「ファミ通のクロスレビューを読む限りではキャラが奇抜なだけの
子供向け知育系ゲームかなー。ちょっとこれはパス」
と軽く流した本作だが、3DS一万円値下げに合わせて
更新されたトップ絵のあまりのドス黒さに
俺の中の「何か」のメーターが吹っ切れたので即購入決定。
ええ。踊らされますとも。それが破滅への輪舞曲であろうとも。
本作はメインターゲットにやっと読み書きを覚えたくらいの子供、
特にファンシーでキラキラしたものが大好きな女児に向けて
制作された(はずの)3DS初のお絵かきゲーム。
下画面に表示されるガイドラインに従って「魔法のペン」で絵を描き、
それを魔法の力で上画面=現実に現す、という内容で、
自分が書いた絵が立体視で見れて楽しい、嬉しい、という、
ゲームの内容だけを見れば非常にシンプルなもの。
この時点では決して大きなお友達フィルターに引っかかるものなど
あるはずもなく、普通に女の子向けのカジュアルゲームという印象。
ゲームの流れは、主人公の女の子「さぁたん」が
いろんな人のお願いや依頼を訊きつつ魔法のペンを使って
様々なものを書いて問題解決……というものなのだが、
このさぁたんのキャラクター造形が尋常ではなく、
こんなものを女児にプレイさせてその子の将来が
不健全な方へ捻じ曲がってしまわないか心配になるくらい
あまりにも何かがおかしい。
赤い花がほしい!という男の子の頼みに対して
「うん! わかった! じゃあ白い花を書くね!」
とナチュラルに返す毒々しさにはグぅの音も出ないが、
そんなのはまだ序の口で
●木を書いて森を作って少年(ショタ)を迷わせ、
少年がそれに対して抗議すると
「これはユメにまでみたミキタロウのなきごと!」
とのたまう主人公。
●「おーい、とっとこミキタロウ!」
「とっとこ走らないのか?」
「わたしはさぁたん! コイツはトットコ!」
と非常に版権的に問題のありそうな呼び名を少年につける。
●自宅にテーブルを作るために
森いっこ単位で森林伐採。
とナンセンスな笑いの連続に胃が痛くなりそう。
しんぼうたまらないそうです
「魔法少女といえば」ということで、お約束の
人語を話す黒猫「ナーゴ」も登場するが、
さぁたんの強烈なマイペースっぷりに振り回される一方で
その都度、律儀に突っ込み役を勤めてくれる。
他にも気が弱い美少年、活発な男の子、
クールでツンデレ気味な子などなど、原っぱがにぎやかになるにつれて
少女漫画のような個性豊かなキャラクターがどんどん増えていくのは
それだけでなかなか楽しく、魔法のペンを持つ手にも力が入ろうというもの。
肝心のお絵描きパートは、(いちおう)女児向けということで
簡単にシェイプされており、まずはキャンパスに表示された
星と星をつないで線を書き、それができたら色を塗るだけ。
色塗りも複雑にならないように、色は固定で該当箇所を
グリグリと塗ったらまた次の色で……というふうに
お絵描きがフェイズごとに細かく分かれており、
作業が凡雑にならないよう工夫されている。
その分、やや単調というかミニゲーム的になってしまうのは
いたしかたないところなのかもしれないが、
モチベーション自体は上記の味付け濃いめのキャラと
卓越した言語芸が保ってくれるので、バランスは悪くない。
グラフィックもこの手のゲームの割には結構しっかりしている。
とにかくキャラの言動の奇抜さばかりに目がいってしまいがちだが、
何もない原っぱに家が建ち、木や花が咲き、人が増え、
畑で野菜を作り、それを使ってサンドイッチを作って、
通貨という概念を生み出して店を出し……というように
「ひとつの街ができていく過程」を丁寧に描いたストーリーも
実はなかなか秀逸で読ませる。これは魔法のペンで世界を作るという
コンセプトと合致しているし、子供だけでなく大人も楽しんで見れる。
「子供向けのカジュアルゲーム」という見た目で
ちょっと損しているが、簡単にプレイできて誰でも楽しめる本作には
「ライトなゲーム」という以上の魅力が詰まっている。
欲を言えば、次にどこへ行けばイベントが発生するのか
わからないのでムダにウロウロさせられがちだとか、
色塗りの判定がかなり甘くて、明らかに塗ってる途中なのに
成功判定が出て次へ進まされる……とか、
やや作りが甘いと感じる部分もなかったわけではない。
せっかくの立体視対応だが他のゲームと比較すると
あんまり立体感はなくてスイッチ切っても
見た目に変化が少ないというのもちょっと残念。
これは本来のプレイ層(だったはず)である子供に配慮したからかね。
ファミ通クロスレビューの7/6/6/5という得点はまずまず妥当かな、
という感じはする。でも決してつまらないゲームというわけではなく、
万人が遊べて、キャラクターも可愛くて、
また意外と笑える部分もあったりして、
これはなかなか意外な伏兵……という感じ。
世間的には同時発売のポケモンのほうに
注目が集まっているようだが、こちらもなかなかどうして、
けっこう遊べるので、値下げされた3DSのオトモにオススメしておこう。
そしてもう一度例のトップ絵を貼っておこう。
やめろやめろ
いや……最初は「ライト向けのゲームでなんだよこの黒い絵は!」と
びっくり!とびだす!(心臓が)というふうに思ったが、
いざゲームの方をやってみると全編わりとこんなノリで
すげぇ笑わせてもらったわ。たまにはこういうゲームもアリだと思うね。
オマケ。
これを見る限り最初はDSで出すつもりだったのかね。
キャラゲーなんかはまだ普通にDSで出てるのに
途中で3DSに鞍替えした英断はちょっと評価したい。
グラフィックきれいだしね。
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