関西で投資ファンドを運営するあるマネージャーは橋下市長の「資産課税構想」を聞くと、さっそく不動産や上場株式への投資を手仕舞う方針を決定。今後、海外のオフショア(租税回避地)に資産を移動させた上、国内では資産価値を測りにくい非上場企業へ投資をシフトさせると明かす。
資産規模10億円のある個人投資家は世界的に富裕層への増税ムードが高まる中で日本でも資産税が導入されると見越して、昨年より資産移動を開始。東南アジア諸国の銀行に預金を移すと同時に、海外不動産投資にカネをつぎ込む一方で、国内では狭いマンションに住み、現金はタンス預金として保有、国内株式への投資はほぼすべて清算したという。
「いま日本の富裕層に特に人気なのは香港。中でもHSBCの口座に資産を移す人が多く、日本から現金をカバンに詰め込んで飛ぶ〝ハンドキャリー方式〟でどんどんカネを持っていっている」(富裕層向けの金融助言を行うプライベート・バンカー)
政府もこうした事態を知ってか、5000万円以上の海外資産保有者に報告を義務付け、違反者には「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」との罰則規定を設ける方針を決めた。
ただ、税務当局が個々人の海外資産額をすべて把握するのは「実質不可能」(現役国税職員)であり、そんなことを百も承知のマネーのプロ達が、正直に申告することなどありえない。
退職金も狙われる
結局、「平成のシャウプ税制」を断行すればどんなことが起こるかは容易に想定できる。
「何億円、何十億円とおカネを持っている人たちはあっさりとオフショアに逃げてしまう。一方で日ごろ忙しく、資産管理に割く時間も少ない40~50代のサラリーマンは根こそぎ税金を取られることになる。住宅ローンも払い終わり、子育てもおおむね完了して、老後のために貯めていたおカネを一気に持っていかれるのです。
退職後の高齢者もほとんどが節税対策などまともに考えていないのだから、狙い撃ちにされる。せっかくの退職金も税金で取られ、老後の生活に打撃をくらう。結局、本当のお金持ちは逃げて、普通の庶民が最も割を食うという徴税形態になるということです」(慶應大学教授の土居丈朗氏)
それでも政府が資産課税へと突っ込んでいく可能性は高い。
前出・政府税調関係者が明かす。
「実は、野田政権が今年に入って閣議決定した『税と社会保障の一体改革』の素案に重要な文がすべり込ませてある。『次の改革を実施する』として、『今後5年を目途に、そのための所要の法制上の措置を講じることを今回の改革法案の附則に明記する』という部分がそれです。短い文章ですが、この官僚作文に隠された意味を要約すると次のようになる。
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