国土交通省は、熊本地域の河川水と地下水の循環を総合的に解析できる初のシステムを開発した。将来の河川水と地下水双方の収支予測が可能になり、熊本地域の貴重な水資源の循環維持に貢献できるとしている。
熊本地域には阿蘇カルデラの草原や森林に降った雨が白川水系の河川水として流入。外輪山斜面からは大量の地下水が流下している。白川中流域の水田地帯では河川からのかんがい用水と降雨が地下に浸透。地下水量をさらに増大させ、熊本地域の都市用水のほぼすべてを賄っている。
従来、河川水は管理者の国土交通省が、地下水は総合保全管理計画を持つ県と熊本市が、それぞれデータを蓄積してきた。
同省熊本河川国道事務所は熊本大の才田進特任教授(工学博士)と下津昌司元教授(同)の助言を受けながら、これらのデータに取水堰からのかんがい用水取水量や降水量も取り込み、地質や地層、土地利用状況も網羅した。熊本地域に影響する緑川水系や菊池川水系のデータも入力。阿蘇から有明海に至る総合的な水の収支を解析できるシステムに仕上げた。
システムに、降水量など最新のデータや変化を入力すれば、将来への影響予測が可能。例えば、熊本市の健軍水源地の地下水位が数メートル低下した場合、白川中流域の水田地帯に、どの取水堰から何トンの河川水を流し込めば水位回復が見込めるかなども予測できる可能性が生まれ、河川水と地下水の収支調整がしやすくなる。
阿蘇の草原の多くが失われた場合や中流域で耕作放棄地が増加した時の影響も把握できる可能性がある。
熊本河川国道事務所の中元道男・調査第一課長は「熊本地域では河川に流す適正な流量を検討するためにも、地下水のかん養に必要な量を把握する必要がある。新たなシステムが河川管理はもちろん、地下水を含む広域的な水循環確保に役立てば幸いだ」と話している。(山口和也)
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