで送ればいいのだが、自分でアップしたファイルを別のパソコンで取り出すというようなことを頻繁にする場合には少々面倒となる。
Oosahは「Upload」ボタンからアップロードしたいファイルを選ぶだけとシンプルだ。ダウンロードは、ファイルをクリックすると右上に表示される「▼」ボタンをクリックして、「Download」を選択する必要があるが、少々わかりにくい。
SkyDriveは、パソコンのフォルダーと同じ感覚で使えるのが魅力だ。最初から「写真」「文章」などいくつかのフォルダーが用意され、「ファイルの追加」ボタンを押して、「ここにファイルをドラッグ」と書かれたエリアにファイルをドラッグ&ドロップするだけ。ブラウザーでのサービスとしては一番直感的で使いやすいだろう。ダウンロードは、ブラウザー画面上で目的のファイルをクリックするだけとこちらも簡単だ。
ユニークなのはquanpだ。通常のアップロード、ダウンロードはブラウザーで可能だが(ベータ版)、専用アプリケーション「quanp.on」をインストールすると、ファイルを3Dで並べて表示できる。時系列に並べるので、いつ作成したファイルなのか視覚的に捉えられ、しかもワードやエクセル、PDFの内容をサムネイル表示するので、目的のファイルも探しやすい。アップロードとダウンロードをドラッグ&ドロップでできるようにもなるので、非常に手軽だ。
ここまでの内容をまとめると、専用ソフトが不要ながらデスクトップと同じようにファイルを扱えるSkyDriveが一番使いやすいだろう。複数のファイルを効率よくアップロードしたいなら、ZIP圧縮機能のあるfirestorageがベストだ。そして更新履歴を残したいならDropbox、写真や動画の管理ならOosah、ファイルの内容を確認しながら管理したいならquanpとなる。これがベストだとは言い切れないが、目的に合わせて選ぶのがいいだろう。
サービス名 | 制限 | アップ/ダウンロードの方法 |
---|---|---|
Dropbox | 1ファイル350MBまで | 専用ソフト/ブラウザーの両対応 |
firestorage | 1ファイル2GBまで | ブラウザー |
Oosah | 1ファイルにつき動画は200MB/画像は50MB/音楽は9MBまで | ブラウザー |
quanp | 特になし | 専用ソフト/ブラウザーの両対応 |
SkyDrive | 1ファイル50MBまで | ブラウザー |
次回はビジネスの場でもっとも重要となる「ファイル共有機能」と「速度」、そして各サービスならではの機能などを詳しくチェックしていきたい。
(フリーライター・エディター 芹澤 正芳)
[IT PLUS 2008年10月23日掲載]
ウィンドウズ7では、標準のメールソフトが「ウィンドウズ・ライブメール」になった。XPの「アウトルック・エクスプレス」やビスタの「ウィンドウズ…続き (2/28)
この講座では、エクセル2010の使い方を基礎から紹介していきます。今回解説するのは、入力のコツ。名簿や住所録など、大きな表に大量のデータを入力するようなときは、作業の手間を省く機能を利用すると、エク…続き (2/21)
掲示板にA4サイズの文書を張り出したものの、反応はいまひとつ――。このような場合に注目度を上げるには、拡大印刷で…続き (2/14)
ファーウェイとHTC、新型スマホでクアッドコア競う (2/27)
小澤の不等式の実験、80年の混乱を解消 (2/25)
アスクル、顧客の声を基に段ボール84万キロ削減 (2/28)
三菱商事、メキシコで大規模な風力発電事業に参画 (2/27)
世界のスマートシティ責任者が日本に集結、復興策を提案へ (2/27)
師匠は「鉄輪」、転がり抵抗4割減 (2/15)
米CAD大手、日本人の知恵を「カイゼン」に生かす (2/28)
2012年2月28日付 (2/27)
「京」の100倍速…次世代スパコン、日本に遅れ (2/25)
原発ビジネス、海外で再始動 今後の課題は人材育成 (2/27)
覚えきれないならメモやツールを賢く活用 (1/22)
組織超えた「情報共有」が鍵、高まるハッカー需要 (2011/12/21)
・エルピーダ、会社更生法の適用を申請
・栗田工業、逆浸透膜用の薬品拡販、3年で3~4倍に
・ISID、アマゾンのクラウドに専用回線で接続
・ヤマハ発、環境配慮の燃料噴射装置、ASEAN向け標準搭載
・神鋼、加古川製鉄所の補助燃料を変更…続き