上町台地の崖下に位置する大阪市西成区天下茶屋東2丁目の一角に、茎から一方にだけ葉が生える「片葉の葦(あし)」が一面に自生している。ユニークな形状で、空海や親鸞など歴史上の人物にまつわる伝説やあらゆる民話が全国各地に残っていることから、大阪でも後世に伝えようと近く有志が保存の会を発足させたい考えだ。
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標本を手に「片葉の葦」を紹介する大島さん。後方は上町台地の崖下にある群生地 |
種の保存を訴えているのは、地元の天下茶屋尋常小(現・天下茶屋小)出身で、阿倍野区在住の大島新一郎さん(84)。大島さんは昨年9月ごろ、地域防災に関連して近隣の井戸について調べていたところ、同地にヨシ(アシ)の群生地を発見。また、同時期に見つけた母校発行の伝記「天下茶屋のうつりかわり」(1961年)に“ナニハのカタハアシ”と記された項目を見つけ、湧き水があったことで50年間生き延びてこられたのではないかと仮説を立てている。
ヨシは湿地帯に生えるイネ科の多年草で、秋にはススキに似た穂を張る。「天下茶屋の−」には、古代、上町台地は海岸に近かったことから「ふきつける風で…、しまいにははえてくる葉がみんなカタハになっていました」と記されている。また、大阪市立自然史博物館の担当者によると、種としては存在せず「変異のものではないか。たまに交じることはあるが、群生しているのは聞いたことがない」としている。
関連する逸話は、全国各地に残る。修行中の空海が葦笛で誘う美しい娘に姿を変えた魔物の化身を追い払ったというものや、神社に参詣した親鸞が念仏を唱えたところ、境内一面の葦が一夜で片葉になったという伝説などがあり、遠州(静岡)塩原(栃木)越後(新潟)の七不思議にも数えられているようだ。府内でも、大正期に阿倍王子神社(同区阿倍野元町)へ国学者の生田南水が送ったとされる手紙に片葉の葦について触れられているという資料も残っているという。
自生する現場は約480平方メートルの国有地の一部で、売り地であることから近いうちに整備され、消滅する危惧がある。大島さんは「こんな植物が大阪にあるんだということを知ってもらいたい」と話しており、地元の小学校や公園、博物館などで栽培されることを希望している。
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