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2012年2月26日(日)付

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寄付と還付―社会の担い手育てよう

確定申告の季節だ。年末調整があるサラリーマンも、納めた税金の一部を取り戻す還付申告ができる。寄付をした場合も、その対象となる。東日本大震災では、被災した自治体と日本赤十[記事全文]

日弁連会長選―利益団体でいいのか

むこう2年間の日本弁護士連合会のかじ取り役を決める会長選挙は、当選者が決まらなかった。元事務総長の山岸憲司氏と現会長の宇都宮健児氏との間で近く再投票が行われる。ここまで[記事全文]

寄付と還付―社会の担い手育てよう

 確定申告の季節だ。年末調整があるサラリーマンも、納めた税金の一部を取り戻す還付申告ができる。寄付をした場合も、その対象となる。

 東日本大震災では、被災した自治体と日本赤十字社、中央共同募金会あてだけで、5千億円近い寄付が集まった。

 自治体への寄付は、もともと「ふるさと寄付金」として還付が手厚い。日赤などへの義援金も、特例として同じ仕組みが採り入れられた。適用下限額の2千円を引いた残りが丸々戻ってくるケースも少なくない。

 震災の特例だけでなく、還付を充実させる制度改正も、所得税(国)と住民税(自治体)の両方で実施された。

 所得税では、還付の対象となる認定NPO法人を増やそうと、新しい基準を設けた。

 還付の方法でも、税金から一定額を直接差し引く税額控除方式が加わった。寄付額から2千円を引いた残りの4割が返ってくる。以前からの所得控除方式と比べ、大半の人にとって還付額が増える。

 住民税では、自治体が条例で指定すれば、これまでは還付が認められなかったNPO法人も対象となるようにした。戻ってくる金額は「寄付額マイナス2千円」の最大1割だ。

 所得税での認定NPO法人を自治体が指定すれば、所得税と住民税の両方で還付が受けられる。寄付額マイナス2千円の5割が戻ることになる。

 制度改正の大半は、昨年の年始にさかのぼって適用される。寄付をした人は、還付を受けられるかどうか調べてみよう。あてはまるなら確定申告し、戻ってきたおカネを再び寄付に回してはどうだろう。

 その際、ぜひ還付の意味にも思いを寄せてほしい。

 寄付額の5割近くが、税金を納めた国や自治体から戻ってくる――。寄付者の実質的な負担は、寄付額の半分程度ということだ。残りは国や自治体が税金をあてる形になる。

 つまり、自分の寄付に国や自治体を付き合わせているのだ。寄付を通じて、私たちが望ましいと思う活動に、一部とはいえ自ら税金を配分していることを意味する。

 福祉や環境保護、教育など社会に欠かせないサービスの提供者は「官」だけではない。寄付税制の充実には、NPO法人などの「民」に、さらに力をつけてもらう狙いがある。

 官に税金の無駄遣いはないか。民に何を期待するか。寄付と還付を通じ、社会の担い手について改めて考えたい。

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日弁連会長選―利益団体でいいのか

 むこう2年間の日本弁護士連合会のかじ取り役を決める会長選挙は、当選者が決まらなかった。元事務総長の山岸憲司氏と現会長の宇都宮健児氏との間で近く再投票が行われる。

 ここまでの論戦を見て改めて感じるのは、弁護士がどんどん内向きになっていることだ。

 仕事がないのに数だけ増えている。競争が厳しく収入も減り気味で、あこがれの職業でなくなりつつある。会内のそんな声を反映し、両氏とも年2千人の司法試験合格者を1500人以下に減らすよう訴えている。

 はたして多くの国民は、これをどう聞くだろう。

 私たちも無理な増員を進める必要はないと唱えてきた。だが本当に弁護士は社会にあふれているのか。人々の法的ニーズは満たされているのか。

 たとえば原発事故の賠償が進まない。原因は様々だが、被災者が弁護士の助けを受けられないまま申請してくるため書類不備がめだち、和解手続きが滞っている現実があると聞く。

 日本企業への信頼を失わせたオリンパスの役員に、法律家は一人もいなかった▽国境をこえたトラブルの防止や解決を任せられる弁護士がきわめて少ない▽いわゆる弁護士過疎地で、やる気のある若手が仕事を始めたら、介護や生活保護をはじめとして人権にかかわる多くの問題が掘りおこされた――。

 ほかにも、実態と弁護士業界内の「世論」とのギャップを示す話はたくさんある。

 山岸氏は法律家が取り組むべき課題を選挙公報に並べ、宇都宮氏も「膨大な数の人々が権利保護から取り残されている」と書く。その声なき声に縮み志向でどう立ちむかうのだろう。

 事務所で相談者が来るのを待ち、安くない報酬をもらい、法廷に出す文書を作るのが主な仕事で、あいまに人権活動も手がける。そんな昔ながらの弁護士像はもはや通用しない。

 法科大学院のありようを見直したり、必要な法律や制度を整えたりするのはもちろんだが、同時に弁護士が意識を改め、仕事に向き合う姿勢を見直していかなければならない。

 残念ながらこの2年間、日弁連のなかでそうした問題意識は十分な深まりを見せず、はた目には既得権益の擁護としか見えぬ主張を繰り返してきた。

 弁護士、そして弁護士会は、民間の存在ながら司法権の行使に深くかかわる。強い自治権をもち、自ら行動を律することが国民から期待されている。目を大きく開き、世の流れをしっかり見すえてほしい。

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