C型肝炎 News&Topics 講演会・座談会記録集

C型肝炎学術講演会

C型肝炎治療、世界標準の時代へ

(写真)豊田 成司 氏

《講演3》

リバビリン併用療法の有効性の向上をめざして
―日本人にリバビリンをどう使いこなすか―

演者:豊田 成司 氏
JA北海道厚生連 札幌厚生病院 副院長

PEG-IFNα-2b+リバビリン併用療法の効果を高めるには、減量・中止をいかに避けるかが重要になる。リバビリンの減量に影響する因子としては、年齢、性、体重、腎機能(SCr、CCr)、投与前のヘモグロビン値などが知られているが、それらの因子を単独にみてもリバビリンの減量予測は難しい。そこで演者の豊田氏はリバビリンの全身クリアランス(CL/F)の算定式に注目し、CL/Fが臨床上どの程度有効かを検討し報告した。
この算定式はKamarらが昨年報告しているもので、実際のリバビリン血中濃度の推移から導きだされ、そのパラメータは体重、年齢、性、血清クレアチニン(Scr)値であるが、豊田氏の検討結果からCL/Fは投与前のヘモグロビン値とも相関することが明らかになり、リバビリン減量に影響を与える5つの因子をすべて含んでいることになる。つまり、CL/Fはリバビリンの減量予測の指標として非常に有効なパラメータと考えられる。実際に、CL/Fを4群に分けリバビリンの減量・中止と著効との関連をみるとCL/F15以下の症例で減量率や中止率が高く、一方SVR率の低下を来していることが判明した(図5)。そこで豊田氏は、リバビリン血中濃度の実測値とCL/Fからの予測血中濃度との関連、さらに減量時期をどの程度予測できるかを検討。その結果、治療開始4週目のリバビリン血中濃度のみがCL/Fと相関しており、CL/Fから治療開始4週目のリバビリン血中濃度が予測可能であることが示された。また、CL/Fと治療中のヘモグロビンの低下量を含めて、リバビリン減量の予測因子を多変量解析で検討したところ、最も強い因子はCL/Fと2週目のヘモグロビン低下量であることが明らかになった。

*CL/F(L/hr)= 32.3 ×BW ×(1-0.0094×Age)×(1-0.42×Sex)/Scr

  • ・BW : 体重(kg)
  • ・Age : 歳
  • ・Sex : 男性=0, 女性=1
  • ・Scr : μmol/L

図5 CL/F別減量率・中止率・SVR率(札幌厚生病院)

(図5)CL/F別減量率・中止率・SVR率(札幌厚生病院)

次に、リバビリン減量のハイリスクグループと考えられるCL/F15以下の症例を減量の有無で2群に分けて1週目のヘモグロビン値を比較検討したところ、非減量群の70%ではヘモグロビンの低下が認められなかったが、減量群では全例に低下が認められた(図6)。この結果について豊田氏は「ハイリスクグループと考えられるCL/Fが15以下の症例におけるリバビリンの減量は、1週目のヘモグロビン値で予測可能であり、1週目のヘモグロビン値が低下していない症例では、即座にリバビリンを減量する必要はないと考えられる」と述べた。
次に演者らは、国内臨床開発試験に参加した全例を対象として、リバビリンの実投与量とCCrから計算した至適投与量の差がSVR率や中止・減量・休薬率に与える影響について検討し「投与開始からリバビリン量を減量すると、その後の減量・中止の確率は低下するが、有効性も低下する可能性がある。そこで、CCrから計算した予測至適投与量が400mgである症例を除いては、添付文書どおりの十分量から開始することが望ましいと思われる。しかし、予測至適投与量よりオーバードーズとなっている症例あるいはCL/Fが15以下の症例ではより慎重な経過観察が必要であり、1週目のヘモグロビン低下量などを参考にして速やかに減量すべきか否かを判断することが望まれる。また、リバビリンの総投与量が臨床効果に影響を与えている可能性が示唆されているので、リバビリン投与量を減量した症例でも、ヘモグロビン値が改善すれば、投与量を元に戻すことを検討する必要がある」と指摘。
最後に「有効性と安全性の両面を満足させるリバビリンの投与量を決めることはかなり難しいが、本邦には高齢者や低体重の症例が多いため、本日紹介したCL/Fは臨床的にかなり有用なマーカーになると考えている。しかし今回のデータはレトロスペクティブなものであり、リバビリンの至適投与量を決めるにはCCrから算出するのが良いのか、あるいはCL/Fから算出したほうが良いのかを含めて、今後プロスペクティブな検討が必要と思われる」と述べた。

図6 CL/F 15L/hr以下の症例での減量は1週で予測可能(札幌厚生病院)

(図6)CL/F 15L/hr以下の症例での減量は1週で予測可能(札幌厚生病院)

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