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2010
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フーリエ解析 [3] - フーリエ変換の性質
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数学
フーリエ解析
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フーリエ変換の定義について
前回、フーリエ級数からフーリエ複素級数へ、そして周期性をなくし、一般の周期性がない関数、つまり周期が無限大である関数に対するフーリエ複素級数であるフーリエ複素積分から、フーリエ変換対を定義しました。f(x) を (-∞, ∞) で積分したものをまた積分したら f(x) に戻ってくる、と。それでフーリエ変換、逆変換をそれぞれどうやって定義したのかというとという風でした。ですが、書籍・分野によって、この定義は若干左右します。具体的にはどういうことかというと、フーリエ変換とはそもそも、フーリエ複素積分 (フーリエ複素級数で L → 0 とした結果)
から、内側の積分を F(k) として、いったん f(x) を x について上のように積分したものをまた同じ無限大からマイナス無限大まで今度は k について積分すれば元の f(x) に戻ってくるよ、それで k の変数空間に行ってしまう方をフーリエ変換、k の変数空間から戻ってくるのをフーリエ逆変換と呼んだわけですね。で、この定義から明らかなように、前に 1/2π はくっつきます。それを、フーリエ変換にくっつけるか、逆変換だけにくっつけるか、あるいは、両方均等にルート 2π ぶんの 1 ずつくっつけるかは、本によってバラバラですよというわけです。すなわち、一番最初に示した定義だけでなく、1/2π の分けかたによっては
という風に定義してもいいし、
という風に定義しても何も問題はありません。ですが、係数が変わったくらいで本質が変わるわけもないので、どのような定義をとっても、その性質は変化したりしません。ただし、ルート 2π ぶんの 1 の分け方だけ、公式の表記に若干揺れが生じるのは、上から明らかでしょう。一番下の定義はほとんどみません。一番最初の等分配は純粋な数学系の書籍、真ん中のフーリエ変換の方に全部割り当てる方法は工学系の書籍でよくみます。ここでは、
という定義を採用することにします。なお、前回 ω が変数になっていましたが、TeX で書くと毎回 \Omega が面倒なので簡単のため k を変数にします。しかし、物理的意味を求めるならば k には各速度という意味が隠れていることはやはり見逃してはならない事実です。
なお、フーリエ変換をするためにはもう一つ、絶対可積分という条件がつきまとっています。前回は全く触れませんでしたが (というか簡単のため無視した)、どういう条件かというと、
このような内容になっています。定義されている空間で、f(x) の負の面積も強制的に全部正で勘定してあげたとしても、それは有限の値に収束しますよ、ということです (絶対値がない場合よりも強い条件ということになる)。まあ、フーリエ変換は変数の定義域を全部使う (-∞, ∞) ですから、フーリエ変換できる関数は収束性がよいものに限定されるというのはだいたい想像がつきますね。ということは、これは何でも変換できるわけじゃないよということもいっています。このままではあまりにも天下り的な定義すぎるので、少しだけ考察します。
フーリエ変換した k 空間上の関数 F(k) は、フーリエ逆変換の定義上、やはりすべての値をとることが可能です。ということは、フーリエ変換の定義式において、いかなる k に対してもその積分の値が存在しなければなりません。たとえば k=0 の場合、関数そのものの値を (-∞, ∞) で勘定してやれば、それは収束しなければなりません。そういうわけで、絶対値はないにせよ、上に近い条件が要求されることはここからもなんとなく理解はできます。そして、e の -ikx 乗、すなわち e の純虚数成分は、オイラーの公式でもわかるように、ただの回転ベクトル、周期関数です。したがってこれにくっついている f(x) に値がいつまでもあってもらっては、無限大での値が確定せず困ったことになってしまいますし、そもそも絶対可積分の式から見ても、もし速やかに 0 に収束しないで、有限の値に収束するならば、無限大まで値が存在してしまうことになりますから、無限大まで有限の値として存在する関数の値を勘定し続けたら面積は発散してしまいそうです。というわけで、一般に |x| → ∞ で十分早く 0 に収束するような関数でなければフーリエ変換は存在しません。たとえば ex のような関数にはフーリエ変換は存在しないのです。それじゃあ不便じゃないかと思われるかもしれませんが、すでに拡散方程式でみてきたように、一般に現象を解く上で偏微分方程式を扱う限りでは速やかに 0 に収束するような関数ばかりであるため、フーリエ変換の有用性はその程度では揺るがない、というわけです。
線形性
フーリエ変換は複素数混じってちょっといやな感じですが積分変換です。積分には線形性があります。線形性というのは一般にスカラー倍と和の公理を満たすようなものをいいます。すなわち、フーリエ変換における線形性とは、が成り立つことを意味します。この変な飾り文字っぽい F はフーリエ変換であることを意味しています。ですから F[f(x)] = F(k) と等価です。これを確認するのは、直接左の式にあてはめれば十分かと思います。
ですね。まあ、多項式をフーリエ変換したかったら別に項ごとにフーリエ変換していいし、そしてスカラー倍されてるならそのスカラー量はフーリエ変換の外に出していいよ、ということですね。
移動定理 (1)
これはつまりラプラス変換でいう第一移動定理ですが、フーリエ変換では移動定理とは呼ばないようです。でも名前がないと気持ち悪いのでここでは便宜上第一移動定理と呼びます。一見難しそうですが、フーリエ変換自身の導出は複雑であったにもかかわらず、それ自身の性質は示すことも簡単で覚えやすいかつ使いやすいものばかりですから心配ありません。これも実際に定義にあてはめれば結構早い段階でわかります。
このようになります。フーリエ変換は最終的に x は積分して具体的な値に変化して、残った k だけの関数になるわけです。上の場合、e の ik0x 乗をかけたものをフーリエ変換すると、最終的に k-k0 が残ることになり、k0 だけ k 空間で平行移動します。それで "移動" といわれるわけですね。
移動定理 (2)
これはラプラス変換でいう第二移動定理に相当します。こちらにも、どういうわけかやはり名前がついていません。なのでここではとりあえずこれも第二移動定理と呼びます。第一移動定理は、元の関数に e の累乗をかけたものをフーリエ変換するとその定数分だけ k 空間でシフトするという定理でしたが、第二移動定理はフーリエ変換した関数に e の累乗をかけたもの、これを逆フーリエ変換で戻してくると累乗にある定数分だけ x 空間でシフトしてくるという定理です。ですので、今度は逆変換で直接定義にあてはめればよいのですね。
確かにこのように成り立っているのがわかります。
これら移動定理は、フーリエ変換の定義式を覚えていれば符号は間違えないと思います。第一移動定理は定数分だけシフトしますが、正確には定数分の逆符号だけシフトするのに対して、第二移動定理は定数分と同じ符号でシフトしているのが分かります。これは、フーリエ変換対において、フーリエ変換の定義にある e はマイナス、逆変換はプラスの ikx 乗があるからですね。このことはラプラス変換にもいえることなので、そのように覚えれば混乱はないと思います。これらの定理は有用な上に証明は脳内で完結できるレベルなので、出会ったらまず定義にあてはめましょう。
微分のフーリエ変換
少なくとも、微分方程式を解くという上で、わざわざこんな奇妙な積分変換を考える理由は、ほとんどこの性質に集約されるといっても過言ではないと思います。導関数のフーリエ変換は、以下のようになります。フーリエ変換すると、1 回の微分がただの ik に化けるのです。何回微分してもその累乗が増えるだけ。これによって、微分方程式を解くことは、f(x) のフーリエ変換である F(k) を代数計算によって求め、その逆変換をすること、という風になります。奇妙ですが、フーリエ変換という積分変換を定義すれば微分がこんな簡単なことになる、すごい発見ですよねこれ。このことを示すのは今までの性質よりは面倒ですが、それでもそんなに難しくはないです。要は絶対可積分という前提を考慮しながら部分積分を繰り返すだけになります。なぜそういうことになるかは定義式にあてはめれば分かると思います。ここでは、いきなり n 回からやるんじゃなくて、一番簡単な 1 回から順を追っていこうと思います。
つまりこういうことですよね。これで部分積分できるようになったので、実際してみましょうというわけです。
部分積分で出てきた左の項、つまり計算部分の処理ですが、ここで絶対可積分という条件を思い出します。f(x) は |x| → ∞ で "速やかに" 0 に収束するような関数です。したがって、どちらの無限大でも e の累乗にかかわらず速やかに f(x) が 0 へ収束するため、この項は消滅します。ラプラス変換と違ってやや分かりづらいのはここですね。これで、一階導関数に関しては性質が示せました。では二階はどうなるでしょうか。
このようになりますね。絶対可積分であるなら、f(x) は |x| → ∞ で速やかに収束するというのはいいですが、では導関数もそうなのでしょうかというと、速やかに f(x) が 0 になるというのは、速やかに x 軸と平行になってしまうということもいえるわけです。ということは、導関数をとりながら追ってみると速やかに導関数も 0 になるだろうというのがだいたい直感的に理解できます。そういうわけでここでは証明などはなしに速やかに f(x) の導関数も速やかに 0 に収束するとし、上の性質を導くことにします。以上を繰り返していけば、帰納法的に
が示されます。
合成積のフーリエ変換
たたみ込み積分なるものを、次のように定義します。ξ はグザイ、あるいはクシーなどと読むギリシア文字ですが、これはローマ字で x にあたる文字であるため、x を使いたいが本来の x と文字がかぶる場合に使われるものです。ゼータ並に書きにくいので嫌われる傾向にありますが、これは Z を二個縦に並べる感覚で書くとうまく書けますから試してみてください。それで、この積分にはもちろん物理的意味 (たたみ込みとは、二つの変数が一つの変数にたたみ込まれるという意味でついている) もありますが、具体的な意味について詳しくは別途記述することにして、ここではこんなものを定義したところで何に役に立つのかを述べておきます。偏微分方程式を解くという上では、これはただの便利なツールというとらえ方でも問題ないと思います。これがなぜ役に立つのかというと、答えは積のフーリエ変換にあるのです。関数の積をフーリエ変換する、つまり、 F[f(x)g(x)] を求めると、今までの都合のいい性質からすれば、F(k)G(k) になってくれるよう、期待してしまいます。しかし、残念ながらこのようにはなりません。フーリエ変換して F(k)G(k) になるのは、このたたみ込み積分 f*g だというわけです。たたみ込み積分をフーリエ変換すると、次のようになります。
ここからは、フーリエ変換の定義をどのようにしたかによって係数が 2π じゃなかったりするので注意が必要です。なんで 2π ぶんの 1 じゃなくて 2π なのかは、簡単に言うとフーリエ変換ふたつ分に分けたかったら 2π ぶんの 1 がふたついるのに f*g のフーリエ変換じゃそれは 1 個しかないから無理矢理 2π ぶんの 1 を出現させたよってことなんですが、詳しくは実際に定義に当てはめていけば分かると思います。
ここで、 e の ikx 乗は ξ とは関係ないので、全部内側に入れてしまいます。そんなことして何がしたいってそう、もちろん積分順序の交換ですよね。これ累次積分ですからね。
互いの積分範囲は、もう片方に全く依存していないので、単に dx と dξ が入れ替わるだけですみます。縦線集合だとか横先週号云々を一切考えなくていいので楽ですね。
で、今度は ξ のみの関数 f(ξ) が x とは関係ないのでこれを外に出します。
これで f と g を分離できましたね。フーリエ変換の積にする準備が整ったってわけです。あとは g の中身が邪魔なのでちょっと変数変換して x' = x - ξ とでもおいておきましょう。
で、e の累乗を分離してやれば ikξ の方は x' と関係ないからまた x' の内側の積分から外に出せるってわけです。
もう完全に内側の積分と外側の積分は変数に依存性がなくなっちゃいましたね。なのでもうこれは累次積分ではなく、積分のかけ算に直せます。
この時点でフーリエ変換の定義の積みたいな形になっているのでほぼ試合終了ですが、ここでとったフーリエ変換の定義では 2π ぶんの 1 が必要であるため、フーリエ変換の積にするには、もう一個 2π ぶんの 1 がないとだめです。というわけで、無理矢理出現させて解決します。
というわけです。
積のフーリエ変換
じゃあ今度は、f(x)g(x) 自体をフーリエ変換したらどうなるの?という疑問ですが、x 空間のたたみ込み積分は k 空間上で積になったのに対して、x 空間上の積は k 空間上でたたみ込み積分になります。すなわち、となります。これもフーリエ変換の定義に当てはめればよいですが、その後 f(x) g(x) のうちどちらかをフーリエ逆変換の定義にあてはめて考えてみるという方針でいきます。
ここまでは大丈夫。ただ、逆変換の際の戻ってくる元の場所である k 空間とこれからフーリエ変換によって移される k 空間に依存性は全くないので、どちらかにプライムでもつけて別物だよということを示しておく必要があります。あとは例によって積分順序を変更したりしてたたみ込み積分の格好を目指していきます。内側の積分は k' だけが積分変数で、外側の被積分関数は k' と関係ないですから全部内側に入れて dk' と dx を入れ替えればいいですね。
このようになりおしまいです。
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