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民主:東電改革へ仙谷氏始動 市場自由化に意欲

仙谷由人・民主党政調会長代行=岩下幸一郎撮影
仙谷由人・民主党政調会長代行=岩下幸一郎撮影

 民主党は24日、「東電・電力改革プロジェクトチーム(PT)」の初会合を開き、仙谷由人政調会長代行がPT会長に就任した。菅直人政権で官房長官を務め、「影の首相」とも言われた仙谷氏にとって久々の表舞台。ここに来て登場した背景には、東電への公的資本注入を巡り、政府と東電の攻防が激化していることがある。【三沢耕平、宮島寛】

 「(東電改革は)日本の生活と経済に計り知れない影響を与える」。衆参議員約40人が出席した初会合のあいさつで仙谷氏は改革の重要性を強調した。

 政府は、原発事故で経営が悪化した東電に1兆円規模の公的資本を注入して実質国有化する方針。だが、公的資本の注入を巡っては、枝野幸男経済産業相が株主総会で組織再編など重要案件を決められる3分の2超の議決権取得を目指しているのに対し、東電は強く抵抗。「東電の経営に深く関与すれば、原発の廃炉費用などで国の負担が増えかねない」と懸念する財務省にも「議決権は重要案件に拒否権を行使できる3分の1超で十分」との意見があり、綱引きが続いている。

 仙谷氏の狙いは、東電への公的資本注入をテコにして、電力大手が独占してきた電力市場の自由化を促進。電気料金の抑制などにつながる電力システム全体の改革に発展させることだ。仙谷氏周辺は「自民党政権で温存されてきた独占体制を打破し、政権交代の果実を見せたい」と解説する。だが、議決権を十分に取れなければ、東電改革も「絵に描いた餅」に終わりかねない。

 仙谷氏は原発事故直後から東電改革に意欲を示してきた。東電のリストラ策を議論した政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」には、気脈の通じた財界人を委員に招く役割を担った。

 東電などが3月に策定する総合特別事業計画は公的資本注入も明記する方針。仙谷氏はPTを舞台に東電改革の議論を盛り上げ、議決権3分の2超取得に向けた動きを加速させたい意向とみられる。

 一方、「公的資本を注入しても、電気料金の値上げや火力発電よりコストの安い原発の再稼働がなければ、東電の経営はいずれ行き詰まる」との見方は根強い。野田佳彦内閣の支持率が低迷する中、民主党では「電気料金の値上げは避けられそうにないが、東電を徹底的に改革せずに値上げを認めては国民の理解は得られない」(中堅議員)との声が強まっており、仙谷氏はこうした空気も意識しているものと見られる。

 これに対し、野田首相は昨年12月に原発事故の「収束」を宣言した後は消費増税にシフト。年明け以降、財界人との会合を重ね、消費増税について理解を求めてきた。首相と会った財界人の一人は「首相の頭には消費税しかない。東電については関心がない様子だった」と振り返る。

 仙谷氏は1月の民主党役員会に提出したペーパーで「原発事故との『戦い』は現下の最重要課題だ」と主張。原発事故で露呈した東電の閉鎖的体質を改革するための旗振り役を買って出る姿勢を鮮明にした。だが、最終的には首相が積極的に動かなければ、東電改革の進展も望めない。総合特別事業計画の策定時期が迫る中、仙谷氏と首相の動向が焦点となりそうだ。

毎日新聞 2012年2月25日 2時31分(最終更新 2月25日 3時06分)

 

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