published:
03
2011
02
02
偏微分方程式[6] - ラプラス変換を用いた偏微分方程式の解法
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数学
偏微分方程式
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※参考文献 (特に参考にしたものだけ)
1. "フーリエ解析と偏微分方程式 原書第8版", E. クライツィグ 著, 阿部寛治訳, 培風館 (2003)
2. "Partial Differential Equations for Scientists and Engineers", Stanley J, Farlow, Dover Publications Inc. (1993)
その他多数
(検索してこのサイトに来る人が多いようなので書いておきますが、) このサイトは管理者自身の勉強ノートとして書かれているものなので、文字の打ち間違いから、記述自体の誤りまで、あらゆる間違いを含みます。自分で気づいた時はすぐに修正しますが、このサイトをあまり当てにしないでください。
ラプラス変換を用いて偏微分方程式を解く
ラプラス変換 (Laplace transform)は、常微分方程式の初期値問題を解く上で非常に強力な道具でしたが、これは偏微分方程式においても同じです。しかし、偏微分方程式の場合、ラプラス変換で解くことが不可能な問題がかなり多いため、常微分方程式におけるそれほど存在感はありません。フーリエ変換とラプラス変換の使い分けは、偏微分方程式を解くという上では、単に定義域が無限区間 (-∞, ∞) か、半無限区間 (0, ∞) かで決めてしまっても基本的に問題はありません。ですので、半無限区間の典型的なモデルは時間ですから、時間が関係する波動方程式や拡散方程式ではこの解法が通用することが比較的多いと思います。
ラプラス変換は、フーリエ変換と比べ、虚数が登場しない (ブロムウィッチ積分を計算するなら別だが、普通はしなくてもいい)、とにかく扱いやすいという利点がありますが、逆に初期値が必ず必要であるため一般解を求める問題では使用不可能である、また変換を使ったとしても変換後の関数 F(x,s) を求めることが困難 (偏微分方程式を常微分方程式に変換した後、それが解けないという可能性) な場合も少なくないので、「使えたらラッキー」という解法です。もし使える場合は、非同次の偏微分方程式であろうが、変数分離法や固有関数展開法といったかなり泥臭い方法を使わなくても超スマートに求まります。適用可能範囲は狭いですが、一度この解法の綺麗さを体感してみるのも悪いことではないでしょう。
一つ注意として、ラプラス変換で出てくる s はふつう複素数のはずですが、この解法では正の実数であるかのように扱っても構わない (らしい) ことだけ書いておきます (なぜそのようにしていいか詳しい理由を知っている人がいたら教えてください)。
解法の概要
ラプラス変換は、半無限区間 (0, ∞) で定義されるため、まずこの区間を有することが前提です。さらに、変換する変数について、その初期条件が用意されていなければ、偏導関数のラプラス変換ができないため、これもまた前提です。これらが問題なければ、偏微分方程式をラプラス変換することによって、その変数の偏導関数が s に置き換わり、偏微分方程式の変数が一つ減ります。もし、2 変数関数であれば、それはそのままラプラス変換していない方の変数に関する常微分方程式に化けるわけですね。あとはそのまま常微分方程式としてそれを解き、境界条件なども考慮して、任意定数 (この場合、ラプラス変換した方の変数に関する任意関数にはなり得ることに注意、これは例題を見ればわかると思います) を決定したところで、ラプラス逆変換しておしまいという流れです。今回は文字で書くより図だということで図も作ってみました。例題1. 非同次偏微分方程式の解
は、非同次の波動方程式となります。これは固有関数法によっても解けますが、ラプラス変換でも解くことができます。まず、問題の方程式は、t が半無限区間で定義されているため、 t についてラプラス変換します。これによって、 t が関係している項は
のようにラプラス変換されます。x 偏微分は t とは全く関係ないのでそのまま U(x,s) の x に関する二階偏微分として残ります。したがって、以上より、元の式は
というふうになります。x, t に関する偏微分方程式が、ラプラス変換によって x に関する常微分方程式に変換されたことがわかります。これは、x に関する非同次の定数係数二階線形常微分方程式です (記号上偏微分になっているが、s に関する偏微分がないので、常微分方程式と見なして解くことができる。ただし、これを解いて出てくる任意定数は "x にとっての" 任意定数であるので、 s の関数にはなり得ることに注意)。非同次の常微分方程式は、同次形 (上の式の右辺を 0 としたときの方程式) と、特解 (上の方程式を満たす具体的な一つの解) の足し合わせで与えられます。つまり、同次解を Uh (h は同次解の英語表現 : homogeneous solution の略)、特解を Up (p は同次解の英語表現 : particular solution の略) とすれば、U = Uh + Up が成り立つということでした。
同次解から求めます。これには、同次方程式
を解けばよいのですが、同次方程式は簡単で、 解が e の λx 乗を持っていると仮定して、それを元の方程式に代入したことによって得られる式 (特性方程式)
を解き、それぞれの λ について e の累乗を足し合わせればよいのでした。この場合、普通に λ = ±s/c となるので、同次解は
となります。ここで注意すべきなのが、任意定数 A, B は、"x にとっての" 任意定数であるので、s の関数にはなるかもしれないということです。その意味で、わざわざ A(s), B(s) と表記してあります。
次に、特解を求めます。これは非同次項が sin(2πx) なので、未定係数法を使えばいいですね (横についてる分数は x には関係ないので、すべて定数扱い!)。未定係数法において、普通特解は sin + cos で仮定するものですが、式をよく見ると x の一階偏微分がありません。ということは cos は現れようがないですから、cos の項を切り捨てて sin の項だけで未定係数法を適用してしまっても OK です。というわけで、
を元の常微分方程式にそのまま代入して、D(s) を決定します (以下、式において、D を D(s) とするのを忘れていましたが、すべて D(s) して扱われてあるものとします) 。実際、代入すると、
という風に定まったので、特解は
と求まります。以上から、u(x,t) に関する偏微分方程式を、t についてラプラス変換することによって得られた x,s 空間上での常微分方程式の解 U(x,s) が、
と求まりました。次に、境界条件をみたすよう、これらを直接代入し、任意定数 (関数) A(s), B(s) を確定します。
こんなのどうみても A(s) = B(s) = 0 となるしかない (クラメールの公式を思いだせば即座にわかるはず) ので、
となりました。あとはこれを逆変換するだけなのですが、このままではどうしようもないため、部分分数分解します (s について逆変換するのだから、sin の項はただの係数であることに注意)。まず、この式が、
という風に部分分数分解できたとすると、ヘヴィサイドの展開定理より、直接各係数を求めることができ、
となります。これは暗算でもいけます。虚数が出てもいいので、 1/(s-a)(s-b)・・・ のように簡単に因数分解できるような式の部分分数展開は、是非展開定理を使いましょう。分数を消去して係数比較するより、多くの場合、手間が少なくて済みます。これより、各係数が求まったので、虚数を消します。消すというのは普通に虚数がある項同士を通分するだけで OK です。うまく虚数が消えるようにできています。
あとはラプラス変換法で見知った形にゴリゴリ整形していくのが定石ですよね。これでそのまま逆変換できる形になったので、U(x,s) が逆変換可能なかたちで求まり、
を得ます。
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