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卓上四季

残らない言葉

この気持ちはどんな言葉で置き換えられるだろうか。悔しい? 腹立たしい? 恥ずかしい? 情けない? とても一言でいい表せそうにない▼米原子力規制委員会(NRC)が公開した福島第1原発事故に関する議事録からは、発生直後の緊迫したやりとりが生々しく伝わってくる▼昨年3月16日時点で、NRCは4号機の使用済み燃料プールの水が干上がり、放射性物質が大量飛散することを懸念していた。東電などとの会議で「助言を求められた。4号機に砂を投下するという話も出ていた。明らかに(必要なのは)水、水、水と感じた」と記述している▼震災翌日には、炉心溶融の事態を想定して、原発の半径80キロ圏内からの避難が必要という見方を示した。いうまでもなく、事故は日本国福島県で起きた。日本政府は自国民の生命・財産を守るため、米機関よりはるかに真剣に精緻、入念、的確な対応策を練っていたと信じたい▼が、この国に、それを再現する議事録は存在しない。暴走して壊れた原発との戦いはまだ長く続く。あのときどうすることが正しかったのか。検証する一次資料を後世に残せなかったことは歴史に対する罪だろう▼さて、きのう開会した道議会の道政執行方針演説で、高橋はるみ知事は泊原発の再稼働問題について具体的考えを述べなかった。議事録があっても「語られぬ言葉」は残らない。2012・2・24

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