盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏、56歳。韓国政治史上、初の戦後生まれの大統領。プサン(釜山)市近くで1946年、貧しい農家の子どもとして生まれる。兄と姉がそれぞれ2人いて、5人兄弟の末っ子。家が貧しかったため、奨学金が出る釜山商業高校に進学。子どものころから正義感が強く、小学6年生のときには、学校の書道大会で、二等に選ばれながら、二等の賞を突き返すというエピソードが残っている。「書き直しをしてはいけない」という決まりがあったのに、それに違反して書き直した児童が一等になったことに抗議してのことだった。
				
				釜山商業高校を卒業後、会社に就職するが、弁護士を目指して20歳のときから猛勉強。現在の妻と結婚して子どもが生まれた後も働きながら努力を続けて、合格したときには29歳になっていた。
				
				軍事政権下の1981年、無実の罪でつかまった学生が、取り調べで拷問を受けた事件の弁護を担当。このことをきっかけに反政府運動に取り組み、政治家になることを決意する。
				
				現在までの選挙では、6回出馬して4回も落選。「選挙に弱い」という評判もあるが、過去の選挙では、わざと自らの地盤でない地域から出馬して落選したこともある。韓国に根強く残る地域対立を「自らの出馬で解消したい」という理由からだった。
				
				だが、こうした理想を求めてやまない姿勢に、若者達は熱い支持を寄せた。大統領選挙では、若い世代が自発的にファンクラブを結成。この「ノサモ」と呼ばれるファンクラブが、インターネットで連絡をとりあって選挙運動を展開、彼の当選を支えた。
				
				ノ・ムヒョン大統領は、かつてキム・デジュン(金大中)前大統領の下で、キム前大統領を支えてきた。前大統領はこれまで、韓国と対立する北朝鮮に対して、融和を基本とする「太陽政策」をとってきた。太陽政策は、旅人のコートを脱がせるには北風より太陽のほうが良いという故事から命名された政策だが、核開発を進めつつある北朝鮮に対して、もっと厳しい態度で臨むべきだという声も一部で高まりを見せている。こうした中で今後、ノ・ムヒョン大統領が、対北政策などでどんな舵取りをみせるのか、世界の目が集まり始めている。