ジャスダック上場のソフトウェア会社が、3年前、中国企業を買収したなどとうその発表をしていた疑いがあることが、関係者への取材で分かりました。発表後、この会社の株は急激に値上がりし、証券取引等監視委員会は、株価対策が目的の不正だったとみて強制調査に乗り出すとともに、中国企業も不正に関わった疑いがあるとみて調べています。
強制調査を受けたのは、ジャスダックに上場する東京・中央区のソフトウェア会社「セラーテムテクノロジー」です。この会社は、平成21年、新たに株を発行して中国系の投資ファンドから15億円の資金を調達し、中国・北京にある環境関連企業の株を取得して買収したと発表しました。当時、この会社の株価は1万円前後に落ち込んでいましたが、発表後、中国での事業の展開が期待され、10倍以上に急激に値上がりしました。
しかし、関係者によりますと、実際には買収のための資金は調達しておらず、資金の代わりに自社の株の半分近くを中国企業側に渡して中国企業の株を取得していたということです。この取り引きのあと、中国企業は中国人の役員を送り込むなど実質的に、この会社を支配下に置いていたということです。証券取引等監視委員会は、株価対策のために実態とは異なるうその発表をして投資家をだましたとして、金融商品取引法違反の偽計取引の疑いで、この会社の社長らの刑事告発に向け、強制調査に乗り出しました。また、中国企業についても、表に出ない形で上場企業を支配する目的で不正に関わった疑いがあるとみて、中国の金融当局に協力を要請するなどして調べています。
この中国企業とセラーテムテクノロジーは、NHKの取材に対して、いずれもこれまでのところ回答していません。
市場関係者によりますと、このケースのように、中国の企業や投資家が、経営不振で株価が低迷している日本の上場企業を狙う動きがこのところ強まっているということです。
上場企業を実質的に支配下に置くことができれば、みずから上場する場合に比べて、上場に必要な審査の時間や費用をかけずに済むというメリットがあるためとみられています。こうした手法は、「裏口上場」と呼ばれています。
中国の投資家の動向に詳しい証券コンサルタントは、「上場企業を支配すれば、上場したのと同じことで、中国側にとってうまみがある。経営不振で銀行から融資を受けられないような企業は、中国からの資金に頼らざるを得ないという事情があるので、今後もこうしたケースは、増えていくだろう」と話しています。
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