南アフリカで10年に開かれたサッカーワールドカップで、ソニーはガーナ北部の無電化村に太陽光発電システムと蓄電池、200インチの大型スクリーンを持ち込み、試合を放映した。「新エネルギーがもたらすビジネスの可能性を知るきっかけになった」(担当者)といい、引き続き実証実験に取り組んでいる。
パナソニックも、太陽光発電システムや蓄電池などを一体化した輸送用コンテナ「ライフイノベーションコンテナ」を開発。アフリカなど途上国の無電化地域での電力供給を目指し、昨秋にはタンザニアの無電化村にコンテナ一式を寄贈した。
成功例として知られるのが住友化学だ。殺虫剤を練り込んだ樹脂を使ったマラリア予防用の蚊帳「オリセットネット」をアフリカを中心に50カ国以上に供給。タンザニアなどで生産し、約7000人の雇用を生んでいる。
欧米・韓台勢を追走
BOPビジネスはかつて、仏ダノンやスイスのネスレなど欧米の食品・日用品メーカーが中心だったが、日本企業もこぞって途上国に乗り込んでいる。
だが「未開の大消費地」では欧米企業とともに韓国勢や台湾勢が先行する。とりわけ、アフリカ大陸のほぼ全土で製品を展開する韓国のサムスン電子は、15年までにアフリカ事業の売上高を10年比で8倍以上の100億ドル規模にする計画を持つ。
「カネを稼ぎ、スマートフォン(高機能携帯電話)を手に入れる」。職につけない若者が多いギニアの首都コナクリで、モハメッド・カマラさん(24)は携帯電話店のサムスン製品を指さした。経済成長とともにBOP層はやがて中間層に移行する。需要獲得に向け、日本企業には調査力の強化や意思決定のスピード向上が求められている。(田端素央、セネガル・サンルイ 高木克聡)