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東電・東通原発計画に暗雲 経営悪化、国の政策混沌

東電の西沢社長(右)に東通1号機の工事再開を要望する越善東通村長=2日、東電本店

 東京電力の実質国有化が現実味を帯びる中、福島第1原発事故の影響で建設が中断した東電東通原発1号機(青森県東通村、出力138万5000キロワット)の工事再開の見通しが立たない。西沢俊夫社長は「東通は重要な地点」と語るが、経営状態は廃炉や賠償費用で追加の公的資金注入を待つほどに悪化。国の原子力政策の行方も混沌(こんとん)としており、「建設断念」の可能性がちらつき、再開を望む村は懸念を強めている。

<再開を迫る>
 東電東通1号機は2011年1月に着工した。同年4月に主要施設の工事に入り、17年3月の運転開始を計画していたが、原発事故によって工事は中断したままだ。村内には東通2号機の建設計画もある。
 越善靖夫東通村長は今月2日、東電本店に西沢社長を訪ねて工事再開を求めた。越善村長は「1965年に村議会で誘致を決議し、ずっと協力してきた。工事再開が遅れるほど地域経済に大きな影響を与える」と迫ったが、西沢社長は明言を避けた。
 理由は東電の経営状態と、見直しが進む原子力政策の行方だ。
 東電が13日に発表した2011年4〜12月期の連結決算は純損失が6230億円と、過去最大の赤字となった。原発事故後の供給力不足を補うために増強した火力発電で燃料費がかさんだのが原因だが、福島第1原発1〜4号機の廃炉に伴う負担も響く。国の追加支援で乗り切った形だ。

<投資を抑制>
 国の原子力政策の見直し論議でも、東通1号機のように建設段階にある施設の先行きは不透明になっている。
 東電は決算発表と同時に第2次緊急特別事業計画を国に提出し、発電所の新設については「他社電源を最大限活用するなど設備投資の抑制を行う」とした。この計画を下地にして3月末には総合特別事業計画をまとめる方針で、東通原発の今後の方向性も示すとみられている。
 西沢社長は東通1号機の建設断念の可能性を記者団に問われ、「それも含めて検討する」と述べ、中止が選択肢にあることを示唆している。

<雇用が心配>
 厳しい状況に東通村の懸念は深まる。今後も税金を原資にした1兆円規模の資金注入を受ける東電に対し、原発増設を迫る難しさがある。
 東通1号機の準備工事に携わった村内のトラック運転手(42)は「原発事故を起こした東電が新しく原発を造ることは難しいだろう」と言う。その一方で「自分たちの生活や雇用を考えると、建設中止を認めるわけにはいかない」と胸の内を明かす。
 村幹部は「東電をめぐる情勢が厳しいのは分かるが、村が早期の工事再開を求める姿勢は変わらない」と話している。


2012年02月27日月曜日


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