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2010
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偏微分方程式 [4] - フーリエ変換による二次元ラプラス方程式の解法
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数学
偏微分方程式
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今回は、フーリエ変換およびその性質を用いて、実際に偏微分方程式を解く例をまとめてみたいと思います。
ラプラス方程式
二次元のラプラス方程式とは、で表される方程式です。この方程式は楕円型偏微分方程式の代表例です。
ラプラス方程式が出てくる経緯
実際、ラプラス方程式は何の時出てくるのか、ここでは一例を挙げておきます。以下、ベクトル解析の公式は一通り網羅されているものとし、断りなく用います。真空中のマクスウェルの方程式は、でしたが、静電磁界すなわち ∂/∂t = 0 のときは、
となります。このとき、静電界の渦なしの法則、および磁界に関するガウスの法則をみれば、電界にはスカラーポテンシャルが、磁束密度 B にはベクトルポテンシャルが存在することになります。これはベクトル公式により rot grad = 0 であるのと、div rot = 0 であるからですね。つまり、
が存在します。ここで得られたこの E, B を、残りの真ん中二つの方程式に代入すれば、まず E のほうは
となり、電界についての方程式
を得ます。これをポアソン方程式といいます。電荷分布の様子が分かればポテンシャルがわかり、そしてポテンシャルが分かれば電界の様子が分かる、ということですね。なお、これと同じ形は磁界に関しても得ることが可能です。B をアンペールの法則の微分形に代入すれば、
を得ます。こっちは全然似た形になりそうにないけど?と思いそうですが、rot grad = 0 ですから、ベクトルポテンシャル A を
と置き換えても (要するに任意関数の勾配を付け加えても)、マクスウェルの方程式は不変です。実際、この新しいベクトルポテンシャル A' の回転は
ですからね。このように、回転の勾配が 0 であることを用いて、ベクトルポテンシャルに任意のスカラー関数 u の勾配を付け加えることを静電磁界におけるゲージ (gauge) 変換といい、静電磁界におけるマクスウェルの方程式はゲージ変換に対して不変であるといいます。こんなものを考える御利益なんてあるのかって感じですが、任意関数の勾配を付け加えても得られる電磁界は変わらないのだから、
という気持ち悪い方程式は、うまい u をとることでもっと簡単にとってもいいよね、ということもいえます。特に、上の式なんか、発散の勾配って気持ち悪いですよね。というわけで、この項を消せるように、以下のようにゲージ変換するとします。
このようなゲージ変換を特にクーロン・ゲージ (Coulomb-gauge)といいます。なお、クーロン・ゲージは、一般の変動する電磁界における、同様のゲージ変換であるローレンツ・ゲージ (Lorentz-gauge) の ∂/∂t = 0 である場合に対応しています。クーロン・ゲージの条件下においては、ベクトルポテンシャルに関して
という方程式が成り立ちます。これもポアソン方程式と同じ形です。なぜならば、これはベクトルですが、i, j, k 成分ごとにばらせば、三つのポアソン方程式を得るからですね。したがって、電界、磁界を解析するには、このポアソン方程式とかいう方程式、
を解くのが鍵になってきます。とりあえずナブラは三次元に対してのものですが、ここでは、二次元のポアソン方程式としましょう。すると、
となりますが、偏微分方程式も、常微分方程式と同じく、非同時である場合、一般解は同次方程式の一般解 + 非同次方程式の特解で与えられるので、これを解くにはまず、右の ρ 云々を 0 とした方程式
を解こうとなります。これがラプラス方程式です。
Step 0. 問題の確認
試しに、以上の問題を解いてみます。定義域から、フーリエ変換して解こうと思ったら x で変換してくださいということも問題はご丁寧に教えてくれていますね。なお、発散するというのは物理的にあり得ないためここでは u はすべての定義域で決して発散せず、かつ x に関して絶対可積分であるとします。
Step 1. 偏微分方程式をフーリエ変換し、常微分方程式に変換する
この問題は、定義域の関係から x でフーリエ変換するのが無難です。偏導関数のフーリエ変換は、x についてフーリエ変換しているのであれば、x の偏微分が ik の累乗に、y の偏微分は x の積分とは関係ないのでそのまま y の微分として残ります。すなわち、です。今回は 2 変数ですから、ラプラス方程式をフーリエ変換すると、y についての k 空間上での常微分方程式に化けます。したがって、
を得ます。なお、境界条件もフーリエ変換しておくと、
ですね。
Step 2. 常微分方程式を解き、 k 空間上での解を得る
という常微分方程式を解けばよいですが、その特性方程式は
ですね。k は虚数ではなく、2 乗だから負になりませんので、普通に解が λ = ±k と出るのですが、
のようには通常書きません。通常は、
と書きます。これは、最初のまんまだと、実数ではあるのですが、その符号は別に正だと決まったわけではありません、これは負でもいいわけです。となると、これから A, B を確定させていく上で、不都合が生じます。k が正だったら B の項が発散するため、これが 0 でなければなりませんが、k が負だったら逆に A を 0 にしなければならず、場合分けが必要で合理的ではないのです。ここで、どうせ k は ± なのですから、別に絶対値をつけたって、その定義域は何も変わりません。だから、λ = ±k = ±|k| としても何も問題ありません。このようにして後者の式のように一般解を表記すれば、|k| は絶対正ですから、第一項は収束する方、もう片方は発散する方、と区別がつけやすく、場合分けの手間がいらなくて合理的というわけです。
ここで、B≠0 ならば k → ∞ で発散してしまいます。フーリエ変換の積分がうまく収束して何かの関数になったのに、それで戻すときは発散するっていうのも意味不明な話なので (要するに絶対可積分性に反している)、B=0 であると確定します。A についてなんですが、A は任意定数、といっても、(y だけを変数として見たときの) 任意定数という意味ですから、別にこれは k の関数であっても何も問題ありません。したがって境界条件を代入して、
を得ます。これより特解は、
と求まります。あとは、これを逆変換すればいいだけです。
Step 3. k 空間上で得られた解をフーリエ逆変換する
さっそく、を逆変換したいのですが、これは k 空間上での関数の積であるため、元の関数は f(x) と e の -|k|y 乗のフーリエ逆変換のたたみ込み積分であることがわかります。
たたみ込み積分の定義は
であり、これについて
という性質があったわけですが、この両辺をフーリエ逆変換すれば
と、ちょっと丁寧すぎましたがこうなります。この、G(k) にあたるのが e の -|k|y 乗というわけです。ですから、まず g(x) がなにか分からないといけないので、この e の -|k|y 乗というのを単独でフーリエ逆変換して g(x) を得ます。そうすれば、 U(k,y) のフーリエ逆変換 u(x,y) は f*g(x) として、解を得ることができます。
というわけで、g(x) を求めてみると、
までは大丈夫のはずです。e の虚数成分は回転ベクトルなので収束性に関しては実数成分が支配的となります。ですので、収束がわかりやすいように実数成分に着目しながらやっていくと見やすいですね。|k| は絶対値なので。0 を境目にこうやって分けてあげないといけません。あとはもう普通に x や y は k にとっては定数でしかないですからこれらは係数感覚で積分すればいいだけですね。
で終わりですね。従って、この問題の解は、
と求まります。
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