【ワシントン】オバマ政権は22日、国際的にも高いとされる米国の法人税の最高税率を現行の35%から28%へ引き下げることを柱とした法人税制改革案を発表した。また同案は実効税率を引き下げ、評価の高かった一部の控除を恒久化する一方、多くの所得控除を廃止または抑制することを提案している。
同案を発表した米財務省は、最高税率は製造業の場合、国内での生産活動を奨励するためにさらに優遇措置を設けて25%になる見通しという。また企業の研究、開発投資や再生可能エネルギーの生産を支援する優遇措置の維持や新設も盛り込まれている。
ガイトナー財務長官は「どの改革案も、それが米国への投資意欲を増すか否かを問われる」と話した。また、長官は今回の改革を財政の健全性を保つ上で規律あるものにしなければならないとしたが、一部優遇措置の廃止分がどれだけの増税となるかは明らかにしなかった。
法人税改革については民主党も共和党もその必要性については合意しているものの、具体論では意見の隔たりがある。さらに今年は両党が激しく争う大統領選の年だけに、今回の提案を含めて法人税改革について細部まで含めた合意を得られる見通しは低い。オバマ政権は今回の案が最終的な改革のたたき台になれば、と話している。
現行の35%の最高税率は他の先進国と比べても高い水準になっている。ただ、多くの企業が、各種税控除や優遇措置を使って実質的に払う法人税額を低く抑えてきた。
一方、今回の提案では米多国籍企業が海外で上げた利益に対して課税することを初めて盛り込んだ。
その理由について提案書は「多国籍企業の海外利益が全く課税されないままであれば、これらの企業が活動を海外へシフトさせたり、会計操作で利益を米国外へ移す意欲を高めることになる」とした。
現行法制では、米企業の海外子会社は利益を米国外にとどめ置く限り、米国政府からは徴税されない。昨年12月に発表された米議会調査局(CRS)の推計では、米企業が海外から還流させないままになっている利益は9580億ドル(約77兆円)に上っている。
またこの提案では、現行の優遇措置の廃止項目として、「後入れ先出し法」会計の廃止、生命保険の節税手段としての活用禁止、企業用ジェット機の償却禁止などが入っている。借り入れを抑制させるため、利息支払いへの控除抑制も提案している。
具体的な案は盛り込まれていないが、法律事務所などの設立に使われるパートナーシップ形態の法人への課税強化の必要性にも言及した。パートナーシップによって設立された法人の場合、パートナーへの課税のみで法人としては課税されていなかった。
一方、共和党側の大統領候補者はこれまで、法人税率のさらに大きな引き下げを提案している。ミット・ロムニー候補は最高税率を25%に、ニュート・ギングリッチ候補は12.5%へ引き下げることを提唱している。