国内の山林が外資に買われている」という「うわさ」に関係者が敏感になっている背景には「土地争奪(land grab)」という世界的な現象がある。
水や食料を確保するために海外の土地をおさえる動きで、2007〜08年の穀物高騰と前後して注目されるようになった。世界の人口が増え、都市化や生活水準の向上が続くなか、「将来的に水不足や食糧危機が起きるのではないか」という警戒感が後押ししている。
買い手として中国や韓国、サウジアラビアなどの名前が挙がる。土地を買ったり、長期リース契約したりしているのは各国の民間資本だが、国家の支援を背景にした例も多い。農業投資として受け入れ国に歓迎される場合もある一方、政治的な摩擦に発展することもある。
北海道の森林買収の詳しい事情ははっきりしない。単なるリゾート開発だとすれば珍しい話でもないだろう。
ただ、国内各地でささやかれる「外資による買収」という「うわさ」の中に、世界的な土地争奪の文脈に沿うものがまったくないとも言い切れない。
日本政府はいま、国際ルールで土地争奪に歯止めをかけられないか模索している。11月に日本であるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で国際的な合意を取りつけたい。外交官の平松賢司は8月末、そんな思いを胸に米ワシントンに飛んだ。
(梶原みずほ、文中敬称略)