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04
2011
05
05
偏微分方程式 [7] - 固有関数展開法による非同次方程式の解法
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数学
偏微分方程式
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非同次偏微分方程式は非同次常微分方程式よりもずっと厄介
偏微分方程式は、常微分方程式よりも色々厄介であることは既に書いた 6 つの記事からも明らかで、改めて詳細を述べる必要もないだろうと思います。今までは、線形な方程式のなかでも、同次 (homogeneous) のものしか取り扱ってきませんでした。常微分方程式では、線形同次方程式の解法はそれはそれは簡単で、単に関数を e のなんとか乗とおいてみたらただの高次方程式を解くだけでいいよ、というものでしたが、偏微分方程式では、同次方程式だけでもこれだけ多くの手順を踏まなければならなかったことからも分かるように、非同次になるとその手順の煩雑さはさらに増し、解くことは非常に難しくなってきます。ただし、理論は一切変わっていないので、やらなければならないことは常微分方程式と全く同一です。すなわち、"同次方程式の一般解 + 非同次方程式の特解" という重ね合わせは、偏微分方程式でも同じなのです。それはそうだろう・・・というのも、常微分方程式と全く同様に、微分演算子 L を導入するところからはじめてみれば、
ですね (別に何階であろうが、必要な階数に応じてこれを変えればよいだけなので、これで成り立つ性質は偏微分方程式一般に成り立ちます)。もし非同次方程式である
を解きたいのであれば・・? (G は定数でなく関数) ということですが、同次解を uh、特解を up としましょう。このときは
ですね。ここで、 L には線形性があります。なんでそんなことが言えるのかは、 L 自体が線形である偏微分とその和のみから成り立っているためであり、教科書の記述ではよく自明でもないのに自明だとか明らかとかお気軽に言ってくれることが多いですがさすがにこれは自明といってもよいでしょう。したがって、
のように、同次解 + 特解の重ね合わせはまた非同次方程式の解であることが分かります。もちろん・・・、これは重ね合わせた解がまた解になっていることを検証しただけのことであり、非同次方程式の一般解がこのように表示されなければならないことの証明にはなっていません。しかしそれを詳しくやるのはちょっと難しいのでここではこれだけにしておきます。まあ、より表示を一般的にできるならした方がいいよねってことですね (それは今まで一般解から特解を求めてきた手順からもおわかりのはず)。
とにかく、偏微分方程式だろうが、手順は
1. 同次方程式の一般解を求める
2. 非同次方程式の特解を求める
3. これらを重ね合わせて一般解にする
でいいということです。となると、同次方程式の解は今までさんざんやったのでいいと思いますが、特解なんてどうやって求めたらいいんでしょうかという話になってきます。未定係数法や定数変化法・・が有効であるほど簡単な話ではないように見えます。常微分方程式は一つの変数に対してしか微分しないからああやって循環性があったりする関数を当てはめてあっさりいっただけの話で、多変数だったらそんな推測、複雑すぎて立てようもないですからね (とはいっても、立つ場合はあるんですが・・それは別の機会に)。
前置きが生首より長く、キリンの首よりは短い程度に長すぎましたが、偏微分方程式において、非同次方程式の一般解を手計算で求める方法はほとんどの場合今回紹介する "固有関数展開法" によります。これは未定係数法などの特解を探し出す方法とは少しだけ異なり、同次解を見つけるところまでは同じなのですが、そこから一気に同次解 + 特解つまり一般解を一気に出しちゃおうという手法です。この手法は解析的に解ける問題の場合は非常に強いツールで、手計算で非同次方程式を解くなら間違いなく知っておかなければならないものです (つまり、テスト対策には必須です)。前回、ラプラス変換で実は非同次方程式をあっさり解いていましたが、あんなのは特殊な条件下でしか用いることができないので、適用できたらラッキー程度なものなのです。もしかしたらラプラス変換で解けるなら他の手法なんか別にいらないじゃんと思ったかもしれませんが、やっぱり常微分方程式同様、他の手法の方が出番が多いんですね。固有なんとかという言葉はどこかで聞いたことがあるかもしれません。もちろん、この名前は深い理論に根ざすものですが、ここではそれがどういう理屈のものであるかを探るより、未定係数法、定数変化法のように、"なんか知らないけどこうやれば解ける" という、その手順を紹介していくことになります。ただし、手法だけ暗記してもしょうがないので、少なくともどういう発想でそんなことをするのか?は出来るだけ詳しくしていこうと思います。
固有関数展開法の手法 1. 同次解を求める
実際に、固有関数展開法を用いて、どのように非同次の偏微分方程式を解くことができるか、見ていきます。私も偏微分方程式を扱うのは久しぶり (注 : 前の記事の日付) なので、おさらいもかねて以下のような問題を解きます。この問題は実は初めてではありません。ラプラス変換で一度解いています。最後まで見てみれば、同じ問題でも、ラプラス変換が有効であると、いかに固有関数展開法より楽に解けるかが分かると思います。
では、同次解を求めます。上の方程式の非同次項は右辺の一番右の項なのは明らかです。なので、これを取り除き
から始めます。これは、ただの波動方程式なので、お決まりの変数分離法を行います。もう何回も変数分離法を書いていますが、このブログは自分自身の練習も兼ねているため過程は省略しません。
とおくと、なんか知らないけど上手く左辺右辺、それぞれ x だけの式、t だけの式に分離できたのでした。実際、上のを代入すれば
となるのですが、ここで両辺を F(x)G(t) で割ることによって
c のような定数は先に境界条件を適用する変数 "ではない方" にくっつけたほうがいいでしょう。なぜそうする必要があるかは、後を見れば分かります (先に結論を言えば、境界条件を適用する方の変数では場合分けが必要なので、出来るだけ表式を簡単にするため)。ちなみに波動方程式における定数 c は正の定数です。物理的には光速とかいう意味がありましたね。
で、これで左辺は x だけの式、右辺は t だけの式になっているわけです。この式が意味しているのは、右辺と左辺は常に等しい、つまり x, t がどういう値だろうがどうでもよく、常に等しい、ということですよね。そんな x, t の関係ってあるのでしょうか?もちろん、そんなものはありません。上の式は、 x と t がそれぞれに依存していないことを意味しています。つまり、両方とも定数だってわけです。関数における変数の値なんかどうでもよくて常に関数の値が同じということなら、そんなのはもう定数であるしかないでしょう。したがって、そのある定数を k とおけば、
が成り立ちます。ところで、この k の符号ってどんななんでしょう。というわけで、次はこの k の符号がなんであるかを探らなければならなくなります。というのも、上の式を分離すれば
と、二つの常微分方程式を解けばよいということになりますが、このとき、例によって特性方程式を作らなければならないでしょう、ここで k の符号が効いてくるわけなのです。負だったら sin, cos とかなんかそういうのがありましたよね。なので、 k の符号をはっきりさせなければこの先へは進めないというわけです。実際に、どの符号が良いのか?は、一つ一つ検証していくほかありませんので、見ていくことにします。どちらの方程式から行くかですが、初期条件の内容を見ても分かるように、この手の問題はふつう境界条件から行った方が無難です。なので、暗黙のうちに x の方から解くことが多いです。
の特性方程式は
ですが、もし k が正であるなら、
となるでしょう。別にルート k はそのままでもいいですが見やすさのため p と置き直しました。それだけのことなので特にこれに大きな意味があるわけではありません (偏微分方程式はその解法の都合上次々新しい定数が出てきては複雑化していくので表記の簡略化がなされることが多い)。当然、このとき境界条件は成り立つでしょう。つまり、
というのなら、
なので、当然 G(t) によらず 0 になるには・・・
でなければなりません。というわけで、これを今さっきの F(x) に代入して、A と B がいくらになるか求めるわけです。それで、矛盾などがないようでしたら、その F(x) はそれでよし、というわけですね。しかしながら、k が正の場合は、不適です。それは、実際に代入してみて、
とのことなのですが、これを満たすような A, B には、何があるでしょうか。そう、これ、 A = B = 0 となるしかないんですよね。中学生のやり方でもいいですが、それよりはクラメールの公式を頭に思い浮かべればいいでしょう。右辺ベクトルが 0, 0 なら行列式なんてどう取ろうが 0 というわけです。というわけで、このとき、F(x) = 0 でなければならないことがわかります。ここで、u(x,t) = F(x)G(t) より、 F が恒等的に 0 ならば、 u も恒等的に 0 でなければなりません。これでは明らかに何も意味を持ちませんので、 k が正の可能性は切り捨てるというわけです。
次に、 k = 0 のときですが、このときは
となります。同様に、
なので、こちらはより簡単ですが、 F(0) = A = 0、次に F(1) = B = 0 なので負の場合と同じく恒等的に u(x, t) = 0 であることになり、切り捨てる必要があります。
したがって、k の符号は負だけを考えればよいということになります。実際負の場合は良いのか、ということですが、これは確認してみれば分かります。 k が負の時は、
となりますが、このときだけ A = B = 0 でなくてもすみます。実際代入すると
ですからね。A は今までと同様 0 でないといけませんが、F(1) を見てください。 A は既に 0 と決まったので sin の項だけ生きているわけですが、これは別に B = 0 でなくても 0 になれるという点はお気づきでしょうか。B = 0 だと恒等的にこれも 0 になってしまい意味をなさないため B ≠ 0 が求められているわけですが、 sin は π の整数倍だったら何でも 0 になりますよね。
思い出せばこのようです。したがって、 sin の中身である p (正の数) が、π の整数倍であればよいので、
と定めることができます。 p は正に限定したため、 m は 1 からです。別に p を先ほどの段階で正に限定しなくてもいいのですが、今後の手順が簡単になる都合上このようにしています。そもそも、 ±p は p の符号がどうであろうがプラスもマイナスも含んでいます。どうせプラスマイナス両方あるなら p の符号は固定しても一緒だろという簡略化の仕方ですね。最終的にたどりつける結果は同じですから、このようにしておくのが賢明だと思います。以上から、任意の正の整数 m に対して
が、境界条件を満たす F(x) となります。我々が求めているのは全ての場合に対応できる、最も一般的な解、つまり、(同次方程式の) 一般解というのは独立解の重ね合わせですから、この全ての m についてあとで足し合わせないといけないということも、忘れてはいけないことです。
次に、F(x) が定まったため、 G(t) を求めます。
さて、こちらは何の思考も必要ありません、というのも、既に k は
という風にさっき定めたので、
と、G(t) の係数が正だって分かってるんですよね。だから、この特性方程式を作ると
ということになります。場合分けなどは必要なく、すぐに
と求まります。
長々としすぎて何をやろうとしていたかすら忘れかけているかもしれませんが、元々変数分離法によって
とおいたので、これより、独立解は
と求まります。ちなみにこれ、以前紹介した波動方程式のダランベールの解と一見違うように見えますが、三角関数の和積公式 を使えばちゃんと mπ(x-ct) と mπ(x+ct) が現れることが確認できます。ここでも省略のテクニックが生きているのですが、Bm と Cm の積 BmCm は Cm に、 BmDm は Dm に置き直しています。個々の整数 m によって決まる任意定数同士の積は、やはりその m に固有なわけですので、このように置いてもいいでしょうというわけですね。
で、一般解は独立解の重ね合わせです。この場合は m が正の整数全てについて成り立つため、 m は 1 から・・・いくらでも足せますね。つまり無限大まで足し続けます。したがって、この境界条件を満たす解は
と求まります。あとは初期条件を満たすように・・・と思いきや、残念ながら実はまだスタートラインにも立っていません。今求めたのは同次解に過ぎないのです。今度は非同次方程式の一般解を探し出し、かつ初期条件にも合うようにしてあげなければなりません。そこでようやく固有関数展開というのが出てきます。
固有関数展開法の手法 2. 固有関数展開を行う
解きたい問題は、でした。ここで、同次解は、
でした。ここから、非同次解を得る方法、それが固有関数展開法 (Eigenfunction expansion method) と呼ばれるものですが、この方法のアイデアは、簡単に言うと、この問題で言えば、"境界条件を満たすよう作った同次解を使い回し、非同次偏微分方程式を非同次常微分方程式に落とし込むことで一気に一般解を得る" ということです。ここで、この "使い回す関数" のことを "固有関数" (Eigenfunction) といいます。この問題においては、Fm(x), sin(mπx) が固有関数です。
名前は難しそうであるにも関わらず、アイデアは先にも述べたように非常に簡単なものです。固有関数 sin(mπx) は、変数分離法において、境界条件を満たすように作ったものでした。 ということは、非同次方程式であろうが、解が sin(mπx) という位置の因子を含んでいれば、それで無条件に境界条件を満たすということが言えます。というわけで、境界条件はもう sin(mπx) さえ持ってれば OK なんだから、あとは t の関数のほうをちょっといじってどうにか方程式の一般解としてあてはめられないか?ということで、非同次方程式の一般解を、固有関数 sin(mπx) は残す形の
と仮定するのです。一見変数分離法と似ていますが、そちらと違うのは、位置因子は境界条件より sin(mπx) が必要であると分かったので、時間の方の一般性を上げて様子を見ているという点です。とりあえず、非同次項を上のような特殊な場合に限定せずに、g(x,t) として、
を見てみます。このとき、非同次方程式だろうが、 sin(mπx) を含めば、境界条件が満たされるので、あとは、非同次項 g(x,t) が
となってくれれば、境界条件は非同次方程式でも満たされるので、もう考えなくて OK になるでしょう。なので、うまくいくかは置いておいて、とりあえずこう仮定します (結果的に、これでうまくいくので、こう仮定するのが正しい手順、ということになります)。これを非同次項の固有関数展開といいます。しかもこれ、よく見たらフーリエ正弦級数展開になっているのもわかります。gm(t) はちょっと分かりにくいかも知れませんがフーリエ係数というわけです。言い換えると、固有関数展開は、固有 関数が基本三角関数で出てくるので、フーリエ級数として非同次項を級数展開している、ということにもなっているんですね。あとは、フーリエ係数である gm(t) は、 L = 1 の場合なので、公式よりすぐに
であることが分かります。ここで g(x,t) は e と sin(2mπx) の積になっているので gm(t) は求められますが、もう少しだけ、より一般的に議論できるよう g(x,t) のままにしておきます。とにかく、これで固有関数展開が完了しました。まとめると、同次解で出てきた、境界条件を満たす因子 sin(mπx) があれば別に非同次形だろうと境界条件が同じである以上 OK なのだから、変数分離法によって u(x,t) を x の関数と t の関数の積としたうち、t の関数の方は変わるかも知れないが、x の関数の方はそのままにしておいてなんとか非同次解は得られないかということで
と仮定するのでした。次に、非同次項も同じく sin を持ってればそれで境界条件は満たされるというわけで、固有関数が sin になっていることもあって非同次項 g(x,t) を
と級数展開します。このとき gm(t) はフーリエ係数とも見なせるため、
で求まります。
固有関数展開法の手法 3. 非同次偏微分方程式を非同次常微分方程式に変換する
よく分からない仮定をしてきましたが、結局それで何がどううまくいくのでしょう。実際、を、方程式
に代入してみます。
一方、非同次項は
だったので、元の式は、文字通りそのまま代入して
になりました。ここからが非常に上手いところなのですが、全部和を取る数が同じ (1 から無限大まで) なので、Σ を一つにまとめようということになります。
これが成立するためには、x は自由に値を取れるので常に 0 なわけではありません、つまり、中かっこのなかが常に 0 である必要があるため、
となるよう fm(t) を定めればよいことが分かります。つまり、これで先ほど仮定した非同次解の分からなかった部分 fm(t) を求められるというわけです。このように、非常にうまく出来ています。gm(t) はフーリエ級数として g(x,t) を x について積分すれば出てくるため、既知関数ですから、上の方程式は、非同次の常微分方程式となります。それならあとは、未定係数法や定数変化法で容易に解くことができますね。
結局、変数分離法、ラプラス変換、フーリエ変換、どの手法もそうだったように、やはり固有関数展開法も偏微分方程式を常微分方程式に変換することによって解く、というのが本質になっています。
では、
だったことを思い出し、最初の問題を実際に手順に沿って解いてみます。
固有関数展開法の手法 4. 慎重に解いて一般解を求める
fm(t) を定めるには、この問題においては、常微分方程式を解けばよいことがわかりましたが、一般論として話を進めてきたため、gm(t) を求めていません。なので、まずこれを定めます。これは単にフーリエ係数だという話を先ほどしたので、積分を実行すれば簡単に求まります。しかも今回の問題の場合は、わざと簡単になるように作ってあると思うのですが、積分すらする必要がありません。というのも、
に代入すれば、
だというのは丸わかりです。これは、三角関数の積分公式により、周期 2L の三角関数 sin (mπx/L) 同士の積は、その係数が同じでないと 0 になってしまい、同じなら周期の半分 L に一致するという性質があったためです (いわゆる直交性とよばれる性質です)。なので、積分を実行せずに直接この結果を出すことができます (詳しい経緯はフーリエ解析 [1] で)。
これより、fm(t) に関する常微分方程式は、 m = 2 とそうでない場合、二種類に分けて考える必要が出てくることが分かります (m = 1 から 無限大まで、常微分方程式は沢山ありますからね)。
を解けばよいのですね。ここで注意なのが、 m=2 のときは方程式の m は全部 2 にしてあげましょう。細かいことですけどね。 m のままにしておいてはいけません。
m が 2 でないときは、ただの同次方程式なので、その特性方程式は
で表されます。右辺は明らかに全部二乗なので負の数ですから
となります。 非同次項をフーリエ級数展開した結果、m = 2 以外のときは係数が存在しなかった (0 である) ため、m = 2 でないときは、同次解と同じ物が得られるのですね。ここで、Step.1 で用いた任意定数 A, B ・・は全てリセットしてあります。そのときの A, B とは関係がないものです。
一方、 m=2 のとき、非同次項に e の累乗があります。非同次常微分方程式は、同次解と非同次解を重ね合わせればよいので、まず同次解は m ≠ 2 のときとまったく同様にしてこれは未定係数法により、
となります。 h は同次を意味する homogeneous の頭文字です。次に特解ですが、非同次項が e の累乗のパターンでは、特解は
と仮定すればよかったのでした。なお、p は特解を意味する particular solution の頭文字です。そろそろ使える文字が少なくなってきましたが、ここでは q を用いています。これを元の式に代入すると
と定まるため、特解は
となります。これより、 m=2 のとき、f2(t) は
という形になることがわかります。以上より、全ての m について、fm(t) が定まったため、非同次方程式の解は
であることがわかります。この変形は少しテクニックが入っていますが、m = 2 のときでも、 A2cos と B2sin のところは、 m ≠ 2 と同じなんです。なので、f2(t) のうちこの二項だけはそのまま他の場合と同じに含めてしまって、Σ に入れちゃいます。そして余った f2(t) の非同次項だけ、外に出しておけばいいというわけです。これで綺麗な表記になります。上の式は、偏微分方程式も常微分方程式と同じく、非同次方程式の場合は「同次解 + 特解」になっていることをよく示しています。Σ でまとまった項が同次解、余って出した項が特解に相当します。これで非同次形の一般解が求まりました。
あとは、初期条件から定数を定めることで、問題に合う解を得ることができます。
固有関数展開法の手法 5. 初期条件を考慮し、最終的な解とする
ここまで来れれば、残りは非常に簡単です。初期条件の通り、実際に値を代入して定数を決めればいいだけだからです。 u(x,0) と ∂u(x,0)/∂t が 0 になればよいのでとなります。ここから係数 Am を求めることは容易です。 sin はいくら他の sin を集めようが再現できるはずはないのですので、sin(2Πx) の波形は sin(2Πx) でしか再現できません。つまり、m ≠ 2 では 0、m = 2 では sin(2Πx) の係数です (三角関数の直交性、という言葉を思い出していただければよいのではないかと思います。つまり sin や cos の mΠx はそれぞれの m について基底みたいな感じになっているわけです。要するに、上の状態は、x, y, z・・・といっぱい座標成分があって、そのうち y 成分だけ存在した、みたいな状況なのです)。これより、
と定まります (上の sin 2Πx はミスです)。Bm の求め方も全く同じです。こちらは一階偏微分の初期条件より、u を t で偏微分すると
ですから、
となります。m がΣ に対して変化していく数なので、Σ から m を出すことはできない点に注意です。 これも Am と同様の理由で B2 以外は全て 0 になります。
これで定数が全て定まったので、問題の条件を満たす解は
と求まりました。これはラプラス変換して得られたものと同じになります。もし、積分変換が使えるなら、その方が楽だということも分かります。この非同次方程式の同次形は波動方程式であるため、外部からの何らかの揺れの因子 (非同次項 e^{-ct} ) が最初は波動に影響を及ぼしますが、時間が経つにつれ影響がなくなり、最終的に何らかの波形に落ち着くことも式から理解できます。
基礎数学としていろいろな科目がありますが、自分が経験した中で最も手順が多く、式が長く複雑になるのは、間違いなく偏微分方程式であり (ベクトル解析、フーリエ解析、常微分方程式、微分方程式など様々な科目の知識を必要とするためいろいろな出版社の大学数学シリーズで最後か終盤に据えられていることが多い)、さらにその中でもこの固有関数展開法による手法です。この気持ち悪いまでの複雑な係数などには、問題を沢山解いて慣れていくしかありません。
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