東京電力福島第1原発の事故を受け、全国原子力発電所所在市町村協議会(全原協)会長の河瀬一治・福井県敦賀市長らは4日、首相官邸で福山哲郎内閣官房副長官らに会い、菅直人首相宛ての要望書を提出した。まず原発事故の事態の収束に取り組むとともに、緊急時の代替電源確保などを要請。首相が原発増設計画の見直し方針を示している点に関しては、時期尚早との思いを伝えた。
河瀬市長や山口治太郎美浜町長、福島県双葉町の井戸川克隆町長ら全国3市4町の8人が首相官邸を訪れ、福山副長官、芝博一首相補佐官に7項目を要請。原発災害の早期の収束や緊急安全対策の実施、徹底的な原因究明と対策などを求めた。県原子力発電所所在地市町協議会としても同時に、安全確保など6項目を要請した。
エネルギー基本計画の見直し方針について河瀬市長は「国としてぶれないエネルギー政策をやってほしい」と要請。福山副長官は「まずは災害の復旧支援、事態の収束に全力を挙げる」と話す一方、エネルギー政策見直し論議には触れなかった。
要請後、河瀬市長は記者団に「あくまで今は事故の収束、原因究明などが最優先課題」と強調。「住民の多くが雇用などで原発に関わる自治体にとって、原発廃止はあり得ない。政府には想定外を想定内に変える安全対策をしてほしい」と述べた。
経済産業省では松下忠洋副大臣に同様の安全対策を求めた。松下副大臣は「要望を一つ一つ十分受け止め、事故原因を含めしっかり検証したい」と答えた。原発をめぐる今後の対応では「みなさん(原発立地地域)の意見を聞き、相談させてもらいたい」と述べ、今は事態の収束、安全対策などに優先的に取り組む意向を示した。
民主党本部で副幹事長の糸川正晃衆院議員にも要請書を渡した。
政府は、2030年までに原発を現状より14基以上増やすなど、原子力の積極的な利用拡大を図るとするエネルギー基本計画を閣議決定。今回の事故を受け、菅首相は3月31日、基本計画を白紙にして見直す方針を表明した。日本原電敦賀原発3、4号機増設も影響を受ける可能性がある。