肺動脈を閉塞する状態であり、血栓をはじめ静脈中に流入した羊水や腫瘍細胞などが原因として多い。
塞栓に伴って抹消領域に出血性壊死を生じた場合をいう。
臨床的にはARDSと同義である。
下肢の深部静脈血栓症がもっとも多い原因である。
骨折や手術後に生じることが多い。特に骨盤の術後に起こりやすいが、抜歯のあとでも起こりうる。
真性多血症や悪性腫瘍が原因となることが多い。 またエストロゲンの作用で凝固系が亢進する妊娠も本症のリスクとなる。
局所の外傷や炎症が原因となることが多い。
外科手術や中心静脈カテーテルの操作中に起こりやすい。
特に腎細胞癌の大静脈浸潤が原因として多い。
塞栓部位の末梢は血流が低下して換気血流比が増加すると死腔となるので、換気不全になる。 これによって低酸素血症に陥ると肺血管が収縮して、急性肺高血圧を招く。 これは右心系に負荷をかけて肺性心に発展する。
また肺胞換気不全によって高炭酸血症となり、代償反応として過換気が生じる。
換気血流比の増加によって死腔を生じる。
これに対する代償反応として過換気が生じる。
低酸素血症→II型肺胞上皮細胞による界面活性物質分泌の低下→肺水腫となる。
低酸素血症はさらに肺血管の収縮をもたらし、急性肺高血圧を招く。右心系に負荷をかけて肺性心に発展する。
急激な呼吸困難と胸痛で発症する。 塞栓が末梢で生じると喀血を生じることもあり、側副血行路が形成されにくいので肺梗塞に発展して胸痛も増強されやすい。
換気不十分により低酸素血症と高炭酸ガス血症を呈する。
肺門部肺動脈が大きく急激に狭小化する所見をいう。
塞栓領域より抹消において、肺血管陰影の低下によって肺野の透過性が亢進する。
肺梗塞に発展すると胸水が貯留する。
肺動脈の欠損や中断像が認められる。
Tc-MAAを静注すると肺抹消血管床に捕捉されて肺動脈の血流分布をあらわすが、肺塞栓症では肺野に分布欠損像が 認められる。
血流シンチは欠損する一方で換気シンチグラフィは正常であり、本症に特異的な所見となる。
肺胞換気量が減少するために代償的に分時換気量は上昇するが、本症の診断に特に有効な検査ではない。
小血栓が肺血管を閉塞する場合は肺高血圧を招く。
急性の肺血栓塞栓症によって肺高血圧をきたして肺性心へと発展したもの。右心肥大を欠く点が特徴的である。
速効性の抗凝固剤であるヘパリンや血栓溶解剤のウロキナーゼを投与する。 ただし脳出血や消化性潰瘍を合併症に持つ症例に対しては禁忌となる。
胸痛に対してモルヒネを投与する。
慢性期にはワーファリンや抗血小板薬を用いて再発を予防する。 右室肥大を伴う慢性血圧症に対してはもっぱら対症療法を行う。
肺塞栓に伴って抹消の肺実質領域に出血性壊死を生じた場合をいう。 肺実質は肺動脈・気管支動脈・気道から酸素の供給を受けるため、肺塞栓から梗塞に発展する例は多くはない。 ただし末梢の肺塞栓では側副血行路が形成されにくいため、梗塞に発展しやすい。
急性に発症した胸膜痛と呼吸困難を主訴とする。
無気肺や肺腫瘍と類似した所見を示すが、特に胸膜に接する点が特徴的である。
陰影が胸膜に接し、肺門に向かって凸になる。
Akimichi Tatsukawa