
2012年2月26日(日)、埼玉県・さいたまスーパーアリーナでは、UFC144「Edgar vs Henderson」=UFC JAPANが開催中だ。
2000年12月のUFC29(ディファ有明開催)以来約11年ぶり、Zuffa体制になって初の日本大会は、メインイベントにUFC世界ライト級選手権試合=フランク・エドガー×ベンソン・ヘンダーソン戦を据え、秋山成勲、岡見勇信、日沖発、五味隆典、山本KID徳郁、福田力、水垣偉弥といった、まさに日本人オールスターが出場を果たす。
また、ジョージ・ソティロポロスとレオナルド・ガルシアが欠場したことで、光岡映二、田村一聖が追加参戦、光岡に至っては五味との日本人対決に臨むこととなった。勝てば継続参戦となるであろう両者にとっては降ってわいたビッグチャンスとなり、その田村は、ヂャン・ティェカンを相手に初回からパンチをクリーンヒットさせると、2Rには左のフックを見せてから大砲のような右フックを叩き込み、豪快なKO勝利。UFC JAPANは衝撃的な幕開けとなった。
また、第2試合に出場した水垣は、クリス・カリアソと対戦。手数こそ少ないものの、各ラウンドで上をとってパウンドを落とすなど優勢に進めたかに見えた水垣だったが、判定はカリアソの数少ない打撃を評価したか、ジャッジ三者が29-28をつけてカリアソを支持。水垣は両手を広げ、納得のいかない様子を露わにした。
第3試合の福田は、長州力のテーマ曲「パワーホール」で入場すると、カントウェルを相手に初回からダブルレッグでテイクダウンを奪う。2Rにはテイクダウンを許し、自らのタックルはきられるも、要所でパンチ&ミドルでラッシュを仕掛け、押し切る格好で判定勝利を手にした。
第4試合に登場したKIDは、軽快なステップとともにヴァグハン・リーに右フックを浴びせ、ケージ際につめてはパンチを連打する。だが、リーのパンチを浴びると、足元がおぼついてしまったKIDは、タックルでテイクダウンを奪うも、リーの三角絞め&腕十字の連携にタップアウト。悔しい一本負けを喫した。
そして、第5試合で行われた今大会唯一の日本人対決は、初回に五味の右フックに絶妙のカウンターを合わせた光岡が、ダウンを奪い三角絞めでタップを迫ったが、これを凌いだ五味が2Rに逆襲。怒涛のパンチ、膝蹴りで一気に形勢を逆転させると最後はバックからパウンド&鉄槌でTKO勝利を挙げた。
なお、同大会は米国PPV放送に合わせて、日曜日の午前中から行われるという異例のタイムテーブルに。出場する日本人選手にとっては、全試合がサバイバルマッチといっていいシビアな戦いとなり、明暗分かれる結果となりそうだ。各選手の意気込みや試合の見所は下記の通り。リアルタイム速報とあわせてご覧頂きたい。
■大会の見所&選手のコメント
・エドガーのステップ、ベン・ヘンの対抗策は?
・シールズ「時差ボケはない。帰国の時が酷い」
・田村一聖、「オファーは2週間前、人生賭ける」
・「史上最強のKIDが見られるはず」(クーニャ)
・岡見勇信、「これが世界だッという試合を」
・ベン・ヘン、「勝利のイメージはできている」
・秋山成勲、「セクシーな試合したい」
・エドガー、「PRIDEの大ファンだった」
・水垣偉弥、「日本の方がイレギュラーです」
第12試合 UFC世界ライト級選手権試合/5分5R | ||
[王者] フランク・エドガー (米国) | vs | [挑戦者] ベンソン・ヘンダーソン (米国) |
第11試合 ライトヘビー級/5分3R | ||
ランペイジ・ジャクソン (米国) | vs | ライアン・ベイダー (米国) |
第10試合 ヘビー級/5分3R | ||
シーク・カンゴ (フランス) | vs | マーク・ハント (豪州) |
第9試合 ウェルター級/5分3R | ||
秋山成勲 (日本) | vs | ジェイク・シールズ (米国) |
第8試合 ミドル級/5分3R | ||
岡見勇信 (日本) | vs | ティム・ブーシュ (米国) |
第7試合 フェザー級/5分3R | ||
日沖発 (日本) | vs | バート・パラジェンスキー (米国) |
第6試合 ライト級/5分3R | ||
アンソニー・ペティス (米国) | vs | ジョー・ローゾン (米国) |
第5試合 ライト級/5分3R | ||
○五味隆典 (日本) | 2R2分21秒 TKO | 光岡映二× (日本) |
第4試合 バンタム級/5分3R | ||
×山本“KID”徳郁 (日本) | 1R4分29秒 腕十字 詳細はコチラ | ヴァグハン・リー○ (英国) |
第3試合 ミドル級/5分3R | ||
○福田力 (日本) | 3R終了 判定 詳細はコチラ | スティーブ・カントウェル× (米国) |
第2試合 バンタム級/5分3R | ||
×水垣偉弥 (日本) | 3R終了 判定 詳細はコチラ | クリス・カリアソ○ (米国) |
第1試合 フェザー級/5分3R | ||
○田村一聖 (日本) | 2R0分32秒 TKO 詳細はコチラ | ヂャン・ティェカン× (中国) |
ヴァグハン・リー(英国)
Def.1R4分29秒 by アームバー
山本“KID”徳郁(日本)
左右に回りながら、距離をうかがうKID。リーもすぐには距離を詰めない。飛び込みながら右を打ち込んだKID。距離が詰まるとリーも左から右を返していく。ケージ際を移動しながら、右フックを放ったKIDは、自らバランスを崩してしまう。組みついたリーだが、KIDはスタンドをキープして、左右のフックからヒザ蹴り、さらにパンチで追い打ちを掛ける。KIDのラッシュに動きを止めたリー。両者は一度距離を取り直す。その後もKIDが右フックを放つも、リーも前に出てダメージを感じさせない。
左から右、さらに左を出すKID。リーが前に出るがしっかりとガードを固める。右フックから左ストレートをKIDが伸ばすと、距離を詰めたリーの右フックが伸び、動きが止まる。テイクダウンでごまかしたKIDだが、リーはハイガードから三角絞めを狙いつつ、下からパンチを伸ばし、さらに腕十字へ。左腕を伸ばされたKIDは、観念したようにタップし、試合終了直後に悔しさを露わにして、マットに拳を叩きつけた。
マイクを向けられたKIDは「もう残念です。日本で久しぶりにできたんで、みんなにパワーを与えられる試合をしたかったけど、一個のミスがこうなるって分かったんで、また頑張って……」と無念のコメントを残した。
福田 力(日本)
Def.判定3-0:30-27、30-27、29-28
スティーブ・カントウェル(米国)
サウスポーの福田。長身のカントウェルの右ミドルを顔面に受けそうになりながら、ダブルレッグダイブでテイクダウンに成功する。クロードガードのカントウェルに、勢いのある右パウンドを連続で落とす福田。
カントウェルはハイガードを狙うが、胸を張ってパウンドを引き続き放っていく。ペースを取ろうと、やや距離を取った福田に対し、カントウェルがすぐに反応してスタンドへ戻る。そのままケージに押し込んだ福田だが、距離を取ると右ストレートを受ける。
左フックから右ストレートで前に出てきたカントウェル。福田は再びテイクダウンを狙うが、これはカントウェルがスプロール。続く、シングルレッグも読まれた福田は、右ミドルをブロックしながら前に出るが、左アッパーが空を切る。
左へ回るカントウェルに左右のショートフックを放つ福田は、ヒザ蹴りにもプレシャーを受けず前へ出ていく。カントウェルの左に右を合わせた福田は残り30秒を切って、左ローに右ストレートを合わされそうになる。残り10秒でジャンピングニーで距離を詰めたカントウェルが、左ミドルを放ったところでタイムアップに。続きを読む
クリス・カリアソ(米国)
Def.判定3-0:29-28、29-28、29-28
水垣偉弥(日本)
左ジャブを伸ばす水垣に、左ハイキックを見せるカリアソ。水垣が前に出ると、カリアソが距離を取る。カリアソが踏み込むと、フックで迎え撃つ水垣は、じっくりと距離を見計らっていく。テイクダウンに失敗した水垣に、カリアソの右がヒットする。
右を伸ばすカリアソに、左を返した水垣が四つ組みからテイクダウンに成功。インサイドの水垣にオモプラッタを仕掛けたカリアソ。水垣は腕を引き抜いてパウンドを落とす。しっかりと腰をコントロールしてカリアソを立たせない水垣は、右パウンドから勢いのある左のパウンドを放っていく。
カリアソは手首を掴んで、ハイガードから三角を仕掛ける気配を見せるが、水垣はすぐに察知して腕を引き寄せる。残り30秒、右、左、右を連続で落とした水垣が、そのままトップキープして初回を戦い終えた。続きを読む
田村一聖(日本)
Def.2R0分32秒 by TKO
ヂャン・ティェカン(中国)
左に回りながら、左フックを打ち込んだ田村。ヂャンは右フックをヒットさせ、一瞬、田村の動きが止まる。だが、打撃戦になると打ち勝った田村が、トップを奪取する。インサイドからエルボーを落としていく田村は、そのままヂャンをケージに押し込む。
動きが少なくブレイクが掛かり、試合はスタンドへ。田村は右クロスから組みついてシングルレッグへ。ケージに押し込んでテイクダウンを奪うと、ヂャンが得意のギロチンへ。インサイドハーフから首を抜いた田村は、腰を上げて左のパウンドを放つ。田村はトップを取ったまま、1Rを闘い終え、ポイントをリードした。
2R、左フックからローを見せるヂャンに対して、左リードジャブから田村が放った右フックが顔面をモロに捉える。追い打ちの鉄槌を打つまでもなくヂャンは失神。田村はUFCデビュー戦をKO勝ちでモノにし、「日本のスター選手たちと同じ舞台に立てて夢みたいです」と語った。
【写真】おにぎりが大好きなヒカルド・アルメイダ。その影響で、ボクシングコーチのマーク・ヘンリーもおにぎりにハマっているという (C) MMAPLANET
昨年、現役を退きニュージャージー州でライセンスを取得し、MMA大会でジャッジを務めるようになったアルメイダ。ここでは、エドガーの試合に関して語ってくれたことをお伝えしたい。
──フランク・エドガー選手の調整具合は?
「時差は気になっていたけど、僕はPRIDEやパンクラスで戦ってきたし、その辺りの経験が生かせていると思う。コーチとして、技術や戦術面だけでなく、PRIDEの頃の経験がモノをいっているよ。
フランキーの前で、いつも日本のことを話してきたし、チームのメンバーは日本が初めてでも、僕がいるから大丈夫だと常に言ってきたんだ(笑)。フランキーももう既に日本のことが凄く気に入って、また来たいって言っているよ」続きを読む
【写真】Zuffa UFC初の日本人オクタゴンガールとなった西垣梓さん。08年ミスユニバース・ファイナリストで戦極でリングガールを務めていた (C) MMAPLANET
日本人以外のファンの姿も目立った会場内、日本勢はHERO‘SやPRIDE時代のヒーローの山本KID徳郁や五味隆典に負けない声援が、水垣偉弥、日沖発、岡見勇信にも送られた。ブーイングが唯一起こったのは、秋山成勲がステージに現れた時。しかし、秋山はブーイングをかき消してしまうような、褐色&バキバキのウェルター級ボディを披露した。
会場一番の人気は、外国のファンの声との合わせ技で、メインで王座防衛戦を行うフランク・エドガー、そして日本でお馴染みのランペイジ・ジャクソンか。そのランペイジだが、“しばくぞ”と書かれた鉢巻を外し、計量台の上で拝むような仕種を見せた。実に6ポンドのオーバーで、ファイトマネーの20パーセントをライアン・ベイダーに回り、キャッチウェイト戦に。
「PRIDEをずっと見ていたから、日本で戦うのは夢だった。その日本でPRIDEで戦っていたランペイジと試合をするのは、凄く光栄なこと」語ったベイダー。対するランペイジは「ライアン・ベイダー、しばくぞー、コラァ」と一声張ると、「シカゴでなく、愛する皆の前で、日本で戦いたいという俺の気持ちを、ダナが酌んでくれた」と泣かせるコメントを残したが、6ポンドのオーバーは体調不良で最後の調整ができなかった可能性もある。続きを読む
【写真】今大会、BADBOYのスポンサードを受けることになった日沖発。ホテル住まいの5日間、後輩の久米鷹介をイジリながら、試合までの時間をリラックスして過ごしている様子だった (C) MMAPLANET
──試合まで3日、体調はいかがですか。
「体重が69キロで、バッチリですね。食事の方も、少し量を考えるぐらいでとれています。水抜きも、苦労することもないと思います」
──国内で戦っていた時に、試合の5日前に東京に来るということはありましたか。
「戦極のときは計量の前日で、修斗のときは計量の日に東京入りしていました」続きを読む
【写真】非常にリラックスして様子だった水垣偉弥 (C) MMAPLANET
米国のUFCにはない会見出席者以外の記者会見徴集を終え、宿泊先のホテルに戻った水垣偉弥に現在の体調などを訊いた。
──試合後を3日後に控え、今日は公式スケジュールで記者会見があったのですが、檀上でなく最前列で質疑応答を見て、終了後に日本人選手が全員そろっての囲み取材という形でした。
「いやぁ、退屈でしたよね(笑)。僕らが出る必要はあんまりないんじゃないかって思っちゃいました。でも、まぁ、そういう決まりなんで。
あの席に座れるように、見学させてもらおうということで……。前に座れても、ほとんど質問がないファイターもいるし、なかなか大変ですよね」続きを読む
【写真】メディアから感嘆の声が漏れたパッティングを終え、バンテージを外すフランク・エドガー。こんな仕種にも風格が漂うようになってきた (C) MMAPLANET
本人が思いもしなかったという日本でのメインイベント出場、世界最強のライト級ファイターの海外メディア用囲み取材でのコメントは以下の通りだ。
──日本での防衛戦で、いつもと何か違う感じはしている?
「変わらないよ。いつもと違う国、違う会場で、タフな対戦相手と防衛戦を行うだけだよ」
──これまでBJとのリマッチ、グレイ・メイナードとの連戦で、チャンピオンとしてより認識されてきたと思うかい?
「別にそういうことは気にしていないけど、勝てば勝つだけ信用度は上がるだろうね。10回勝てば、10回分信用されるようになるはずだよ。この1試合でということじゃない」
──PRIDEというプロモーションがあった日本で戦うことで、何か特別な思いは?
「PRIDEの大ファンだったし、ヘンゾ・グレイシーやヒカルド・アルメイダはそこでビッグネームだった。ファイトが文化の国で戦えて嬉しいよ。続きを読む