[雪イベント]やろうよ、支えようよ

2012年2月24日 09時55分
(4時間48分前に更新)

 青森県から運んだ雪で、子どもたちが遊ぶイベントを開催するかどうか―。行事を予定していた那覇市内の児童館や放課後児童クラブでは、実施をめぐり判断が分かれた。

 「放射性物質の影響が心配だ」という保護者の懸念は理解できる。実施する以上、放射線量を測定し、安全を確保するのが前提だ。その上で安全だと認められれば、予定通り開催することが、被災地そして東北全体へのエールにつながるのではないか。

 イベントは、沖縄の子どもたちに雪と触れ合う機会を設ける趣旨で、毎年開かれている。放射能汚染に関する市の問い合わせに対し、青森県側から「大気中の放射線量は、国の暫定基準値に満たない」と回答を得ていたという。

 だが、東日本大震災後に県内に避難してきた児童館の利用者らから、中止を求める声が寄せられた。結局、雪遊びを予定していた児童館など3カ所のうち、2カ所で避難者に配慮し実施を見送った。

 確かに、放射性物質による健康被害のリスクは、まだ分かっていないことが多い。被ばくへの不安が募るのは当然だ。まして子ども向けのイベントであり、神経をとがらせるのも無理はない。

 一方で、被災地に今も暮らす人たちに思いをめぐらせる冷静さを持ちたい。安易に中止の方向に流れてしまえば、風評被害に加担し、被災地の孤立を招きかねないからだ。

 「悲しいですね。好意がこんな形になって返ってくるとは」。報道後、青森県の女性から沖縄タイムス社に届いたメールが切ない。

 放射能汚染への不安から、被災者の思いを踏みにじる出来事が全国で起きている。

 京都の山でかがり火をたく「五山送り火」では、岩手県陸前高田市の松を燃やすかどうかで二転三転した。愛知県の花火大会では、福島県産の花火を打ち上げる予定が、別の花火に差し替えられた。福岡市に市民グループが開店を予定していた福島の農産物販売所も、断念に追い込まれた。

 支援を目的とした企画が、逆に被災地の人々を失望させる結果となった。

 大阪府河内長野市の架橋工事でも、福島県内の建設会社が造った橋桁の搬入ができなくなり、工事が中断した。

 東日本大震災からやがて1年を迎えようとしているのに、岩手、宮城、福島3県沿岸部のがれきのうち、処理を終えた量は、全体の約5%にすぎない。被災地以外での広域処理が進まなければ、被災地の復興が滞りかねない。

 原発事故による放射性物質の影響は、広範囲かつ長期に及ぶ。この先、完全に排除して生活するのは、困難だと言わざるを得ない。さらに、そのリスクの受け止め方は個人差が大きい。

 今回の雪をめぐる問題は、私たち一人一人がどう向き合うかが問われている。

 市民の放射性物質への不安を取り除くことと、離れた被災地の人々を支えること。二者択一ではなく、両方を成り立たせる道は必ずある。

 互いに助け合う、支え合う気持ちだけは失いたくない。

有料携帯サイト「ワラモバ」では、PCサイトにはない解説記事やスポーツ速報を掲載しています。» 詳しくはこちらから
« 最新のニュースを読む

写真と動画でみるニュース [一覧する]