橋下市長、小中学生の留年検討
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２０年近く前の出来事で恐縮ですが、フランスの教育事情を約１ヶ月間視察したことがあります。そのときにまず驚いたのが、「留年」（原級留置）が小学校からあるということでした（現在はどうかわかりません）。その時の会話です。
・私（当時中学校勤務） 「小学校から落第があって進級できないのというのは、少し過酷では？」 ・フランス某県教育長 「日本では学習未達成のまま無条件で進級させるの？子供がかわいそうだ！」 「学ぶ」ということに対する考え方の隔たりに、かなり驚かされました。ご存じの方も多いかと思いますが、日本の義務教育では、いわゆる年齢主義を採用しています。その問題点として最近、不登校児童生徒がほとんどノーチェックで進級・卒業してしまう点がクローズアップされてきました。本人のためにそれが本当に良いことなのかどうか、私も大いに迷うところです。 今日配信されたニュースに、この「留年」の話題がありました。
橋下市長、小中学生の留年検討…尾木直樹氏提案 （2月22日 読売新聞より引用）
大阪市の橋下徹市長は２２日、小中学生が目標の学力水準に達しない場合、進級を認めず留年させることを検討するよう市教委に要請したことを明らかにした。 同日開かれる市教育委員との意見交換会で協力を求める。義務教育課程での留年は法的には可能だが、実際の運用はほとんどない。 市役所で報道陣の質問に答えた。橋下市長は、２０日の読売新聞夕刊のインタビュー記事で、教育評論家の尾木直樹氏が学力の底上げ策として、小中学校での留年を提案したことに賛同する考えを示し、「学んだかどうかに関係なく進級させることで、かえって子どもたちに害を与えてしまっている。理解できない子にはわかるまで教えるのが本来の教育だ」と述べた。 義務教育での留年は、現行法でも学校長の判断で可能だが、学校現場からは「子どもへの精神的影響も大きい」との声があり、反発も予想される。 （引用終了） 年齢主義と課程主義
修了や卒業の認定は校長の権限に属します。学校教育法施行規則では、児童生徒の平素の成績を評価して認定するよう定めており、制度上では留年も可能ですが、義務教育ではほとんど例はありません。 日本の義務教育ではいわゆる「年齢主義」を採用しており、学習者・入学志願者の年齢によって学年・学習内容が決定されます。それとは別に、世界にはいわゆる「課程主義」を採用する国も多く、そこでは学習者・入学志願者の学力（習熟度・到達度）や履修状況（学歴）によって学年・学習内容が決定されます。 年齢主義では、一定の年齢に達したら義務教育期間は終了し、課程主義では、一定の課程を修了したら義務教育期間は終了します。年齢主義は、戸籍制度等が整っている日本のような国では、極めて有効な制度なのかも知れません。たとえば、「同年会」「同級生」の絆が、まだ地方では根強く機能している点も見逃せません。このように、縦型社会における横のつながりの役割を「学年」が果たしている側面も、確かに大きいものがあります。 橋本市長の考えも理解できるが・・ さて、くだんの橋本市長の「留年」提案ですが、保護者の同意（あまり期待できませんが）や、留年後の個別的な指導の保証、将来的な「飛び級」の容認、学期途中での原級復帰の容認・・等々、人事面での課題や学級編成上の課題が目前に立ちはだかります。それらが見事にクリアできるのであれば、そして真に児童生徒のためになるのであれば、私は「留年」もまた選択肢にあってもいいのではないかと考えます。 |