クレアチニンクリアランス, CCr(Creatinine Clearance)
臨床的意義
クリアランスは血漿中の特定成分を1分間に腎から尿中に排泄されるのに必要な血漿量で示される。(1)糸球体を自由に濾過し、(2)尿細管から再吸収も排泄もされないような物質を用いたクリアランスは老廃物の排泄能を示す糸球体濾過値(GFR)を間接的に求めることになる。GFRの測定として他に、検査のために負荷が必要なイヌリンやチオ硫酸ナトリウムなどのクリアランスが用いられるが、クレアチニン自体が内因性のものであるため、日常の検査で容易に測定され、腎機能の一般的な指標として広く用いられる。また、このクレアチニンの排泄量は、筋肉の発育(年齢、体重)と運動量に関係するといわれている。
検体採取方法
短時間法(1回法、2回法)
(1) 排尿後微温水500mlを飲む。
(2) 飲水後60分に放尿させ、完全に排尿し終わったときの時刻を正確に(1分以内の誤差)で記録する(試験開始)。
(3) 開始30分後採血3ml、溶血を避けて血清分離(クレアチニン測定用)
(4) 開始1時間後完全排尿、尿量及び終了時間を正確に記録(1回法)
(5) 正確を期する場合は、開始1時間半後第2採血、2時間後第2採尿を行い、重複試験を行って、2回の平均値をとる(2回法)
24時間法
(1) 朝6時完全排尿させて捨て、以後の尿を翌朝6時まで蓄尿する。
(2) 混和後、蓄尿量測定、その一部(5ml)を提出する。
(3) 昼食前採血3ml、溶血を避け血清分離。
※短時間法は、基礎的な糸球体機能を知ることができ、他者との比較・経時的な比較に優れる。24時間法は完全蓄尿しやすく、被検者の拘束が少なく、日常生活における実際の糸球体機能を知りうる。
測定機器:日本電子BM2250(血清)(平成18年7月18日より)
日本電子BM1650(尿)
日立7350自動分析装置(血清)(平成18年7月14日まで)
日立7070自動分析装置(尿)
測定試薬: ミズホメディー(酵素法)(平成18年7月18日より)
CRE−Lカイノス社(酵素法)(平成18年7月14日まで)
測定方法
クレアチニン定量
(1)Jaffe反応:クレアチニンは、アルカリ性溶液中でピクリン酸と反応して橙赤色のcreatinine picrate (クレアチニンとピクリン酸の互変体)となる性質を利用している。ただし、クレアチニン同様にピルビン酸、ブドウ糖、蛋白、ビリルビン、アスコルビン酸なども反応するため、真のクレアチニンよりも高値を示す。
(2)酵素法(クレアチナーゼ‐ザルオキシダーゼ‐POD法):クレアチニンはクレアチナーゼ(CRN)の作用でクレアチンとなり、さらにクレアチナーゼによってザルコシンを生じ、ついでザルコシンオキシダ‐ゼによって過酸化水素が生成される。次にペルオキシダーゼの共存で各種色原体より生成するキノン色素を定量する。第2試薬にはクレアチニン由来の過酸化水素の分解を防ぐためカタラーゼの阻害剤であるアジ化ナトリウムが含まれている。以下に、色原体に、3‐ヒドロキシ‐2,4,6‐トリヨード安息香酸(HTIB)と4‐アミノアンチピリンを用いる方法(カイノス社)について記す。
A. 前処理反応 CR
クレアチン+H2O ―――――――― ザルコシン+尿素……………(1)
SOX
ザルコシン+O2+H2O ―――――― グリシン+HCHO+H2O2………(2)
カタラーゼ
2H2O ―――――――― O2+2H2O
B. 本反応 CRN
クレアチニン+ H2O ―――――――― クレアチン
ついで上記A(1)と(2)反応
POD
H2O2+HTIB+4‐AAP ―――――――― キノン色素(λmax 515nm)
計算
体表面積A(u)を身長h(p)と体重w(s)から体表面積算出ノモグラムを用いて求める。
あるいはDu Boisの計算式
A=w0.425×h0.725×0.007184 (0.007358:岡大H7150)
短時間法
1分間尿量(ml/min)=第1回採尿量/(1回採尿時間−完全排尿時間)
(1回)
1分間尿量(ml/min)=第2回採尿量/(第2回採尿時間−第1回採尿時間)
(2回)
Ccr(ml/min) = UV/P × 1.48/A
V=1分間尿量(ml/min),P=血清クレアチン濃度(mg/dl),U=尿クレアチニン濃度(mg/dl)
1.48=日本人の平均体表面積(m2)
2回法は各々のCcrを計算し、その平均値を求める。
24時間法
24時間Ccr(l/day)=U×24時間尿量(l)/P × 1.48/A
基準範囲
男性:88.5〜155.4 l/day,
女性:82.3〜111.6 l/day
参考基準範囲
| 年齢 | 男性(ml/min) | 女性(ml/min) |
| 40歳以下 | 116.5±5.1 | 115.0±3.9 |
| 41〜51歳 | 109.7±5.1 | 92.0±4.1 |
| 51〜60歳 | 97.6±5.5 | 83.5±4.6 |
| 61〜70歳 | 96.1±6.0 | 78.1±3.2 |
| 71歳以上 | 85.0±6.5 |
※これはJaffe法による値だが、非クレアチニン性Jaffe反応陽性物質(non-creatinine chromogen)によって特異的な酵素法による値より0.1〜0.2mg/dl程高値となる。尿クレアチニンは絶対値が大きく、相対的には影響を受けないが、血清クレアチニンは絶対値が小さく、相対的に大きな影響を受けるので、分母の血清クレアチニンだけが小さくなり、酵素法で求めたCcrの方がこの基準範囲よりやや高値になる傾向がある。
生理的変動
・ 性や年齢により若干差を認め、加齢とともに低下傾向を示すが、正常範囲であると考えられる。
・ 妊娠により上昇傾向
・ 発熱、激しい運動後、検査前排尿不完全により上昇する。
異常値を示す疾患
減少する場合
(1)腎血漿流量減少:うっ血性心不全、心筋梗塞、ショック、腎硬化症、本態性高血圧症など
(2)糸球体の障害:糸球体腎炎、腎硬化症、膠原病など
(3)Bouman嚢内圧上昇、尿路閉塞
腎障害の程度
| 軽度障害 | 51〜70 ml/min |
| 中等度障害 | 31〜50 ml/min |
| 高等障害 | 30 ml/min以下 |
増加する場合
ネフローゼ症候群、糖尿病など
採取容器:茶)生化学一般用分離剤入り試験管
関連項目
尿素窒素(UN)
Na
K
Cl
IP
Ca