4月に新設される原子力規制庁の職員のうち、出向元省庁に戻さない「ノーリターン・ルール」の適用は審議官級以上の7ポストに限定することがわかった。ノーリターン・ルールは組織の独立性を保つ狙いがあるが、対象が限られるため、原子力推進行政を担う経済産業省などの影響力を排除できるか未知数だ。
原子力規制庁は、経産省原子力安全・保安院や内閣府原子力安全委員会などの機能をまとめ、環境省の外局として立ち上げる。東京電力福島第一原発の事故を受け、原発を推進してきた経産省から規制部門を分離することが狙いだ。
細野豪志原発相は1月末の記者会見で「利用と規制の分離の観点から、一定クラス以上の幹部職員はノーリターン・ルールを適用しなければならない。とくに推進側からの組織の分離は重要だから、徹底したい」と語っていた。
関連組織を含め計485人の定員のうち、ノーリターン・ルールの対象は長官のほか、次長、緊急事態対策監、審議官(3担当分)、原子力地域安全総括官の計7ポスト。国会答弁で担保する見通し。対象を一部幹部に限定したのは、政権が脱原発依存にかじを切って原子力利用の先細りが避けられないなか、片道出向ばかりでは一般管理職や中堅職員が集まらないと判断したからだ。
ただ、発足時は保安院からの出向が354人と7割以上を占める。数年たてば古巣に戻れる状況では、経産省の影響力を完全に排除できない可能性がある。民主党内からは「今後、独自採用枠を広げ、規制の独立性を強めていくべきだ」(中堅議員)との指摘があるが、当初の新規採用は12人にとどまる。
ノーリターン・ルールは、1998年に旧大蔵省から分離独立した金融監督庁(現金融庁)にも局長級以上を対象に導入されたが、2009年に事実上破られた。原子力規制庁の新設を盛り込んだ原子力安全改革法案にはルールが明記されず、今後守られない懸念もある。野党から「法律にルールの理念を盛り込むべきだ」(自民党の塩崎恭久衆院議員)との意見が出ており、国会審議の焦点の一つになりそうだ。(関根慎一)