現在、相続税を払っているのは100人中4人。相続税には基礎控除と呼ばれる〝非課税枠〟が設定されているため、よほどの資産家でないと納税対象にならない現状を少しでも変えたいとの意図がある。その内容は基礎控除を『5000万円+法定相続人一人につき1000万円』から『3000万円+同600万円』に改正して課税対象者を広げる上、最高税率を現行50%から55%に引き上げるというもの。
いままでは会社経営者など一部の人だけが相続税を払っていたが、これからは取締役や部長クラスも納税の義務を負うようになる。また東京の世田谷や杉並に一軒家を構える人たちも相続税の対象になるし、死亡保険金に対する非課税枠も圧縮されるため、納税者は現在の1・5倍ほどに増えるといわれている」(政府税調関係者)
三菱総研主席研究員の白石浩介氏もこう言う。
「財務省の狙いは富裕層にカネを使わせることにある。そのため相続税の増税にあわせて贈与税は非課税枠を拡大して、若者層への所得移転を促そうとしている。仮に相続税の最高税率が55%になっても、過去の水準にくらべればまだ低い。今後、さらに税率が引き上げられる可能性もある」
続けて固定資産税。こちらも2014(平成26)年度から〝実質増税〟される。
「あまり報じられていないが、実は24年度の税制大綱に重要な改正が記載されている。住宅用地にかかる固定資産税を本来より低く抑える『据え置き特例』を、26年度に廃止するというのです。
これは税調に総務省の固定資産税課長らが出席して『バブル期に導入された特例は合理性が低下した』と徹底主張し、『このままだと過去最大4800億円の大減収になるぞ』と危機感をあおりながら議論をリードした結果、盛り込まれたもの。地価の高い高級住宅街に住む人は税負担が増えることになるでしょう」(現役財務官僚)
この改正で500億円規模の税収増が見込まれているというから、裏を返せば、それだけ国民に税負担がのしかかることになる。
ただこれは〝第1弾〟に過ぎない。今後さらなる固定資産税の増税ラッシュが待つ。
「固定資産税にはほかにも特例措置がたくさん残されており、これらが随時、見直される方向で進んでいます。たとえば住宅用地特例として住宅用地のうち200m2までの部分は課税評価額の1/6、200m2を超える部分は1/3に引き下げる措置を取っているが、これをそれぞれ1/4、1/2まで引き下げる案が税調での議論で俎上にあがった。同じく新築住宅特例といって新築住宅にかかる税額を一定期間1/2に減額する措置についても見直しが検討されている。
総務省はすべてを一気に見直すべきと主張していたが、『経済への打撃が大きい』として国交省がこれに反対して今回の改正には盛り込まれなかった。だが住宅用地特例については25年度までに、新築住宅特例については26年度までに再検討するとの決着がついており、いずれ増税される布石がきちんと打たれている」(同前)
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