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2012年2月24日(金)付

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一票の格差―「違憲の府」は許せない

衆院が一票の格差を是正できないまま、法律で定めた選挙区割りの改定案の勧告期限である25日を迎える。「違憲状態」だと最高裁から指弾された現状を引きずりながら、ついに違法状[記事全文]

仏大統領選―サルコジ氏に試練の春

フランスに熱い政治の季節がめぐってきた。5年に一度の大統領選挙である。再選をめざす現職のサルコジ大統領に対して、野党社会党のオランド元党首が序盤の戦いを優勢に進めている[記事全文]

一票の格差―「違憲の府」は許せない

 衆院が一票の格差を是正できないまま、法律で定めた選挙区割りの改定案の勧告期限である25日を迎える。

 「違憲状態」だと最高裁から指弾された現状を引きずりながら、ついに違法状態に墜(お)ちていく。まるで与野党みんなでなら怖くないと言わんばかりだ。

 これは、まぎれもなく立法府の自殺行為である。

 前回の衆院小選挙区の最大格差2.30倍を、最高裁が「違憲状態」と断じたのは昨年3月のことだ。だが、各党が協議を始めたのは、10月になってから。はなから、やる気がなかった。

 選挙制度は各党の消長に直結するだけに、妥協しづらい。答えを出しにくい問題であるのは確かだ。それにしても、衆参ねじれで政治を前に進められない与野党の無責任な対応は、国会の劣化を象徴している。

 これまでの議論では、民主、自民の2大政党は格差是正を先行させる姿勢だった。この1月には、各都道府県にまず1議席を配分する「1人別枠方式」を廃止し、小選挙区を五つ削る案でそろった。

 これに対し、公明党が連用制の適用を求めるなど、中小政党は制度改革を唱えた。

 そこに、税と社会保障の一体改革での消費増税に対応する「身を切る改革」としての定数削減も絡んだ。

 民主党は公約に掲げた比例定数を80議席削る案を主張し続けたが、不利を強いられる野党が同意するはずもなかった。

 格差、定数、制度改革という三つの難題に、各党が党利党略を抱えて向き合い、身動きがとれなくなった。

 では、どうすべきなのか。

 まずは違憲、違法状態を解消することだ。そのためには、緊急措置として、一票の格差をただす「小選挙区5減」を実現させるべきだ。

 その上で、定数削減と制度改革に取り組むのが常識的だ。

 制度の抜本改革は、当事者である議員の手では難しい。首相の諮問機関である選挙制度審議会を立ち上げて、衆参両院の制度を同時に議論すべきだと、私たちは繰り返し求めてきた。

 民主党側は次回の衆院選後に選挙制度審をつくるというが、先送りする理由はないはずだ。

 すぐに定数削減を実現できないのならば、議員歳費や政党交付金のカットでも「身を切る」姿勢は示すことができる。

 いま各党に求められているのは責任のなすりあいではなく、「答え」を出すことだ。

 有権者は、「違憲の府」をつくった覚えはない。

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仏大統領選―サルコジ氏に試練の春

 フランスに熱い政治の季節がめぐってきた。5年に一度の大統領選挙である。

 再選をめざす現職のサルコジ大統領に対して、野党社会党のオランド元党首が序盤の戦いを優勢に進めている。4月22日の第1回投票ではオランド氏がトップになりそうな勢いだ。

 サルコジ氏は5年前「もっと働き、もっと稼ごう」と呼びかけて当選した。しかしその後、経済情勢は悪化し、失業率は10%近い。欧州債務危機のあおりで、年初めに国債が格下げされたのも痛かった。中間層や若者の怒りと失望は大きい。

 「社会の平等と公正」を掲げるオランド氏は、教職員の大量採用や富裕層、大企業への増税を提案し、支持を広げている。

 移民排斥やユーロ圏からの離脱を唱える右翼のルペン氏も、社会の不満を吸い上げている。

 いまの情勢が続けば、第1回投票ではだれも過半数を得られず、上位2人による5月6日の決選投票へ進みそうだ。

 債務危機が始まって以来、失業や財政赤字で批判を受けたギリシャ、イタリア、スペインの政権が相次いで倒れた。

 左派であろうが右派であろうが、失業や年金削減といった痛みを強いる失政への庶民の批判と不満が噴き出している。

 「今こそもっと働こう」と競争による経済活性化をめざすサルコジ氏は、保守層をまず固めようと反移民、反同性婚を訴える。付加価値税を増税し、それを企業の社会保障負担の削減にあてて雇用を拡大しようという公約が、どこまで支持を得られるかが焦点の一つだ。

 原発問題も、争点になっている。現在58基が電力の8割をまかなっている。現状維持を訴えるサルコジ氏に対して、オランド氏は依存度を5割に減らすことを提案している。オランド氏が勝てば、この国は「減原発」に転じることになろう。

 今年は米国など主要国で政治指導者選びがある。国民の直接投票によるフランスの大統領選びでは、政策にとどまらず、指導者としての覚悟や見識、説明能力の高さが問われる。

 明確な将来像を示せない指導者が、国民の信頼を得られず批判にさらされる現象は、日本でも起きている。

 フランス大統領選の行く末は、日仏関係への影響だけでなく、日本政治を活性化するヒントも与えてくれるだろう。

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