【コラム】「宇宙軍」への鈍い歩み

 「今回の予想落下軌道には、誤差の範囲内で、韓半島(朝鮮半島)が含まれています」

 ロシアの火星探査衛星「フォボス・グルント」が先月16日早朝、地球に落下した。これに先立ち、韓国天文研究院は、このような予想資料を公表した。昨年11月に打ち上げられたフォボス・グルントは、ロケットからの切り離しには成功したが、エンジン故障のため地球に落下することになった。幸いにも、ロシアの探査衛星はチリ西方の太平洋に落ちた。しかし、落下時刻があと30-40分早かったら、韓半島に落ちる可能性もあったという。にもかかわらず韓国では、この探査衛星がどのように動いているのか分からず、気をもんだ。探査衛星を追跡できる光学式やレーダー、レーザーを利用した宇宙監視システムがないからだ。

 韓国軍では、空軍本部航空宇宙課が天文研究院と合同でタスクフォース(特別作業班)を立ち上げ、米国の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)がインターネット上のホームページで公開している情報を分析し、探査衛星の落下予想軌道を推定、さらに万一の事態に備え、米軍宇宙司令部と非常連絡網を構築した。しかし、韓国軍にできることは、これが全てだった。韓国軍には、衛星の追跡・監視手段はなく、リアルタイムでの探査衛星追跡はできなかった。

 1990年代半ば以降、韓国空軍のキャッチフレーズは「空へ、宇宙へ!」だ。また韓国空軍は、「航空宇宙軍」を空軍力建設の中長期目標として設定している。韓国空軍は2007年、空軍本部戦力企画参謀部の中に、宇宙分野を専門に受け持つ航空宇宙課を設置し、専門要員約10人を配置した。同年10月、空軍は国政監査場で、野心あふれる3段階の宇宙戦力建設計画を発表した。まず第1段階として15年までに、民間部門と人工衛星追跡システムに関する協力体制をつくるなど、宇宙作戦の基盤システムを構築する。続く16-25年には、第2段階として光学式およびレーダー宇宙監視システムをつくり、地上にレーザー兵器も実戦配備して「宇宙作戦団」を創設するという。25年以降は第3段階で、空中および宇宙にレーザー兵器を実戦配備し、宇宙軍へと発展させるという構想だった。

 ところが、こうした計画を実現するための組織的・予算的裏付けはまだなされていない。宇宙担当の組織は空軍にあるだけで、上級機関の国防部(省に相当)や合同参謀本部にはない。担当要員も、国防部にわずか1人というのが実情だ。中国や日本の偵察衛星がいつ、どの経路で韓国を通過するのか探知する光学追跡装備の導入は延期が続き、7-8年後にならなければ実現しないと見込まれている。加えて民間部門では、正反対の動きまで表れている。組織を強化しても結果がさえない航空宇宙研究院(航宇研)を、韓国政府の研究機関統廃合方針に従い、ほかの研究機関と合併させる案が推し進められている。宇宙ロケット「羅老号」を打ち上げている航宇研は、民間レベルで宇宙の軍事的活用を支援すべき機関だ。

 これに対し日本・中国など周辺諸国は、宇宙の軍事的活用に拍車を掛けている。日本は、宇宙兵器の開発が可能となるよう関連法の改正を推進し、韓国・北朝鮮双方を監視できる偵察衛星(情報収集衛星)を次々と打ち上げている。中国も、独自の航法衛星(北斗システム)や偵察衛星を相次いで軌道に乗せている。中国と日本は宇宙に向かって駆け出しているのに、韓国は亀の歩みのよう、いやむしろ後戻りしているようで、残念だ。

ユ・ヨンウォン記者
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