【ウィーン樋口直樹】国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は24日、イランによるウラン濃縮活動の大幅な拡大を示す報告書をまとめ、35理事国へ配布した。イランは、米国やイスラエルの空爆を想定して中部フォルドゥの地下に建設した第2ウラン濃縮施設で、遠心分離機を倍増。さらに濃縮能力の拡大を計画しており、濃縮停止などを求める欧米に真っ向から対抗する姿勢を示している。
毎日新聞が入手した非公開の報告書によると、イランは昨年12月中旬、濃縮度20%ウランの製造を開始。昨年11月の事務局長報告以降、遠心分離機を約700台に倍増し、今月中旬までに約14キロを製造した。さらに約2090台分の拡張を準備している。
イランは中部ナタンツの第1濃縮施設でも昨年11月以降、遠心分離機を1100台以上増加させ、約8800台を稼働可能な状態に置いた。さらに約6200台分の拡張工事を終えた。これまでに製造した20%濃縮ウランは約95キロに達し、フォルドゥ分を加えると計109キロとなる。
兵器化には濃縮度を90%以上に高める必要があるが、20%に達すれば必要工程の大半を終えたことになる。イランが現有する20%濃縮ウランの量では原爆1個分に足りないが、濃縮度5%以下のウランは、濃縮度を高めれば原爆数個分に相当する量が既に製造されている。
ナタンツでは主力の旧型遠心分離機「IR1」に加え、開発実験エリアに改良型「IR4」と「IR2m」も設置されている。イランは今月初め、さらに「新型」3タイプの遠心分離機の導入計画をIAEAに通知した。
毎日新聞 2012年2月25日 東京夕刊
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