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05
2010
08
08
微分方程式[1] - 変数分離形 / 1階線形微分方程式
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数学
微分方程式
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Preparation for Mathematical Expressions in English - 英語での数学的表現の準備
演習書として英語のものを購入してしまった手前、出来るだけ数学用語が登場した場合は英語表現も併記することにしますが、そのまえに、数学 (あるいは算数) で使う、微分方程式以前の最も基本的な用語をまとめておきます。- equation … 方程式
- function … 関数
- differential … 微分 (の) → differentiate / 微分する
- integral … 積分 (の) → integrate / 積分する
- derivative … 導関数, 微分係数
- variable … 変数 → dependent variable / 従属変数, independent variable / 独立変数
- order … 次数, 微分階数
- notation … 表記法
- parenthesis … 丸括弧 (pl. parentheses)
- power … 累乗
- y' … y prime (y プライムと読む。y' を y ダッシュと読むのは日本だけ)
- interval … 区間
- arbitrary … 任意の → arbitrary constant / 任意定数
- solution … 解
- negative … 負の → nonnegative / 非負の
- term … 項
- raise … 累乗する
- subsidiary … 従属、付随する → subsidiary condition / 付随条件
- substitute … 代入する
- multiply … かける
- divide … わる
- implicit form … 陰関数表示
- algebraically … 代数的に
- Determine whether ・・・ / ・・・かどうか判断しなさい。
- Show that ・・・ / ・・・であることを示しなさい。
- Prove that ・・・ / ・・・であることを証明しなさい。
- Solve A. / 式 A を解きなさい。
- We obtain A. / 式 A を得る。
- Thus, / したがって、
- Therefore, / ゆえに、
- Since ・・・, / ・・・だから、
Using partial fractions, we can expand (1) to (2).その訳から分かるように、構造としては複文であり、従属節 + 主節という構造になります。分詞といっても現在分詞 (いわゆる現在進行形) 、過去分詞どちらでも OK です。訳としては、When S+V+…, S+V'… と考えれば大体問題ありません。分詞構文のほとんどは When か if と主語を省略したものですので、意味としては "・・・のとき、・・・すると" で考えればよいでしょう。主語が抜けて落ちていますが、これは通常主節の主語と一致します。したがって、上の文章は
- 部分分数を用いると、(1) 式は (2) 式のように展開することができる。
If we use partial fractions, we can expand (1) to (2).というふうな略されてない形へと修正することができます。以下に一応補足として例文を複数載せておきます。
Evaluating the first integral by first completing the square, we obtain (1) or (2).加えて、"where" というのも非常にたくさん出てくるので押さえておく必要があります。これは関係副詞で、訳としては非制限用法で "そこで" あるいは "ここで" と訳するのが妥当です。類似品として、"whereupon" もありますが、これは "ただちに" 程度の意味です。
= If we evaluate the first integral by first completing the square, we obtain (1) or (2).
→ まず平方完成してから 1 番目の項の積分を実行すると、(1)、次に (2) を得る。
Substituting Eqs. (1) and (2) into the equation, we obtain (3) which can be algebraically simplified to (4).
= If we substitute Eqs. (1) and (2) into the equation, we obtain (3) which can be algebraically simplified to (4).
→ 式 (1) と (2) を与えられた方程式に代入すると、(3) を得るが、これは代数的に (4) という簡単な形に直すことができる。
The solution to this separable equation is found by integrating both sides of (1), and doing so, we obtain (2) which can be simplified to (3).
= The solution to this separable equation is found by integrating both sides of (1), and if we do so, we obtain (2) which can be simplified to (3).
→ この変数分離形の微分方程式に対する解は (1) の両辺を積分することで得らるので、両辺を積分すると、(2) を得る。また (2) は、(3) のように簡単な形に変形することができる。
[個人的な補足] 通常参考書における式の書き方は、この blog のように、式をどんなに短くても必ず 1 行改行して表現するので、関係代名詞はいわゆる "非限定用法" で訳した方が、上のようにより自然な日本語になると思います。
Instead it has the form (1), with (2) where (3) so it is homogeneous.
→ 代わりにこれは (1) の形を持っているから、(2) を用いる。ここで、(3) だから、これは同次形である。
Definitions, Notation, Standard Form And Differential Form - 定義、表記法、標準形と微分形
微分方程式 (Differential Equations) とは、未知関数 (Unknown function) の導関数 (Derivative) を含む方程式をいいます。その未知関数が、いくつの独立変数 (Independent Variable) に依存するかで、微分方程式はさらに細分されていきます。未知関数が独立変数を 1 つしか持たないとき、その微分方程式は常微分方程式 (Ordinary Differential Equations, abbreviated as "O.D.E.") といいます。未知関数が 2 変数関数あるいはそれ以上であり、その偏微分を含む場合は偏微分方程式 (Partial Differential Equations, abbreviated as "P.D.E.") といいます。
1 変数関数の微分から多変数関数の微分に手をつけると、1 変数関数のときにはなかった様々な概念が登場し、非常に大変でした。それと同じく、微分方程式においても、偏微分方程式は非常に難しいので、まず 1 変数関数の微分方程式、常微分方程式から、となります。以下、1 文字節約してもここは紙面じゃないので別にどうでもいいといえばいいのですが、常微分方程式のことを単に微分方程式と呼びます。
微分方程式にあらわれる表記法 (Notation) についてですが、導関数は通常 dy/dx あるいは y' のかたちで記述されます。日本では、y' のことは y ダッシュと読みますが、英語では y' のことを y プライム と読みます。ダッシュと読むのは日本だけのようなので、これも和製英語の一種なのでしょうね。また、文字の上にドットがつく場合もあります。これも微分を意味しますが、文字の上にドットがつく微分は、時間による微分であることを意味します。ですから、通常 x ドットならば、dx/dt を意味します。
物理、とくに力学の授業ではドットというのをよく見かけますが、個人的にはドットや ' という記号で書くより、dx/dt, dy/dx とした方が本来の意味が明確で好きですね。今までの記事もほとんど割り算形式にしてあるのはそのせいです。
また、微分方程式における分類上非常に重要なのが、線形 (Linear) であるかどうかです。線形であるとは、解 y を定数倍しても微分方程式の形が変化しないようなものをいいます。非常に簡単に言えば、y あるいは y そのものの微分に関して、その累乗を持たないような方程式です。線形であれば何が有利かというと、解がベクトル空間を作ることにあります。要するに線形代数の理論にのっとって、高い階数においても明快に微分方程式の解法を議論できるのです。
ただし、最高階数が 1 階までの場合、つまり 1 階線形微分方程式 (First-Order Linear Differential Equations) は、そのような難しそうなことを意識する必要は全くない上、解の公式まで存在するので (この記事の終盤参照)、線形代数関係の理論は後の回に述べるとします。1 回線形微分方程式は、以下のような一般形で表されます。
また、1 階の微分方程式の形式ですが、標準形 (Standard Form) あるいは、微分形 (Differential Form) というかたちを取ることができます。標準形とは、
で表される形をいいます。要するに、dy/dx の項だけ左辺に残して、あとは全部右に追いやってしまう形です。
一方、微分形とは、
で表される形をいいます。これは、dy/dx を含む式に、形式的に dx をかけることで上のような形に持っていくことができます。厳密にいえば標準形と微分形は全く等価とはいえませんが、解く上では違いはないため、標準形 ←→ 微分形の変換はこの手順で行えるものと思えばよいでしょう。
ここで注意しなければならないのは、標準形から微分形にするにはその組み合わせは無限にあるということです。たとえば、標準形においては f(x,y) = x/y ならば、x と 1/y の組に分けて分離する、1 と x/y に分けて分離、 x^2 と 1/xy に分離・・・など、いくらでも組み合わせが存在することになります。
これ以下では、実際に 1 階微分方程式の分類とその解法を紹介したいと思います。
Separable Equations - 変数分離形の解法
変数分離形 (Separable Equations) とは、微分方程式を標準形に直したとき、となるような方程式をいいます。分数になっていたり、マイナスがついているなどは微分形に直すと明快になるという便宜上つけたもので、要するに標準形では x の関数と y の関数の積になっていれば変数分離形です。このような形になった方程式は分離可能である (Separable) といいます。
変数分離形の解法は明快であり、上記を微分形にすると、
となるので、両辺を積分します。この場合どこからどこまでというのは存在しないので、不定積分記号をかぶせて積分します。
0 というのは定数関数を微分したものという考え方もできるため、右辺には積分定数 C が出現します。ただし、解法上はここを 0 にしたままでも問題ありません。なぜならば、左辺の積分でまた積分定数が出るからです。
積分定数の扱いについては、一つの積分で定数が出るたび C1+C2 としたりするのは面倒なので、ここでは一貫して C としか書きません。移行しても -C を C とおきなおせば C だし、何を足しても何倍かけてもおなじことなので、改めて定数をおきなおさないで C のまま書くことにします。あとは、以上を計算すれば変数分離形は終了です。上の形は別に、Adx=Bdy の形式にしても問題ありません。
First-Order Homogeneous Equations - 1 階の同次形
同次方程式 (Homogeneous Equations) とは、"1 階に限って" は、標準形において、となるような方程式をいいます。x, y それぞれに同じ数をかけると、元の形と一緒になるということですね。一般に、関数が n 次の同次形 (Homogeneous of Degree n) であるとは、
であることをいいます。同次形であるかどうかの判断方法はこれを利用すれば容易です。標準形において分母を f(x,y)、分子を g(x,y) をおき、上下が同じ次数の同次形となれば上の式でいう k の n 乗が相殺されるため、同次形であるということができます。
1 階の同次方程式の解法の特徴は、変数分離形に帰着できることにあります。任意の k に対して
が成り立つのがそもそも同次形の定義なのですから、その任意の組み合わせのうち、k=1/x を選ぶと、
ということができます。つまり、k が任意であることを逆手にとって y/x の 1 変数関数に直してやりました。したがってここで
というような置換を行うことで、同次形は変数分離形になります。証明は以下のようです。
y と u はそれぞれ x の関数です。y は当たり前ですが・・・、u は、x の関数 y を x で割ったからですね。結局これも x の関数というわけです。したがって、y=xu とおくことで、この両辺を x で微分すれば、積の微分公式より
なので、これを同次方程式の左辺に代入すると、
は u のみの式 / x のみの式 という形をしているので明らかに変数分離形です。したがって 1 階の同次形は、上のような置換を行うことで変数分離形の解法で解くことができます。ただし、最後に u を y/x に直すのを忘れずに。
Exact First-Order Differential Equations - 完全微分方程式の解法
微分形、すなわちにおいて、次の条件を満たす微分方程式を完全微分方程式 (Exact Equations) といいます。
また、これを満たす場合、方程式は完全である (Exact) といいます。
完全である方程式は何が便利かというと、
と表記することができます (理由は後述)。これは、全微分 (Total Differential) のかたちをしているのがわかります。全微分 dΦ=0 ということですね。したがって一般解は dΦ=0 の両辺を積分することにより
という風に求まります。では Φ(x,y) はどのようにして求めるか、ということですが、完全である場合
です。したがって、N, M をそれぞれ偏微分に対して偏積分とでもいうのでしょうか、そうすることで、
となるので (すでに積分定数ならぬ積分関数は f, g と出してあります)、二つの式の共通部分を Φ(x,y) と決定すれば一般解を得られます。上を見るとわかるように、偏微分すると定数だけじゃなくその偏微分した独立変数以外のみの関数も消滅するので、それを出してやらないといけないのが注意点ですね。
さて、完全なら解けることが分かりましたが、そもそもなぜ完全であるための条件が
であるのかが不明瞭です。この条件、一見すると一体どこから出てきたのか不思議ではありますが、ベクトル解析の知識を用いるとすっきりします。よくみると左辺は
であることがわかります。いま、完全であるならば、
だったので、
であるということができます。すなわち M と N からなるベクトル場 f は保存力場であり、解 Φ=C における Φ はスカラーポテンシャルです。それが完全の定義なのですから、当然こうなると、f が保存力場であるための条件は、
ですから、これが Mdx+Ndy=0 が完全微分方程式であるための条件となります。具体的に計算すると、
なので、これで
を満たせば完全微分方程式となることが示されました。
Integrating Factors - 積分因子とは
一般に、微分方程式は完全ではありません。上の条件を満たさないものも多数あります。こういう場合、上の解法でさっさと、というわけにはいきません。しかし、ある関数を両辺にかけると、完全になる場合があります。このような関数 I(x,y) のことを、積分因子 (Integrating Factors) といいます。積分因子を求めることは実は全く容易ではないのですが、一部の限られた場合に関しては自力で発見することができます。具体的に見つけるのは困難でも、積分因子であるための条件を導き出すのは比較的簡単です。いま、I(x,y) をかけることで完全になったとすると、
は完全微分方程式なので、
が成立します。上記は、積の微分公式が適用できます。そうすれば、IM, IN は分離できて、I が満たすべき条件を出すことができます。
なので、これをどっちかに移行すれば、
の解が積分因子であることが分かりました。しかし、これでお手上げです。微分方程式は微分方程式でも偏微分方程式ですから、どうしようもありません。でも、先に述べたように、ここで I(x,y) などに縛りを加えてやると、解が求められます。
たとえば、積分因子が x だけの関数であったと仮定します。すると、I(x, y) → I(x) ですから、1 変数関数になり、偏微分は常微分となります。さらに、y は独立変数でなくなったので項が 1 つ消滅し、
を求めればよくなります。I について解くので、そう考えると上の式は、偏微分方程式から常微分方程式になった点に注目してください。ここで、標準形になおすと、
が得られますが、しかしここでやはり手詰まりになります。右のごちゃごちゃした項が x のみの関数でなければ変数分離形ではないからです。というわけで、非常に都合のいい条件設定ですが、これが x のみの関数となったとします。すごい狭い条件ですけど、もしそうなったら変数分離形として積分因数が求まります。このとき、変数分離形を解けば、
という積分因数が得られます。都合がよすぎな感じですが、この後紹介する 1 階線形微分方程式でまさにこのパターンが当てはまるので、この理屈は一応押さえておく必要があります。積分因数を発見するのは不可能に近いが、なんかすごい都合の良い条件を設定するとその条件を満たす微分方程式に限り積分因子を自力で発見できる、ということですね。このほか、y のみの場合は同じやり方ですぐ作り出せます。その他良くあるパターンとしては、(y/x) の関数、(xy) の関数といったパターンもありますが、これらは正直覚えるものじゃないと思うので (導出過程も複雑過ぎる上に結果も覚えやすいものではない)、いらないと思います。
Linear First-Order Differential Equations - 1 階線形微分方程式
であるような方程式を、1 階線形微分方程式 (Linear First-Order Differential Equations) といいます。Q(x)=0 であればこれは変数分離形である点にも注意しましょう。実は 1 階の場合は、線形微分方程式には解の公式が存在します。
しかしこのような奇妙な形を鵜呑みにすることも難しいので、どのようにしてこれが出てきたかを探ってみることにします。
まず、方程式を微分形に直します。
これは、一般には完全ではありません。条件を当てはめてみればすぐ分かります。そこで、積分因子 I(x,y) により完全になったとすると、
ここで M=P(x)y-Q(x), N=1 ですね。いま、I が x のみの関数であるためには、
ということでしたが、実際に計算してみると、
と、見事に x のみの関数となりました。したがって、積分因子は x のみの関数であり、
であることが分かります。ここで補足ですが、e の右肩に乗っかっているのは不定積分であるにもかかわらず、不正積分後に積分定数を出す必要はありません。なぜならば、積分定数を出すと、+C の部分だけ切り離して、結局、定数かける e の累乗というふうになりますが、積分定数によって出現したこの定数部分はあくまで定数ですからあってもなくても結果的には完全性には影響しません。したがって、解の公式を適用するときは、この P(x) の積分に対しては通常積分定数を出しません。出しても出さなくても同じなら面倒だから出さなくていいやってことですね。
これで方程式は完全となりました。微分形でなく元の形に積分因子を作用させてみると、
となります。なぜ元の形で考えたかというと、これも非常にうまくできてると思うのですが、左辺は積の微分になっています。
見方を変えれば、積分因子を見つけてかけることは、積の微分公式を適用できるようにすることだともいえるのですが、ここで両辺を積分すれば、
となります。私も最近まで誤解していたのですが、Wikipedia によると、このようにあらかじめ任意定数を出してもよい (後で積分の任意定数を別に出しても統合すれば同じこと) ので、したがって、両辺を割れば
が出てきます。線形微分方程式は、この公式を適用すれば一発で終わるのですが、これはあまり覚えるようなものでもないと思います。しかし、局所的に、この手の問題をたくさん解くことになるなら、そのときそのときで覚えておくのは損ではないでしょう。
Bernoulli Equations - ベルヌーイの方程式
微分方程式のなかには、線形でないにもかかわらず置き換えによって線形に直せるものも存在します。このような形をしているものを、ベルヌーイの方程式 (Bernoulli Equations) といいます。これは、明らかに非線形 (Nonlinear) ですが、
という置き換えによって線形になります。
念のため、この置き換えで線形になることを示しておくと、まず、上の両辺を微分することで
となりますが、最初の方程式に (1-n)y^-n をかけると、
となるので、一番左の項がそのまま dz/dx におきかわり、
は線形です。1 階の微分方程式の解法は、主要なものは以上のようです。種類は多そうに見えますが、同次形やベルヌーイの方程式といったものはただの置換で済むだけの問題なので、全く別のものとして扱う必要もなく、実際相手にしなければならないものはそんなに多くないと思います。
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