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published:
16
2010
10

フーリエ解析 [2] - 複素フーリエ級数からフーリエ変換へ

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Info : posted at 06:33 PM, categorized as メモ帳 img 数学 img フーリエ解析

フーリエ級数のおさらい

 任意の周期 2L を持つ三角関数は、
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で表されますが、これらを無限に重ね合わせることで任意の周期 2L の関数 f(x) を近似させる方法を、フーリエ級数展開といいます。これは、
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で表現されます。ここで、anフーリエ余弦係数、bnフーリエ正弦係数といい、a0 は原点からの "浮き" を表します。それぞれ、周期積分によって求めることができ、それは
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という公式で求めることができるのでした。まあ、別に基本的なアイデアさえ知っていれば覚えるのには大して苦労しない式だと思うのですが、いずれにせよ手書きにはとにかく時間がかかってしまう公式です。だからというわけではないでしょうが、これのさらに一歩進んだ表記として 複素フーリエ級数 (Complex Fourier Series) というものが存在します。これは、次のようにして表されます。
001.png
いきなりこれでは、やる気がなくなってしまいそうですが、ちゃんとフーリエ級数展開の式を変形するとこれが得られるので、本質的に異なるものではありません。単に複素表示すると表現が簡単になる、すっきりすると思っておけば良いでしょう。あの有名なフーリエ変換はこれをもとにして定義されるため、出し方くらいは知っておいた方がいいですよね。

三角関数の複素数表示

 では、問題のどうやって出すかなのですが、その前に新たな一つ道具を使わないといけません。オイラーの公式
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を使います。フーエ級数でいうと上のオイラーの公式の x は nπ/L に相当しています。これをもとにして sin x、cos x の複素数表示を得ることができます。方法は、e の ix 乗と e のマイナス ix 乗作り、和と差を取ればいいだけです。つまり、
003.png
を足し引きすれば sin, cos がそれぞれ打ち消し合って複素数表示になります。以上より、
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という重要な公式を得ます。これはここだけでなく、様々な方面で出てくることになるので、覚えてしまうのが無難です。

フーリエ級数からフーリエ複素級数へ

 必要な道具は揃ったため、実際にフーリエ級数から複素フーリエ級数を出してみることにします。
 まず、任意周期の三角関数
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は、オイラーの公式により
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です。これをそのままフーリエ級数展開の式
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に放り込みます。すると、
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となります。あまりの式の長さにやる気がなくなりそうですが、まだ公式を使って代入しただけなので何も高度なことはやっていません。ここで、ちょっと整形してやります。
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まあまだなにも変わってません。次に、i が分母にあるとやりづらいので上下に i をかけて上に i を持って行きます。このとき、下は i かける i なので -1 になりますから、符号が変わるのにも注意です。
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今度は e の累乗ごとに分けます。e のプラス乗とマイナス乗が見えますから、それでくくればいいだけです (下の画像は級数内の第一項と第二項の間の符号を間違えていました。正しくはマイナスではなくプラスです)。
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ここで、新しくできた an と bb による数列を、左の方は cn、右の方は dn、つまり
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と書き直すことにしましょう。しかし、このままじゃあこれでお手上げです。そこで、具体的に an と bb は、前回の方法により得られた
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ですが、これを直接代入して cn と dn を得ることにしましょう。まず、cn について、
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となりますが、よく見ると積分は範囲が一緒なのでまとめてしまうことができます。そしてここからがすごくうまくできていて感動してしまいそうなところになります。
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因数分解したことによって得られたこの緑色の部分は、オイラーの公式そのものなので、e の累乗に戻せます。ですから、
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となり、既に目的の cn が得られていることが分かります。ただし、今の時点で無限級数は n : 1 → ∞、つまり上の場合 n は 1 から ∞ の場合こうなることを示したまでのことです。最初で見た公式では n = -∞ から ∞ となっているため、負の場合 0 の場合もそうなることを示さなければなりません。これで大体想像がついたかもしれませんが、実は dn が負の場合、端に残っている a0 が 0 の場合に対応しています。
 では、実際にそのことを見てみます。次は dn について、全く同じようにして
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となったので、今度はさっきとは符号が逆の
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が得られました。ここでちょっと待って欲しいのですが、今、n は 1 から ∞ です。ということは、dn は cn と符号が逆なだけですから、たとえば cn の 1 番目に対してその符号が逆なだけの dn はわざわざ dn の一番目と呼ばずに cn の -1 番目と呼んでもよいのではないでしょうか。同様に、cn の n 番目は dn のマイナス n 番目が対応すると見ます。すると、事実上、無限級数は範囲を 1 - ∞ から -∞ - ∞ (0 はないので 0 は除く) にすることで、一つにまとめることができるようになります。つまり、今、
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であることがわかったのですが、フーリエ係数にくっついている指数関数も符号が逆なだけですから、結局一つに統合してもよい、ということです。念のため全部分解して見てみると
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ですね。シグマも分解して見てみると分かりやすいですよね。後足りないのは 0 番目です。左にでてるやつが 0 番目に対応しそうなのは分かると思いますが、これは先ほどの cn に n=0 を代入すれば確認できます。
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であるのがわかりました。ということは、シグマの中に入れても問題ないということです。これで、負も、0 番目も得ることができたため、
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という式を出すことができました。これが複素フーリエ級数の出し方になります。非常に丁寧に見ていきましたが、まあ慣れれば大して時間をかけずに頭の中で出すことができます。丸暗記だと 1/2L とか指数のプラスマイナスとかがあいまいになってくるので何の考えもなしにこれを覚えようとするのはやめた方がいいです。

複素フーリエ級数からフーリエ変換へ

 あの有名なフーリエ変換の定義
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は、先ほど求めたフーリエ級数から出すことができます。フーリエ級数からフーリエ変換へと持って行くための基本的なアイデアは、周期 2L の周期関数から、周期を無限に広げる、つまり L → ∞ (この表記は 2L → ∞ と同じこと) として非周期関数にしたらどうなるかということです。この方針に従えば導出はさほど難しくありません (難しくありません、といっても数学的に厳密な証明ではないので "形式的に" 導出するのは難しくないということにしておきます)。つまりフーリエ変換とは、周期関数の級数展開であるフーリエ複素級数を、非周期関数つまり L → ∞ の場合に適用したらどうなるかということの結果から導出されるものである、ともいえます。
 とはいっても、上のまま複素級数を L→∞ としてもいくつになるどころか、収束するんだかしないんだかすらさっぱり分かりません。そこで、ちょっと見方を変えてやります。実はここで (角) 周波数 ωn を導入すると、フーリエ変換の式を出すことができるのです。周波数とはつまり通常の三角関数よりどれだけ速く進むかということです。なので、三角関数の中身の変数の係数、上の場合は指数関数の指数の変数の係数 (i は除く) で定義できますから、今回の場合 n の値によって周波数が変わってしまうので、n 番目の周波数 ωn という意味を込めて、
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と定義します。当然 n は整数なので ω は離散的な値を取ります。その離散的な値の幅 Δω は、ある ωn とその隣の ω との差でとればいいのですから、
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で定義されます。これらを用いると、L→∞ で Δω → 0 となるのがわかります。もうこの辺で何がしたいか分かってきたかもしれませんが、そのまま直に L → ∞ だとどうにもならなかったところ、周波数を導入し、そして変数をその周波数 ω、という見方にすることで、いわゆる "区分求積" による積分の定義を用いて、ω の積分に直してやることができるようになるのです。わざわざ Δω を求めたのは、区分求積ということは変数の増分は不可欠ですから、ωn を変数として導入したいなら当然その増分 Δω は調べないといけなかった、ということですね。これらを用いると、最初の 1/L は Δω の定義より Δω/π と変換でき、指数関数の中身は iωnx に変換できます。
 実際にこれらの代入作業をやる前に、フーリエ係数を級数展開の式に代入してあげましょう。
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フーリエ係数にあたる部分の積分変数が x から u になりましたが、これはローカルな変数を x のままにしておくと外部の変数とかぶって誤解が生じるため変えただけのことです。次に、先ほど導入した離散的な周波数とその増分を代入します。
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となりますが、Δω を外側に出すなどして整理してやります。
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これで準備完了です。実はここで L → ∞ とするとフーリエ変換とフーリエ逆変換の定義が得られます (ただし、二度目になりますが、これは厳密な証明ではありません)。L → ∞ ということは Δω → 0、つまり増分を無限小に持って行くということなのですが、横にシグマがあるのも含めると、これはまさに区分求積の定義そのものとなっています。つまり、
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であったことを思い出し、これにあてはめてみれば Δω → 0 の極限において ωn は離散的ではなく連続的な値を取るようになり、変数 ω となって、結局、
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を得ます。これは複素フーリエ積分といいますが、この複素フーリエ積分において、前に出ている 1/2π をかっこの外、かっこの中に分配し、その後かっこで囲まれた部分を F(ω) とおくと、
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が得られます。このうち、上の F(ω) を f(x) のフーリエ変換 (Fourier Transform)、下の f(x) を F(ω) のフーリエ逆変換 (Fourier Inverse Transform) と定義します。
 結局これはどう解釈すればいいかというと、今までの流れでいえば、フーリエ級数展開を非周期関数に適用したらどうなるかを見てきたわけですが、フーリエ変換はフーリエ係数、フーリエ逆変換はフーリエ級数展開に対応します。つまりある関数 f(x) を周波数成分による関数 F(ω) に変換し、それは逆変換によって再び元の関数に戻せるということを言っています。そう見てみれば、フーリエ級数展開においても、離散的な数列 cn にいったん変換し、その無限級数を求めることで元の関数へ逆変換したのだ、と見ることが出来ますね。結局これらは、周期関数、非周期関数に適用したかの違いだけで、名前はフーリエ変換、フーリエ係数と違いますが、ほぼ対応していることになります。なお、今回は複素フーリエ級数からフーリエ変換の定義を見ましたが、普通のフーリエ級数から同じように L → ∞ とすると上のように積分になりフーリエ積分を得られます、ここからフーリエ変換の実数版ともいうべきか、フーリエ正弦変換、余弦変換、そしてさらにそれらを経由してフーリエ変換の定義を出すことも出来ます。
 しかし、なぜこんな面倒な変換をするのかということですが、それは微分方程式の観点から見れば、単に「微分方程式を解くのが楽になるから」ということに過ぎません。これだけ深い、しかも難しい理論でありながら (この記事では収束性などより厳密な議論が省かれているので簡単に見えるかもしれませんが、本当は全く簡単な話ではありません)、実は応用上は定義さえ覚えておけば OK というものであるため、使うのはものすごく簡単でしかも便利ですから、大まかな流れをつかんだらもうフーリエ変換の定義は重要公式として覚えてしまうのをおすすめします。
 分量が多くなってしまったので、主要な関数のフーリエ変換、逆変換や、フーリエ変換の有用な性質などは次回に記述することにします。

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