開発した放射線測定器を手にする小倉さん。コードの先に放射線をとらえる「シンチレーター」がある |
信大理学部(松本市)物理科学科の竹下徹教授(57)=素粒子物理学=と同4年生の小倉隆義さん(25)が、従来より小型、安価で高性能という放射線測定器を開発した。すべて市販の部品を使っているため費用は約3千円で、ポケットに入る大きさ。放射線の持つエネルギーも測定できるため、セシウムやストロンチウムなど放射性物質の種類も分かる。
今回開発した測定器のポイントは、放射線が当たると発光する「シンチレーター」という物質と「半導体光センサー」の組み合わせ。放射線がシンチレーターに入ると、中にある電子をはじき出し、それが光に変わる。その光をセンサーで捉え、放射線の数を数えて表示する。コンピューター・シミュレーションで検証した結果、感度は市販の5〜10万円の測定器と同等という。この数を1時間当たりの放射線量に換算して表示することもできるようになる。
開発のきっかけは東京電力福島第1原発事故。竹下教授は放射線の専門家として何かできないかと考え、素粒子物理学の実験などに開発・利用してきたシンチレーターや半導体光センサーを組み合わせ、測定器を開発することに決めた。同教授のアイデアを基に、小倉さんが卒業研究として開発に取り組んだ。
現在の大きさは縦7センチ、横10センチ。5個あるICチップをまとめるなどすれば、より安価で小型化できるという。同教授は「部品はすべて市販品のため誰でも作れる。企業が製品化に取り組んでくれればうれしい」と話している。