東京電力福島第一原子力発電所の事故の検証を進めてきた民間の事故調査委員会が、28日、報告書を公表します。
この中では、政府内部で事故直後から被害拡大への危機感が強まり、当時の枝野官房長官も「東京でも避難が必要になる『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った。そうならないよう押さえ込まなければいけないと考えていた」と心境を明かしていることが分かりました。
エネルギー問題の専門家や元検事総長ら6人の有識者が委員を務め、国から独立した立場で原発事故の調査を進めていた民間事故調=「福島原発事故独立検証委員会」は、去年の9月から半年間にわたって日米の政府関係者らおよそ300人に聞き取りなどを行ってきました。
28日に公表される報告書によりますと、事故の3日後の去年3月14日には、福島第一原発の当時の吉田昌郎所長から「炉心の溶融が進み、燃料が溶け落ちる可能性が高まった」との情報が当時の細野総理大臣補佐官に伝えられ、官邸や専門家の間に強い危機感が広がったということです。
福島第一原発では、3月14日から15日にかけて2号機の核燃料が冷却水から露出して破損し、圧力抑制室から大量の放射性物質が外部に放出されたとみられています。
当時、官房長官として政府のスポークスマンを務めた枝野経済産業大臣は、このころを振り返り「核燃料が露出する状態が続けば、多くの放射性物質が漏れて作業員が立ち入れなくなる。近くの福島第二原発など、ほかの原発にも影響が広がって最終的には東京でも避難が必要になるという『悪魔の連鎖』が起きるおそれがあると思った。そうならないよう事故を押さえ込まなければいけないと考えていた」と心境を明かしていることが分かりました。
そのうえで、「こうしたシナリオは官邸で共有されていた」と述べているということです。
官邸が描いていた最悪のシナリオが当時、表に出ることはありませんでした。
政府の情報発信について民間事故調は報告書の中で、「迅速な情報開示と、正確性の確保という2つの要請のせめぎ合いの中で試行錯誤していた様子がうかがえる」と分析し、今後、議論を進める必要があると指摘しています。
[関連リンク] |
|