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2009
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フーリエ解析 [1] - 三角関数の積分公式とフーリエ級数展開
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数学
フーリエ解析
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※この記事は 2010 年 10 月 12 日に全面改定されました。自分専用メモから、より「誰でも読める」内容になったと思います。三角関数と積分の知識が数学 III レベルまであれば高校生でも理解できるように色々工夫しました ([2] の方は残念ながらそういう風にはなっていません)。基本的にほとんど自分なりの解釈で書き上げた内容ですが、以下を参考文献としてあげておきます。
※参考文献
1. "フーリエ解析と偏微分方程式 : 2. フーリエ級数、フーリエ積分、フーリエ変換" - E. クライツィグ著, 安部寛治 訳, 培風館
2. "物理入門コース10 物理のための数学 : 6. フーリエ級数とフーリエ積分" - 和達三樹 著, 岩波書店
3. "詳解 電気回路演習 (上) : 第7章 Fourier 変換と波形解析" - 大下眞二郎 著, 共立出版
三角関数の周期
三角関数は、周期関数です。その周期はもちろん今までさんざん見てきたように、2π ですね。まあ、わざわざグラフは描かなくてもいいかもしれませんが、一応見ておくと、という風に、確かに 2π 周期になっているのがわかります。赤い方が sin(x)、青い方が cos(x) ですね。これらは全く異質なものではなく、単に移相 (x 軸方向の値) が π/2 ずれているだけの関係であるのもすぐにわかりますね。
と、いうわけで、半ば定義みたいなものですが、三角関数は x (別に x でなくてもいいけど、つまり変数) の係数が 1 であるとき、周期が 2π ということが確認できました。それでは、この関数の中身の x が、2 倍になるとか、1/2 になるとか、そういうときはどうなるでしょうか。もちろん、これも高校で見てきたとおり、たとえば sin(2x) は、普段の sin(x) より二倍の早さであのグラフが描かれる、というわけですから、周期は半分になります。逆に、sin(x/2) は、普段の半分の早さでしか進まないのですから、周期は 2 倍になります。このことは、以下のようにコンピュータにグラフを書かせれば確認できますね。
赤色が普通の sin(x) のグラフ、緑色が sin(2x)、水色が sin(x/2) となっています。それぞれ、周期は 2π が基準ですから、sin(2x) の場合は 2 倍の速度で進むので周期は半分となり、π、sin(x/2) の場合は半分の速度でしか進まないので周期は 2 倍になり、4π となります。
では、このことを一般の周期 2L に拡張したらどうなるでしょうか。世の中なんでも周期的な現象が、周期 2π で繰り返されているはずはありません。だから、もっと一般的に 2L という周期 (別に L でもいいが、これ以降で紹介する様々な事項の記述の簡単さから 2L になっていることが多い) の sin, cos も、知りたいですよね。これはそれほど難しい話ではありません。なぜならば、上の話でもうほとんど決着はついているからです。2 倍 3 倍といわず、関数の中身を k 倍したとしましょう。sin や cos の中身を 2 倍したら周期が 1/2 、3 倍したら 1/3 ・・・になるのですから、k 倍したら周期は 1/k 倍になります。逆に 1/k 倍したら、周期は k 倍されます。つまり、このことを用いて、どうにか周期が 2L になるよう仕組んでやればいいのです。
まず、三角関数の x の係数が 1 のとき、周期は 2π でした。ここで、三角関数の中身を π 倍すれば、周期は 1/π 倍されるので、周期 2 になります。あとは周期を L 倍すればいいのですから、それはつまり三角関数の中身を 1/L 倍すればよいので、結局周期が 2L である三角関数というのは、
であることがわかりました。これがこれから見ていく「フーリエ級数」の基本となる、一般周期の三角関数の式となります。
三角関数の積分公式
まあ考えられるなら出来るだけ一般的な方がいいので、以下、"三角関数" というと任意の周期 2L を持つ三角関数のことを指す、ということにします。ここでは、その三角関数を使った、以下のような積分を考えてみようと思います。なお、以下用いる m と n は、全て自然数とします。この m と n は分数やマイナスにはならないので注意して下さい。多分これは大学入試問題の過去問などで見たことがあると思います。私もどこかで見た覚えがあります。なので別に大学生でなければ出来ない、というような積分ではありません。何でこんな積分をさせられるのだろうと思うかもしれませんが、実はこれは次の節で考える「フーリエ級数」の理論に必要不可欠な重要公式なので、わざわざ考える価値があるのです。結果も簡単なので、結果を出したら是非覚えましょう。
で、これは、いわゆる「周期積分」といやつですね。積分の幅が周期とちょうど一致するかたちになっています。別に 0 から 2L でも結果は変わらないからいいのですが、この後偶関数、奇関数云々考えるため、-L から L とした方がなにかと都合がよいですからこのようになっています。これの求め方は色々あると思いますが、とりあえず部分積分とかそういうことは考えないでください。なぜなら、三角関数の場合、三角関数の積は三角関数の和に分離できるからです。これを和積公式といいました。まあ和積公式は別に覚えなくても OK です。ただ加法定理から出てくるということは知っておく必要があるでしょう。ここでは改めて加法定理からの出し方を書いておきます。まず、sin 同士、cos 同士の積を和に直す場合は、sinsin, coscos の項が必要ですから、cos の加法定理
を思い出しますよね。なんかこの前 CM でどこかの塾の先生が「公式は導けばいい」的なことを言っていましたけど、あまりにも基本的すぎるものは瞬時に出てこないと時間がかかりすぎてヤバイですから加法定理くらいは暗記しておきましょう。実を言うと加法定理もオイラーの公式を覚えていればすぐに導き出せるのですが、まあ暗記すべきなのはどこまでかという話は大幅に脱線になるのでやめておきます。で、これを足せば sinsin の項は消滅、引けば coscos の項が消滅するので、和積公式完成というわけです。この加法定理の和と差をそれぞれ求めてみますと
となりますよね。あ、ここで注意ですが、足すときはどうでもいいけど引くときは下の式から上の式を引きましょう。でないと右がマイナス sinsin になって符号を反転する一手間が増えますよ。これでもう試合は終わったも同然で、あとは両辺を半分にすれば
が完成ですね (注意 : 上の式の右辺を 1/2 倍するのを忘れていました)。sincos の場合も話は一緒です。sincos だったら sin の加法定理ですよね。
まあこれ足しても引いても本質的に得られるものは一緒なんですけど、とりあえず足した方を選べば
なので、同じように半分にして
を得ました。
さて、本題ですが、上記の和積公式
を用いれば、
は、簡単に積分することができます。α = nπx/L 、β = mπx/L としてそのまま代入してやればいいですね。一つ目の I1 からいってみましょう。
面倒ですが丁寧にやっていくとこうなりますね。で、ここで気づいたと思いますが。分母に n-m というのがあります。ということは n=m になることも当然あるわけですから、そうなると都合が悪くなってしまいます。後付け理由というわけじゃ決してありませんがここでは n≠m としておきましょう、n=m の場合は別に考えます。そして、ここまで長いこと式を変形して残念ですが、これは 0 になります。n, m は自然数なので、n-m 、 n+m は整数です。sin の中身が、整数倍 x π ということは、n, m がいくらであろうが必ず sin は 0 になります。したがって、上の結果は 0 です。しかし、n=m の場合は含まれないので、m=n の場合はどうなるか見てみましょう。
今度は半角公式ですか?まあこれも一から出すなら加法定理ですね。cos(α+α) として加法定理を見ればいいだけですね。
二つのルートがあり、それぞれ sin, cos の半角公式が得られます。もっとたくさんルートがあったら攻略し甲斐もあったのですが、2 個じゃすぐ終わってしまいますね。まあテキスト系のゲームだって、ルートがあまりに多すぎると全部攻略する気がなくなってしまいますから、ちょうどいいといえばいいくらいです。で、移項して 1/2 倍した結果、
を得ます。以上から、
であることがわかったので、まとめて、
となることがわかりました。ここでいう δnm というのは、クロネッカーのデルタ と言われる記号で、m = n ならば 1、m ≠ n ならば 0 というだけのことです。だから上の式の意味するところは、m=n ならば L、m ≠ n ならば 0 ということをいっているだけですね。ちなみにクロネッカーの、とありますが、同じ記号でディラックのデルタ関数 (単位インパルス関数) というのもあります。
これがあと 2 つもあるのか・・・と思うでしょうが、もう使うべき公式は出そろったのでここからはとんとん拍子です。次に I2 を見てみましょう。こちらは和積公式で分かるように cos - cos だったのが cos + cos になっているだけなので全く同じ結果になります。あえて全く同じように計算していくと、やはり分母が m-n になるので、m≠n のとき
ですし、m=n のときは
と、全く同じです。したがって、
となりました。最後も全く同じ要領です。m≠n のとき、
となります。cos の場合 cos(-x) = cos(x) (いわゆる偶関数) ですから、そのまま打ち消し合って 0 になってしまいます。で、m=n の場合は
と、どんな場合でも 0 になります。最後の式を見て欲しいのですが、これは周期 2L の sin の式です。これを 1 周期 2L にわたって積分ということなのですから、当然 0 になります。積分とはどういう意味だったのかを思い出しましょう。これは (符号つき) 面積を求めるということでした。1 周期分の面積の合計だと、ちょうど上に出っ張ってる部分と下に出っ張ってる部分の面積が等しいため打ち消し合って 0 になります。ですから、 sin, cos 単体の周期積分は必ず 0 になります。これも公式のうちなので知っておかなければなりません。図で見れば一発でしょうね。
以上の結果をまとめると、結局、
を得ました。和積公式など基本の基本に戻って考えたため相当長くなってしまいましたが、この結果は次以降どんどん出てくるので必ず押さえておく必要があります。これが面倒なら複素解析のやり方として、オイラーの公式を用いて指数関数の積分に直して示すというやり方もあります。
フーリエ級数展開とは何か
ようやく今回の主題であるフーリエ級数 (Fourier Series) 展開ですが、これは簡単にいってしまえば「複雑な周期関数を最も簡単な周期関数で近似しよう」というものです。その、最も簡単な周期関数が、sin, cos というわけですね。tan は sin/cos ですから "最も簡単な" というわけではないため違います。まあ、フーリエ級数展開は、テイラー展開の兄弟とでも考えておけばよいでしょう。ただしテイラー展開と違い、フーリエ級数展開の強みは、不連続関数であっても、区分的に連続 (不連続でも、その点における左右極限がそれぞれ存在すれば OK ということ) であれば適用可能、これは相当ゆるい条件なので、実用上ほとんどの関数に適用出来るということです。ただし、無限大に発散するような関数は区分的に連続とは言わないため近似できません。
さて、大体フーリエ級数展開がどんなものか分かったところで、フーリエ級数展開の式を見てみます。その前に、次のような、周期 2L の最も簡単な正弦波を考えましょう。
θ は初期位相です。初期位相とは、原点からの x 軸方向のずれのことでしたね。なので、これの値次第では cos でもあるし sin でもあるよ、つまり sin で書いてみたはいいが結局これは cos でも何でもいいよというわけです。そういう意味で上は cos でも何も結果に影響を及ぼしません。さて、ここで改めて、周期が 2 倍、3 倍・・・となった正弦波を見てみましょう。
一番緩いというか周期が長い赤いやつが sin(x)、緑色が sin(2x)、水色が sin(3x) です。通常の色である水色に比べて赤色は周期が通常の 3 倍になっています。で、よく見たら、この三つの中では、 sin(x) が一番周期が長いわけですが、sin(2x) 二周期分を 1 周期分とすれば、sin(x) と同じ周期ではないでしょうか。そして、sin(3x) も、3 周期分を 1 周期と見れば、sin(x) と同じと見ることができます。同様に考えると、sin(nx) (n は整数) の周期は、sin(x) の 1/n 倍ですが、やはり n 周期分を 1 周期と見れば、sin(x) と同じ周期だ、ということができます。これを一般の場合の sin に対して適用すると、周期 2L の任意の 1/n 倍の周期を持つ正弦波
は全て、n 周期分を 1 周期と見ることで周期 2L の周期関数ということができます。θn は、n ごとに変えられる初期位相です。最終的にはこれを重ね合わせて "どんな周期関数でも" 近似できるようにしたいのですから、やはり n ごとに移相のバランスは変えられる、とするのが自然でしょう。
ここで、この正弦波を無限に重ね合わせると、目的の 2L が周期である周期関数 f(x) に一致するとします。要するに、上は、周期 2L を基本として、その 1/2 倍、1/3 倍・・・・の周期を持つ正弦波 (しかも初期位相は自由に設定できるから原点は O にとらわれない正弦波) も n 周期分を 1 周期分とみれば全部 2L の周期ですから、2L の周期を持つ関数を全て動員してきたわけですね。そこで初期位相のバランスをうまく変えていけばどんな複雑な周期関数でも近似可能だろう、ということです。これがフーリエ級数展開の最も重要なアイデアといえます。本当にそんなことをして元の関数と一致するかどうかを確かめるのは、テイラー展開の時ほど簡単ではないのでここでは省略しますが、直感というか、「なんとなく」は理解できる話だと思います。実際、フーリエ級数展開の場合は、なぜそうなるかより、よく分からないけどそうなるらしいからじゃあこれをどうやって使うか、の方がずっと重要なので、まずは使い方に慣れることをおすすめします (余裕があれば後日また、フーリエ級数展開による近似は "非常に良い近似" であることの証明くらいは挟んでおこうと思います)。
とりあえず、上の話から、以下の式が立ちます。厳密には証明しませんが、周期 2L の最も簡単な周期関数、つまり正弦波を全て重ね合わせたら任意の 2L の周期関数 f(x) に一致するというのは認めたこととします。
n = 0 からであることに注意しましょう。なにも sin だけが周期 2L じゃありません。 n=0 だと結局これは定数となりますが、定数だって 2L で区切れば立派に周期 2L ですからね。さて、次にこれを加法定理を使って展開します。
初期位相は n ごとの定数ですから、cosθ や sinθ も定数となります。なので簡単のためこれらを a, b という数列で置きなおすことにします。すると、
となります。cos と sin の順番を入れ替えましたが、これは教科書などで見る一般的な記述に合わせるためのものであって、大きな意味はありません。ここで、もう一つ加工して、
とします。このような加工をした訳は、結局上で言う a, b という数列を具体的に求めなければいけないわけですが、そのとき積分を使うのです。積分を使うと、1/n が係数として出てくるのが分かると思います。このとき、n=0 だとゼロ除算という非常にまずいことが起こります。それを見越して、あらかじめ n=0 のときは定数として前に出したのです。それなら a0 じゃないかと思うかもしれません。それでも問題ないですが、今後の記述の問題でこれはその 1/2 倍にあえてしておきます。実は、ここを 1/2 倍しておくと、色々と都合が良くなるのです。というわけで、上の式が最もよく見るかたちのフーリエ級数展開です。この右辺の事を三角級数といったりもします。ここで、cos の係数 an はフーリエ余弦級数、sin の係数 bn はフーリエ正弦級数と呼んだりします。そして、実用上の話になりますが、最初の定数項は "浮き" を意味します。交流の歪み波理論などでは "直流分" とも呼んだりします。
さて、ここからが実用上の問題です。一体どうすればフーリエ級数が求まるのでしょうか?実は大変面白いというかにやっとするような素晴らしいテクニックが存在します。
フーリエ係数の求め方
最初の三角関数の公式は伏線 (といっても堂々と使うといってしまったので全然伏せてないけど) で、ここで大いに活躍するのでしっかり頭に入れておく必要があります。改めて書いておくと、
です。まずは、a0 を求めてみましょう。どうやって求めるかというと、両辺を周期積分します。本当にそんなので求まるの?と半信半疑でしょうが、やってみましょう。
積分は線形演算なので、項単位で区切ってそれぞれに積分を適用することができます。ここで注目してほしいのですが、無限級数の中の積分は積分公式でいう I4、I5 そのものです。なので、無限級数の中身は一個だろうが二個だろうが 999999 個だろうが無限個だろうが全部消滅します。そして、a0 にくっついている積分は、単に ∫dx であり、周期積分だと値は 2L ですから、以上を踏まえると
なるので (上の画像では π となってしまいましたが正しくは L です)、両辺を L で割って
を得ます (これも正しくは π → L です)。これは公式の一つです。このように、見事 a0 が、しかも綺麗な形で求まってしまったのが分かります。a0 を求めたかったら両辺を周期積分すればいいだけなのです。
今度は an を求めます。これも面白いのですが、両辺に cos(mπx/L) をかけ、周期積分すると求まります。cos の倍数が n じゃないのは、n は既にローカルな変数として Σ の内部で使われているからです。いくら変数の指定は自由だからといっても、誤解を生むような重複はさせてはいけませんからね。n とは独立なものとして考えなければなりません。
これなんですが、積分公式から三角関数単体の周期積分、および sin cos の周期積分がありますからそれを消します。
ここまで綺麗に消えてしまうものなんですね。そして、無限級数なんてどうすればいいんだ、と思うかもしれませんが、よく見てください。これも cos cos の周期積分なので、m=n でなければ全て 0 になります。m はいくつだか知りませんが、n は 0 から ∞ まで順に増えていきますよね。ということは、必ず n=m となるような場合が一つだけ存在するということがいえます。ですが、その一つの場合を除き、あとは当然 n≠m ですから、全部 0 です。以上より、結局無限級数は L しか残らないことがわかります。ただし n=m のときなので前に出てくる係数は an ではなくて am であるのにも注意すると
となります。以上から、am が求まりますので、
であることがわかりました。添え字 m が n に戻ったのは、無限級数をうまく消滅させることが出来たので、n と書いても誤解がなくなったからです。
まあ、もうここまできたら想像はつくと思いますが、フーリエ正弦級数 bn は sin(nπx/L) をかけて周期積分すれば求まります。
全く同じですね。以上より
となりました。これで全てのフーリエ係数を求めることに成功しました。全てまとめると、
という結果です。これでなんとなく a0 を 1/2 倍した理由が分かると思いますが、1/2 倍しておくとこのように公式が揃うのです。もしここで 1/2 倍しておかないと a0 の公式だけ 1/L が 2/L になってしまいます。
ここまで見て、もしかしたら「f(x) が求めたくてやってるのに f(x) を積分ってどうやるの?」と思う人がいるかもしれませんが、実用的には周期関数的でない表現、つまり -L<x<L において |x| とか、そうやって形が明示されている場合が非常に多いので、心配有りません。ちゃんと該当範囲にその f(x) を代入してやればいいのです。これは、この後に示す例題でよくわかるとおもいます。
あと、公式の覚えかたですが、まずフーリエ級数の式は覚えましょう。まあ基本アイデアさえ知ってれば全然覚えにくいことではないです。一つの英単語よりも覚えるのはたやすいでしょう。で、係数の求め方も覚えなくていいです。これも "周期積分" の性質を使えばどうやるかは頭の中で暗算出来ますからね。
偶関数と奇関数
これは実用上の知識となるでしょう。偶関数とは、f(-x)=f(x)、奇関数とは f(-x)=-f(x) となるようなものをいいます。そんなこといっても良くわかんないという場合は実例を見るしかありません。偶関数の代表例は x2 や cos(x)、奇関数の代表例は x3 や x、sin(x) などです。図的に言えば、偶関数とは y 軸中心に全く左右対称になっているようなものをいい、奇関数とは x 軸中心に、y 軸よりも右あるいは左の部分どちらかを折り返すと左右対称に見える関数のことをいいます。そう定義すると、もちろん、どちらでもない関数というのもあります。ex や log x などはどちらでもありません。ただしこれらと他の初等関数との和と積は偶関数や奇関数になる可能性がありますので注意が必要です。実際に図で示すと、奇関数は以下のようなものです。
偶関数は、以下のようなものです。
そして、偶関数・奇関数というのは偶がプラス、奇がマイナスみたいなもので、これら同士の積には以下のような性質があります。
1. 偶関数 × 偶関数 = 偶関数
2. 偶関数 × 奇関数 = 奇関数
3. 奇関数 × 奇関数 = 偶関数
証明というか、そうなることの確認は非常に簡単ですね。1 は h(x)=f(x)g(x) について h(-x)=f(-x)g(-x)=f(-x)g(-x)=h(x)、2 は h(-x)=-f(x)g(x)=-h(x)、3 は h(-x)={-f(x)}{-g(x)}=f(x)g(x)=h(x) だからですよね。非常に簡単な事実ではありますが、これはしょっちゅう現れるので意識しておく必要があります。
これらの積分についての性質も、まあ高校でやったと思いますが、偶関数 fe(x)、奇関数 fo(x) について (ちなみに e は偶の意味の even、o は奇の意味の odd の頭文字です)、
えっ、このことを用いれば、一番最初に出てきた三角関数の積分公式の計算が簡単になった?確かにそうですね・・でも編集してて気づいたので許してあげてください。もう直す気力がなくなりました。それで、この事実も図を見ればすぐですよね。奇関数はさっきの使い回しですが
のようになりますし、偶関数は
のようになりますね。sin, cos 、移相がずれただけなのにここまで対照的なのは興味深いですね。
それで実際、どのようにこのことが使われるかは例題を参照するとこれもよく分かりますが、ここで少し書いておくと、求める関数が明らかに偶関数あるいは奇関数の場合、もう片方の成分は一切現れませんから a か b どちらかが全て 0 になります。3 つも積分やらなくて良くなるんですからこれはすごい都合のいい事実です。例えば奇関数なら偶関数成分は出てこないので an は 0 になります。偶関数なら bn は 0 になります。
フーリエ級数に関するまとめ
任意の周期 2L を持つ三角関数は、で表されますが、これらを無限に重ね合わせることで任意の周期 2L の関数 f(x) を近似させる方法を、フーリエ級数展開といいます。これは、
で表現されます。ここで、an をフーリエ余弦係数、bn をフーリエ正弦係数といい、a0 は原点からの "浮き" を表します。それぞれ、周期積分によって求めることができ、それは
という公式で求めることができます。
例題 (ここから下は改訂前のままです)
例 1. 矩形波のフーリエ級数展開
f(x) は、[-π, π] で次のように定義される周期関数である。f(x) をフーリエ級数展開せよ。
解答の例
これは問題を解く上ではあまり関係がないが、問題の関数を実際にグラフにすると、次のようになる。
このようなでこぼこの波のことを、矩形波 (くけいは) という。矩は見慣れない字なので初見では読めなかったが、まあそういう風に読むらしい。紫の線は不連続点をつなぐ線である。これをフーリエ級数展開するには、以下の式を踏まえて、順次積分をすればよい。
まず、a0 からやってみる。公式にあてはめる。
先ほども書いたが a0 は定義域間の平均値を表している。上の場合、非常に簡単で、区間の半分が 1、もう半分が 0 なので、ちょうど平均は 1/2 になる。そのため、計算して上のように出してもいいが、暗算でもこの場合は出せる。
次は、フーリエ余弦級数を求める。
このように、0 になった。実はこれも計算の必要はなくて、定数分を抜いたグラフについて、奇関数ならば偶関数の集合体である cos のフーリエ余弦級数は 0 に、偶関数ならば奇関数の集合体である sin のフーリエ正弦級数が 0 になる。上の場合、平均値を抜いて下に下げてやれば、奇関数的性質を持っていることがわかるので、0 になっている。
最後に、フーリエ正弦係数を求めればよい。
cosnπ は 1 の時 -1、2 のとき 1 、3 のときまた -1 ・・・と -1 が反転しての繰り返しなので上のような表現に書き換えることができる。なので、フーリエ正弦級数だけ、0 にならない。0 にならないといっても、n が整数であれば、1-1 = 0 なので、0 になるが、奇数のときは 0 にならないので、フーリエ正弦級数は一部生存している。このことを踏まえれば、
なので、f(x) のフーリエ級数展開は
となる。実際に手で確認するすべはないが、コンピュータに任せていいなら、これが f(x) を正しく表していることを確認するのは可能である。
このまま n を大きくしていけばどんどんなめらかになって、f(x) に近づいていく。
ここまで来ればもういいだろう。
例 2. 鋸波のフーリエ級数展開
f(x) は、[-π, π] で次のように定義される周期関数である。f(x) をフーリエ級数展開せよ。
解答の例
このような f(x) は、鋸波 (のこぎり) という。定義域で、この関数は奇関数であるから、平均は打ち消し合って 0 になる。よって、a0 = 0。また、奇関数なのでフーリエ余弦係数も 0。なので、例 1 のようにいちいち計算しなくても、
であるので、フーリエ正弦級数さえ求めればよい。部分積分を使わなければならないのは少々面倒だが、次のようにして求める。
なので、
であることがわかった。したがって、f(x) のフーリエ級数展開は、
であることがわかった。これのグラフは、例 1 のように丁寧にやるのが面倒になってきたので簡単に示す。確かに f(x) に一致するのが分かる。
n=1, 3, 11, 29, 111, 1111 までのグラフ。このように鋸波に近づく。もっと大きい値だと、以下のようになる。
例 3. 放物線型周期関数のフーリエ級数展開
f(x) は、[-π, π] で次のように定義される周期関数である。f(x) をフーリエ級数展開せよ。
解答の例
こればかりは平均はすぐには分からないので計算する。計算するといっても f(x) の定義が簡単なので暗算でもできるか。
どうみても偶関数なのでフーリエ正弦級数は求めなくていい。フーリエ余弦級数だけ求める。
x2 と三角関数の積の積分というだけでやる気がなくなりそうだが、これをやっていくとこうなったので、
であることがわかった。したがって、f(x) のフーリエ級数展開は、
となった。これを先と同じように書いていくと、
で、最終的に値を大きくしていけば、次のような形に落ち着く。
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