PEG-IFN/リバビリン併用療法によるウイルス学的持続著効(SVR)の予測にはIL28B遺伝子多型よりも治療4週後のウイルス低下量が有用
2011年12月12日更新
大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学
ペグインターフェロン(PEG-IFN)/リバビリン併用療法の抗ウイルス効果には宿主およびウイルスにおけるさまざまな因子が影響を及ぼすが,中でも患者のIL28B遺伝子多型は最近特に注目される因子である。しかし,小瀬氏らは,PEG-IFNα-2b/リバビリン併用療法を施行した国内のジェノタイプ1型・高ウイルス量C型肝炎患者に対する検討から,ウイルス学的持続著効(SVR)の予測因子として,IL28B遺伝子多型よりも,治療4週後のウイルス低下量が有用であったことを報告した。
治療4週後のウイルス低下別に患者の治療反応を解析
対象は,2004年12月〜2009年12月の期間に大阪大学医学部附属病院およびOsaka Liver Forum参加施設においてPEG-IFNα-2b/リバビリン併用療法を施行したジェノタイプ1型・高ウイルス量(5logIU/mL以上)のC型肝炎患者645例(男性292例,女性352例)である。平均56.9±10.2歳,治療前ウイルス量中央値6.7logIU/mL,422例がIFN初回治療例であり,185例はIFNの治療歴があった。
これらの患者を治療4週後のウイルス低下量に基づいてサブグループに分け,EVR(12週までにウイルス陰性),LVR(12週までウイルス陽性かつ36週後ウイルス陰性),NR(36週後までウイルス陽性)と定義し,それぞれの頻度を解析した。また,SVRの予測因子として,治療4週後のウイルス低下量,IL28B遺伝子多型,その他の背景因子のいずれが有用であるかを検討した。
治療4週後のウイルス低下が大きい患者群ほどEVR/LVRが得られやすく,SVR率も良好
治療4週後におけるウイルス低下量別にEVR/LVR/NR率を解析した結果,ウイルス低下1log未満群ではそれぞれ0/8/92%,1〜2log群では2/38/60%,2〜3log群では23/58/17%,3〜4log群は50/41/9%,4log以上群は79/17/4%,陰性化した群では100/0/0%と,治療4週後におけるウイルス低下が大きい患者群ほどEVR・LVRとなる頻度が高いことが示された。次に,ウイルス陰性化時期に応じた治療期間が完了した患者を対象として解析した結果,EVRが得られ48週間治療した場合,4週後のウイルス低下が大きい患者群ほど高いSVR率を示し,ウイルス低下2〜3log群がSVR率80%,3〜4log群が84%,4log以上群が92%,陰性化した群では100%という結果であった。また,LVRが得られ72週間治療した場合でも,治療4週後のウイルス低下が1〜2logの群でSVR率が40%,2〜3log群が46%,3〜4log群が52%,4log以上陰性化した群では67%と,同様の傾向を示した(図1)。全体を見ても,4週後のウイルス低下が大きい患者群ほどSVRが良好となることが示唆された(図2)。
単変量ロジスティック回帰分析ではSVRに相関する有意な因子として,肝線維化(P=0.013),血小板数(P=0.001),γGTP値(P=0.034),IL28B遺伝子多型(P<0.001),治療4週後のウイルス低下(1logごと)(P<0.001)が認められたが,多変量ロジスティック回帰分析では,治療4週後のウイルス低下量のみが有意な予測因子であることが示された(オッズ比2.861:P<0.001)。
以上の結果から,小瀬氏らは「PEG-IFNα-2b/リバビリン併用療法による4週後のウイルス低下量は,SVRに対する最も良好なマーカーであることが示唆された」と結論した。
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