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日々外観・機能性が進化し続ける、内容不定の日記帳
published:
13
2010
11

偏微分方程式 [2] - 一階偏微分方程式の演習問題

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Info : posted at 07:39 PM, categorized as メモ帳 img 数学 img 偏微分方程式

 前記事で一階偏微分方程式の理論というほど大層なものでもないですがどういう流れで何が出てきたかを紹介しましたが、今回は実際の問題にどうやってそれらを適用し、解を出せばいいかについていくつかの例題を通して紹介します。
 この記事では、ラグランジュの偏微分方程式の中でも補助方程式を連立すればすぐ終わるパターン (一番簡単) と、補助方程式を解く順番を考えないといけないパターン、さらにパラメータ dt を導入して技巧的に解かなければどうにもならないパターン、そして完全微分方程式の解き方、最後にシャルピーの方法による完全解の求め方について紹介しています。

ラグランジュの偏微分方程式 [1] - 最も簡単な場合

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これはラグランジュの偏微分方程式ですが、本来の形というか、定義通りの形は
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なので、その形に合わせてやると
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となっています。ラグランジュの偏微分方程式の補助方程式は
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という形でしたから、そのまま当てはめてやると
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という風になります。この中で、どれかを独立変数と見なし、その変数についての常微分方程式を二つ作って解かなければなりません。ですので、変数分離でさっさと解ける組み合わせを見つけましょう。今回はまあどれを独立変数に選んでも解けるので何でもいいのですが、ここでは x を独立変数としてみます。すると、自動的に選ぶべき方程式は二つ決まって
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ですよね。どちらも変数分離形の常微分方程式なので、すぐに解けるはずです。左側は、
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ですね。上を見て分かるように、厳密には任意定数は置き直しが必要ですが、ここでは面倒なので一貫して文字を変えずに置き直すことにします。それで、右の方程式は
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と解けます。どちらも凄い丁寧に書きましたが常微分方程式を経験したことがあるならすぐですよね。以上より
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であることがわかりましたが、パラメータは一つ余計なので、別にどっちをどっちの関数であると見ても良いのですが、普通は未知関数 u(x,y) について明示的に解きたいので
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と仮定します。逆でもいいですがそうすると u = なんとかという綺麗な形が作れなくなってしまい、解の正当性が非常に確認しづらくなります。C1 は、先ほど得た式から
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と解けますから、これで、一般解
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を得ます。これで終わりです。常微分方程式の時とは違ってなんだか解いた気になれませんが、正しい解であることは確認できます。実際に偏微分して元の偏微分方程式を満たすことを確認してやればいいのです。実際、
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なので、元の方程式に入れてみると
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と、確かにこの一般解は正しいことが分かります。偏微分の計算がやっかいかもしれませんが、まあ計算自体はもう片方の変数は定数と見てますし、1 変数関数の微分そのものなので、これで手こずった場合は (1 変数関数の) 合成関数の微分を訓練した方がいいかもしれません。

ラグランジュの偏微分方程式 [2] - 最も簡単な場合

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これも全く同じです。補助方程式は
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となっています。この場合は残念ですが独立変数は何でもいいという訳ではありません、まあ普通は選ばないと思いますが例えば u を独立変数にすると dx/du = 2y というものが出来てしまうのでこれは常微分方程式でありながら常微分方程式ではない何かになってしまいルール違反となります (実はルール違反といっても先に dy/du から y = g(u) としてそれを代入すればルール違反ではないんですけどね、でもまあこの問題でそんな面倒なことをする人はいないと思います)。残りの x と y はどちらでも問題ないのですが今回は y を独立変数として
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としてみましょう。左の方程式は
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ですね。log とかそんなのが出てこないのですごい簡単でした。右は
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です。以上より
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であることが分かりました。解いた気にならない偏微分方程式は本当に出てきた解が正しいか確認しないと不安で夜も眠れなくなりそうですから、やっぱり明示的に u(x,y) = とできる方で関数関係を作ります。今回もやっぱり
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の方ですよね。以上より、一般解 を得ます。仕上げに解の正当性を確認しましょう。
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なので、元の方程式に代入すれば
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です。これで夜も安心して眠れそうです。

ラグランジュの偏微分方程式 [3] - 階数降下できる場合

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なんで一階偏微分方程式のところで二階の偏微分方程式が出てくるんだ、と思うかもしれませんが、良く見るとこれ、階数降下して一階偏微分方程式として解くことが可能なのです。分かりやすいようにもうちょっと式を直してみると
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そうです、これ、u の x 偏微分を未知関数と見ると、∂u/∂x についての一階偏微分方程式になるのです。となると、これから補助方程式などをたてていくわけですが、∂u/∂x とずっと書くと大きすぎて格好が悪いというか見づらいので ux と表記することにしましょう。そうすれば
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となります。これなら一階偏微分方程式っぽい見た目ですよね。これの補助方程式は
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です。これは簡単に解けるでしょう。x を独立変数と見なすと、
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という変数分離形ができあがるので、左の方程式から
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となります。右の方程式は
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ですから、まとめると
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となります。やはり今回も
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としますが、それをやる前に、右の式は
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なのですから、そのまま偏微分ならぬ "偏" 積分してやれば u(x,y) は求まります。C はただの定数ですから
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です。この場合常微分ではなく偏微分なので任意定数のかわりに y の任意関数が出ることにも注意してください。ここでようやく
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とすれば、
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という一般解を得ます。これで終わりです。解の正当性を示すのは二度偏微分しないといけないのでかなりしんどいですが
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を代入すれば、
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と、確かに解が正しいことを確認できます。

全微分方程式

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は、全微分方程式です。まず積分可能かどうか調べる必要があります。まあ問題として出てるってことはどうせ積分可能なんでしょうけど、そんなひねくれた考え方はしないでおきましょう。積分可能条件は簡単な覚え方がありましたから、それを元にパッと計算してみると、
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となり、積分可能です。そして、注目すべきはこの方程式は完全でもあるということですね。ちょうどベクトル A = fi+gj+hk の回転 rot A が 0 になっているのが上の式から分かると思います。したがって、
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となるようなスカラー関数 Φ(x,y,u) が存在します。これらは "偏" 積分してやって、共通な部分を取り出せばいいだけなので恐れることはありません。上を積分すると三つの式を得ます。まあ、とりあえずそういうことを言う前にまず積分してみましょう、
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このように、全てが成立しないとおかしいわけですから、任意関数として出てきた α, β, γ はそれぞれ互いの式に足りない項しかあり得ないということも分かると思います。全部の独立な項を寄せ集めればいいというのはそういうことなのです。以上より、
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が一般解です。解の正当性については、まあこの Φ の全微分を求めればいいんですけど、これはさすがに確認しなくてもいいでしょう。

シャルピーの方法 [1]

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これはラグランジュの方程式に分類されるものなので別にシャルピーの方法を使わなくてもいいと思いますが、念のため使うことにしてみます。最初に F(x,y,u,p,q) = 0 の形式に直してみましょう。すると、方程式は
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となります。あと一個関係式が足りれば全微分方程式ができあがって解けます。そこでもう一個適当に G(x,y,u,p,q) = 0 を作って積分可能条件に入れてみたら
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という、F のみ、すなわち与えられた値だけで表現できる G(x,y,u,p,q) = 0 を表すための補助方程式を得られたのでした。次に、今さっきの F を上にそのまま当てはめてみます。ただしここでは x,y,u,p,q は独立変数と見ているので、たとえば u を x で偏微分してもそれは 0 です。p になるとかそういうことは考えないように。結局、G の補助方程式は
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になります。ここから何か一つ p,q を含む関係式を得ればいいだけなのですから、わざわざ難しいものを選んでもしょうがないのでこの場合は一番左と一番右あるいは右二つが簡単になりそうなのが見えますから、どっちかを選びます。どちらを選んでも結果には影響しませんが、ここでは右二つを選びます。両辺にマイナス q をかけることで、補助方程式から
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というのが得られます。まあこれはもう暗算で q=cp あるいは p=cq になるのは分かると思いますが、念のため超丁寧に書いておくと、両辺を積分して
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となります。別にどっちについて解いてもいいんですが、y=f(x) 的な感じで q の方について解いてみます。積分定数が p 側についてるのもそのせいです。別にこれはどっちに出しても大した問題にはなりません。で、この任意定数は任意なので勝手に log の中に入れても大丈夫です。だって log (任意定数) だって -∞, ∞ の値域を持ちますからね。勝手に定数の取り得る幅を切り捨てたりはしてないのでやはり C は勝手に log C としても何も問題がないのです。
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このようになります。で、絶対値を両方消せばプラスマイナスが出ますが、プラスマイナスごと任意定数に含ませてしまえば (任意なのだから符号の有無はわざわざ前に表記しておく必要はない)、結局
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を得られます。このくらいの演算は大して複雑ではないので 3 秒くらいで暗算出来るようになることを推奨します。慣れない場合は常微分方程式の変数分離系をやりこみましょう。問題集 1 章分くらいやる頃にはこの手の演算は暗算で出来るようになってます。あとは F=0 と連立して p,q を x,y,u のみで表示すればいいだけですね。今得られた式を F=0 に代入すれば p が得られます。
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ですよね。q はこれを C1 倍すればいいだけなので、最終的に
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を得ます。これで p,q を x,y,u で表示するという目的は達せられたわけです。したがって、あとは解曲面 u(x,y) の全微分 du を変形して得られた全微分方程式
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を解けばいいだけですね。上で得られたものを代入すると
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ですが、これは完全ではありません。何でそんなことが分かるかというと、完全であるための条件は、ベクトル A = pi+qj-k の回転 rot A を計算するとこれは明らかに 0 ではないからです。まあある程度計算していると分かってくるようになると思いますが、このベクトルは u しか含んでいないのに、u が k 成分にあたる項以外の場所に含まれている時点でもう完全にはなりません。よく分からない場合は実際に行列式に書き起こして計算してみると言っている意味が分かると思います。 ですが、問題として出てるくらいなので完全でないはずがありません。勘がいいと今さっきの記述で気づいたかもしれませんが、実は上の式は両辺に p,q の分母になっている式をかけてやると、ベクトル A の k 成分にあたるところだけに u の式が来るので、完全になります。つまり、
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は du の項だけに u のみの式、しかも dx, dy は定数しかないので完全です。こうなるともうあとは簡単で、
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となる Φ(x,y,u) が存在しますから、そのまま "偏" 積分することで
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を得ます。結局その f,g,h とかいうのは他の式の足りないやつしかあり得ないわけですから、全部寄せ集めて完全解
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が得られます。これはこれで右辺の一定を C2 でもおけば正解ですが、念のためこの解が正しいことを示しておきます。基本的に完全微分方程式の解は明示的に u について解けない物も多いですが、これはギリギリ明示的に解けます。u についての二次方程式と見れば解けないこともないですよね。すなわち
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です。まあ長くなりそうで嫌ですが解の公式が使えます。
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となり、二つあるものの何とか u(x,y) を得ることができました。あとはこれらを偏微分して代入し、元の方程式が成立することを確認すればいいだけです。面倒なのでプラスマイナスは一緒に表記します。上側は u をプラス側で選んだ場合、下側は u をマイナスがわで選んだ場合、と統一して表記することにすれば、x 偏微分は
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という風になります。大変面倒ですがなんか綺麗に方程式を満たしそうな形になっていますよね。
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あとは代入するだけ。
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で、結局 u どっちを選んでも 0 になるのが分かります。これでおしまい。

シャルピーの方法 [2]

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 もう問題文を見た時点でやる気をなくす方程式ですが、これもマニュアル通りやれば出来ます。ただし、少し注意すべき点があります。上でも書きましたが、シャルピーの方法における補助方程式は x,y,u,p,q 全部何の関係もない、というか、独立変数として見なければならないという点です。すなわち、問題を書き直すと
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なのですが、これから作る補助方程式
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について、例えば F を x で偏微分してもここでは g(u) も p も q も独立変数ですから全く x とは関係ありません。合成関数の微分とかそういうことは一切考える必要はありません。これはこの補助方程式の出てくる経緯が分かっていれば大丈夫だとは思いますが、念のために書いておきます。したがって上の F は x で偏微分しても 0 です。このような点に注意すれば、補助方程式は
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となります。 p,q を含む関係式を作りたい以上上の場合はもう右二つ以外使いようがないため、右二つを採用します。まあ du はギリギリ使えますが複雑な形になるのが見えるのでやめておきます。以上より、
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ですがこれはもういいでしょう。
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これより、F=0 を用いて
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となりますから、
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となり、g(u) も中身は知りませんが u しか含まない式なので p,q を x,y,u で表示する目的は達成できました。これより、全微分方程式
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を解けばよいのですが、これも前の問題で書いた理由で完全ではありません。ですがやはりこれも p,q の分母をかけることにより
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で、完全となります。基本的に積分因子は何も書いてない場合自分で見つけることは不可能に近いので、問題として解かされる場合はこのように分母を消せば・・とかそういうので簡単に完全に出来る場合がほぼ 100% といっても過言ではありません。ですのでもし完全でなくて焦ってもちょっと落ち着いて分母を消したら・・とか、そういうのを試してみましょう。以上より、
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となる Φ を求めます。g(u) は積分可能という保証がついているので積分できますがどういう形かは分からないためインテグラルをかぶせて放置する以外のことは出来ません。
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ですよね。まあ独立な項を全部寄せ集めてやれば
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が完全解です。さすがにここまで来ると正当性を確認するのはしんどいですが、これもギリギリ確認できます。u(x,y) は x,y の関数ですから、g(u(x,y)) は合成関数の微分です。ということは上の式の両辺を x や y で偏微分したら ∂u/∂x が出てきますよね。なので明示的に u について解いてから偏微分する必要はなく、そのまま両辺を x,y で偏微分すればよいのです。少々技巧的かもしれませんが、つまり
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こういうことなので、完全解を x,y 偏微分すれば
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がそれぞれ得られます。元の方程式には u はないですから u について明示的に解く必要は無く、これより直接代入することが可能になって
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となり、この解は正しいことが確認できました。まあこういうのやってて思いますがやっぱりシャルピーの方法は手順を覚えたもの勝ちだと思います。数はこなさなくていいのでこういう難易度が比較的高いというか複雑な部類をよく理解することでうまく処理できるようにしてテストに挑みましょう。

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