幻覚や興奮作用がある薬物を乾燥した葉に混ぜた「脱法ハーブ」がまん延している問題で、徳島県内の販売店でもハーブを購入する若者の姿が目立っている。県内で健康被害の報告はないが、県外ではハーブを吸引したとみられる人が死亡したり救急搬送されたりしたケースも。県によると、ハーブを取り扱っている可能性がある店は県内に約10店あり、違法薬物が含まれていないか検査するなど監視を強める。
徳島市の繁華街にある雑居ビルの一室。薄暗く、甘い香りが漂うこぢんまりとした販売店内に約20種類のハーブが並ぶ。価格は1グラム1900円から。女性店員に初心者向けの商品はどれかを聞くと、「香りが良くて人気ですよ」と2種類のハーブを勧めてきた。
訪れたのは平日の午後9時ごろで、客はビジネスマン風の若い男性が1人。店員から商品の説明を受けた男性は、気に入ったハーブを購入すると足早に店を出て行った。
店内には「香りを楽しむお香として使い、煙を吸引したり直接食べたりしないように」との注意書きが掲示されている。積極的に人体に摂取する目的で販売すれば、薬事法に触れるためだ。だが実際には、吸引する人が多く、この店でもたばこのような巻紙やパイプを販売していた。
県薬務課によると、脱法ハーブが販売されているのは、徳島市内などの専門店やアダルトショップ。厚生労働省指定の違法薬物は使用していないとして、多くの店では法的な正当性を強調する意味で「合法ハーブ」と称して販売している。
これらの商品は、含まれている化学物質が違法薬物に指定されても、成分を一部変えた新商品がすぐに出回り、いたちごっこが続いている。法規制をすり抜けた販売実態が問題となっているが、県警の捜査幹部は「違法でない以上、取り締まりようがない」と話す。
このため厚労省は、成分構造が類似していれば一括で規制対象とする「包括指定」の導入を検討している。
県では2008年度から年1回、販売されている「脱法ドラッグ」に違法薬物が含まれていないか調べるため、数種類の薬物を購入し、検査している。ハーブを調べたことはないが、今後は検査対象に含めるという。
県薬務課は「合法と称しても違法薬物が含まれていないとは限らない。絶対に使わないでほしい」と呼び掛けている。
【写真説明】徳島県内の販売店で「合法ハーブ」と称して販売されているハーブ。若者らにまん延している