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15
2011
01
01
偏微分方程式[5] - 演算子法による同次方程式の解法
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数学
偏微分方程式
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※参考文献
1. "物理数学コース 偏微分方程式" pp.36-43, 渋谷仙吉, 内田伏一 共著, 裳華房 (2000)
2. "詳解 物理応用数学演習" pp.321-330, 後藤憲一, 山本邦夫, 神吉 健 共著, 共立出版 (1979)
(検索してこのサイトに来る人が多いようなので書いておきますが、) このサイトは管理者自身の勉強ノートとして書かれているものなので、文字の打ち間違いから、記述自体の誤りまで、あらゆる間違いを含みます。自分で気づいた時はすぐに修正しますが、このサイトをあまり当てにしないでください。
演算子法
常微分方程式だけでなく、偏微分方程式も演算子法によって解を求めることができます。演算子法とはものすごく簡単にいえば微分を何らかの値に置き換えて楽しようという方式であり、そういう意味では積分変換であるラプラス変換等も演算子法といえるのでしょう。この演算子法を用いると、偏微分方程式の一般解が簡単に求まります。ですが、偏微分方程式の一般解で出てくるのは任意「関数」であり、任意関数を含む一般解は特解を決定するという前提のもとではあまり汎用性が高くありません。はじめからフーリエ級数を見越した解が出てくる変数分離法や、フーリエ変換、ラプラス変換などの解法の方がはるかに実用的ですので、演算子法は実際の問題を解析する上で、特解を求めるのにはあまり向いていません。どちらかというと関数のおおまかな性質を知るのに向いているといえるでしょう。もし、特解のような、全体の中のたったひとつにすぎない具体例ではなく、一般的にこの形の方程式はどういう動きをするか、を解析するのであれば、この方法は比較的お手軽に一般解を得られますから、有益でしょう。演算子法を考えるにあたって、次のような記号を導入します。
まるで、偏微分がただの係数であるかのように扱いましょうというわけです。
これを用いると、たとえば、一階の定数係数線形偏微分方程式である
という方程式は、
という風に書くことができます。
定数係数同次一階偏微分方程式の一般解
演算子法を用いると、理論上線形であれば高階の偏微分方程式も因数分解によって解くことができます。その前に、最も基本となる以下の事実を用います。先ほど例として挙げた、
という方程式の一般解は、
で与えられます。ただし、f は任意関数です。これが正しい解であることは、直接計算すれば分かります。
このように、確かに正しい解となっています。
しかし、これではあまりにも唐突すぎて納得がいかないので、以前の回で紹介した解法で一般解の導出を試みます。まず、
の補助方程式は
となります。どれを独立変数と見なすかの問題ですが、ここはどれでもいいと思いますが x を変数とみなし、二つの常微分方程式
にします。左の方の式について、
となります。すでに任意関数の中身にあたる bx-ay が現れているのは解法の内容上この時点で読めることですね。もう一つの式は
となるので、ここで関数関係
をおくことで、一般解
を得ます。形が全然違うぞと思うかもしれませんが、解には一意性というものがあるので、この二つは実は全く違うものではありません。仕掛けは任意関数 f(bx-ay) に隠れています。実際、上の一般解に何らかの関数をかけることで
に一致するとして方程式を解けば、bx-ay の関数として e の累乗が正しく求まります。この二つの一般解は関数の任意性によって結びついており、どちらも正しいものです。このような難しい表記に直す理由は普遍性です。x, y が対称性よく含まれているというのは一般的な議論をする際に役立つものです。それに、上のままだと a が分母なので a=0 のとき困ったことになってしまいます。ですから、一階偏微分方程式であるかぎり分母が 0 にならないこの形は最も普遍的なものであるといえます。
ということで、上の一般解は演算子法の基本となるのでとりあえずこれから使っていくことにします。
異なる形で因数分解された場合
もし、演算子を係数であるかのように扱って因数分解した結果、偏微分方程式がという形になったのであれば、その一般解は
で与えられます。ただ、ふつうは二階までで十分なので、ここは n=2 の場合で、
とします。この場合の一般解は
となります。これは同次方程式ですから、その独立解は重ね合わせが可能です。また、その一般解は、常微分方程式もそうであったように、二つの任意関係、ここでは任意関数を含みます。その二つの任意関係はどうやって探せばいいんだということですが、よくよく考えてみると、このかっこを片方ずつで考えたとき、上の一般解の第一項、第二項はそれぞれ
の一般解になっています。つまり、この塊を見かけたら 0 だと思っていいわけですね。ここで、そのことを踏まえて
を
に代入してみると、
を確かに満たしていることが分かります。偶然か必然か分かりませんが、とにかく独立解を二つ見つけてしまったので、異なる形で因数分解できた場合、これが一般解だと言ってもいいわけです。高階の場合もこれをどんどん拡張していけば帰納法的に示せます。
同じ形で因数分解された場合
もし、偏微分方程式を因数分解してという、二次方程式でいえば重解みたいな場合になってしまったら、異なって出てきた場合の手法でいくと、独立解が
しかなく、この和をとっても片方がもう片方に吸収されてしまい、二つの独立な解を出すことができません。そこで、なんかどこかで見たことがあるようなないような手法ですが、片方の独立解に x をくっつけて
とします。
ここで、もう少しこのことを見てみます。まず、
という方程式の一般解は、
でしたが、ここで、この u に x をくっつけた xu というものを考え、
に代入してみると、
という結果が得られます。これは、u に定数係数 a がついただけなので、もう一度 aDx+bDy+c を作用すれば 0 になります。したがって、
を満たすような u に、x をくっつけた、xu に対して
が成立します。なお、実際に計算すれば分かりますが、x ではなく y をくっつけた yu に対してもこれは成立するので、これらは本質的に異なるものではありません。したがって、これで独立解を確認することができたため、
の一般解は
となります。高階の場合もこれを帰納法的に拡張していけば同様の結果になります。
例 : 波動方程式の一般解 (ダランベールの解)
例として、同次線形方程式の代表例である波動方程式 (wave equation)の一般解を、演算子法を用いて考えます。波動方程式はという方程式で、c>0 ですが、これを演算子法によって因数分解すると
なので、公式に代入すればそのまま
という一般解を得ます。これをダランベールの解 (d'Alembert's solution)といいます。
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