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高裁で国の水俣病基準を否定

2月27日 18時15分

高裁で国の水俣病基準を否定
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水俣病の認定を巡る裁判で、福岡高等裁判所は「現在の国の判断基準だけで認定するのは不十分だ」と指摘し、申請後に亡くなった女性について、熊本県に水俣病の認定を命じる判決を出しました。
高等裁判所が国の認定基準を否定する判断を示したことで、未認定患者の救済の流れに影響を与えることも予想されます。

この裁判は、昭和49年に水俣病の認定を申請し、3年後に死亡した熊本県水俣市の女性を巡って争われたもので、1審の熊本地方裁判所は、平成7年に申請を退けた県の判断を「妥当だ」とする判決を出していました。
27日の2審の判決で、福岡高等裁判所の西謙二裁判長は「現在の国の判断基準だけで水俣病かどうかを認定するのは不十分だ」と指摘しました。
そのうえで、女性の手足に感覚障害があったことなどに加え、当時の生活状況なども検討して、「水俣病と認められる」と結論づけ、県に患者としての認定を命じる逆転判決を言い渡しました。
水俣病の認定を巡っては、おととし、大阪地方裁判所も国の認定基準を否定する判決を出しています。
今回、高等裁判所が同様の判断を示したことで、認定を求める人が今後増え、未認定患者の救済の流れに影響を与えることも予想されます。

未認定患者の救済策に影響も

昭和52年に国が示した水俣病の判断基準では、「感覚障害」や、視野が狭くなる「視野狭さく」など、複数の症状があることが水俣病の認定に必要だとしています。
この基準に適合せず水俣病と認められない人たちは各地で裁判を起こしていますが、このうち平成16年の関西訴訟の最高裁判決は、一定の要件を満たせば感覚障害があるだけで水俣病と認める判断を示しています。
また、おととし7月の大阪地方裁判所の判決でも「医学的な正当性を裏付ける的確な証拠はなく、基準を満たさない場合でも総合的に考慮して水俣病と認められる」と、国の認定基準を明確に否定しています。
今の基準だけで水俣病かどうかを判断するのは不十分だとした今回の判決を受けて、認定を求める人が増えることも予想され、7月末で申請が締め切られる、未認定患者の救済策に影響を与えることも予想されます。

原告側“有益な判決”

原告の弁護士は「国の認定基準を否定した全面勝訴だ。生活歴や病状などを総合して水俣病の患者を認定し、行政に対応のやり直しを求める有益な判決で、上告しないよう求めたい」と話しました。

熊本県“国と協議したい”

熊本県の蒲島郁夫知事は「判決については重く受け止めている。判決の内容を聞いたばかりなので、今後は国と協議していきたい」と述べました。

環境省“相談あれば熊本県と協議”

今回の判決について、環境省特殊疾病対策室は「判決の内容をまだ確認していないので、コメントは差し控えたい」としたうえで、「被告が熊本県であり、県から相談があれば一緒に協議していきたい」としています。