〔焦点〕会社更生法申請のエルピーダ<6665.T>、再建には提携不可欠 東芝も新たな候補に
[東京 28日 ロイター] 27日に法的整理に踏み切ったエルピーダメモリ(6665.T: 株価, ニュース, レポート)。だが、一定の債務が免除されても再建に向けて険しい道のりが続くことに変わりはない。競争の厳しいDRAM業界で今後も生き残り、業界トップの韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)に対抗するためにも規模の拡大や経営の安定は不可欠で、今後も他社との提携を探らなければ再建は難航が予想される。提携候補としてこれまで米マイクロン・テクノロジー(MU.O: 株価, 企業情報, レポート)などが検討されていたが、新たに東芝(6502.T: 株価, ニュース, レポート)や韓国のハイニックス半導体(000660.KS: 株価, 企業情報, レポート)も浮上する可能性がある。
<東芝との提携の可能性も>
「東芝との話が進む可能性がある」――。米調査会社IHSアイサプライの南川明・主席アナリストは、エルピーダが会社更生法の適用を申請したことで東芝と連携する可能性が高まったと指摘する。東芝の佐々木則夫社長は1月の新年祝賀会で、「エルピーダが今のような経営状態のままで一緒にやることは難しい」と慎重な姿勢を示した。だが裏を返せば、債務免除や赤字解消後は検討の余地が生じるとも解釈できるためだ。
東芝はかつて行き詰ったDRAM事業から撤退した経緯があり、NAND型フラッシュメモリーを主力として強化してきた。だが、そのNANDも価格下落や為替の円高に苦しめられている。エルピーダと提携すれば、DRAMと両方を持つことでリスクが軽減されるほか、工場の転用も可能で投資効率が改善されるため、「東芝がなんらかの提携を将来的に考えてもおかしくない」(南川氏)とみられている。
<対サムスンで海外勢と連携も>
「シェア30%を頭に描いている」。続投を表明したエルピーダの坂本幸雄社長は同日の会見で、生き残るために必要なシェアとしてこの数字を掲げた。だが、台湾の半導体業界調査会社ユーリカ・インターナショナルのチーフ・エグゼクティブ、ジョイス・ヤン氏は「長期的にみれば、エルピーダは依然として競争力に問題がある。同社の歩留まりはあまり高くない」と指摘。今後のDRAM価格が上昇するかどうかも読めず、再び円高が進む可能性が残る中で、「サムスンに立ち向かい、このシェア目標を単独で実現するのは無理」(半導体業界関係者)との声も出ている。
DRAMのシェア(米IHSアイサプライ調べ、11年7 9月期の出荷ベース)は、サムスンが45.1%と、ウォン安を追い風に独り勝ち状態。2位のハイニックスが21.6%、3位のエルピーダが12.2%、4位のマイクロンは12.1%。これまで提携先候補として名前が挙がっていたマイクロンとエルピーダを足しても24.3%に過ぎず、サムスンとの差はまだ20%以上ある。そこで、「ハイニックスも巻き込めば一気に並ぶ。サムスンと戦えるだけの連合軍を組むという選択肢もある」(半導体業界アナリスト)。
<坂本社長続投、提携に吉と出るか>
これまでも提携についてはマイクロンや同社と技術面で提携関係にもある業界5位の台湾・南亜科技(2408.TW: 株価, 企業情報, レポート)などが取り沙汰されてきたが、マイクロンの会長兼最高経営責任者だったスティーブ・アップルトン氏が今月3日に飛行機事故で急逝するなど不運も重なった。坂本社長も提携には「いろいろな案があったが、具体的な形では出てこなかった」と、最終的な締結まで至らなかったことが会社更生法適用申請の背景にあることを説明した。だが、今後の再建でも「やはり提携が欠かせない」(半導体業界アナリスト)。そして今後の提携を模索する上で、続投を表明した坂本社長の役割が吉と出るか凶と出るかは意見が分かれるところだ。
通常の会社更生法の手続きでは経営陣は退任するが、エルピーダは主要債権者の同意などを前提に一部経営陣が残って引き続き再建に携わる「DIP型更生」を採用した。坂本社長は「債権者の理解を得ながら現経営陣を中心にやっていきたい」と続投に意欲を示し、会見に同席した申立代理人の小林信明弁護士も「半導体業界は高度な専門性が求められる。坂本氏に再建を全うしてもらうことが経営責任を果たすことになる」と述べた。
これについては、「公的支援を受けてさえこれまで立て直せなかった社長が続投したところで、はたして再建できるのか」(市場関係者)と疑問視する向きもあるが、「業界内での人的つながりが豊富な坂本社長でなければ、今後の提携交渉も進めにくい」(IHSアイサプライの南川氏)と期待する声もある。
会社更生法の適用を申請しても、エルピーダが半導体の生産が停止するわけではないが、更生計画が見えないうちは「顧客はエルピーダとの取引を見送らざるをえず、ライバルに隙を与えかねない」(別の半導体業界アナリスト)。「顧客はエルピーダから離れ韓国メーカーに向かい、その結果、韓国勢のシェアが上がることになる」(韓国シンヤン証券のアナリスト、リー・スンウ氏)との見方もあり、早急に国民やステークホルダーに説得力ある更生計画を打ち出す必要がある。
(ロイターニュース 白木真紀、浜田健太郎、浦中大我 取材協力Hyun Joo Jin、Clare Jim;編集 長谷部正敬)
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とん挫した「日の丸半導体」
経営再建中のエルピーダメモリは、会社更生法適用を申請。国の全面支援を受けた同社は生き残りの道を描ききれなかった。
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