僕は大学卒業後、分割直前のNTTに入社しました。入ってみて驚いたのは、とにかく仕事がゆっくりしていること。朝はラジオ体操から始まり、朝礼で俳句を詠む。そして夕方5時半には仕事が終わり、6時を過ぎると退社できるような職場でした(部門によると思いますが)。
ただ、当時NTTはいち早くネットの導入を進め、パソコンも一人一台支給されていました。またITの基礎の基礎をみっちり叩き込まれた。これは今でも感謝しています。そこでネットビジネスの将来性を感じ、転職を意識するようになっていったのです。
サイバーエージェントに転職したのは、たまたま中高時代の友人が勤務していて、彼から藤田社長を紹介してもらったことがきっかけでした。不安はありません。それよりも、スキルもなにもない自分を採ってくれるというだけでありがたかった。
大企業は良くも悪くも「レール」が見えます。このまま自分が進んでいったら、5年後にはあのポジションに立ち、うまくいけば10年後にあそこまでいける。決して1本ではないけど、複数のレールがあって、そのどれかを走る以外に選択肢がない。しかも、道を極めるには時間がかかります。
一方、ベンチャーはこれからレールを造っていく集団です。レール(仕組み)を造る喜びもあるし、わずかな期間で驚くほどの成長ができる。その代わり、仕事は忙しいですよ。僕自身、サイバーエージェントに入って、ようやく本当の社会人生活がスタートしたような気がしました。自分の求めていた「仕事」はこれだ、という実感がありましたね。
ベンチャー企業とは、ただ「小さい会社」や「若い会社」のことではありません。僕の考えるベンチャーの定義は「仕組みが完成途上にある企業」です。利益を生み出す仕組み、人を動かす仕組み、成長を持続させる仕組みなど、さまざまな仕組みを現在進行形で創っている企業。だからベンチャーには「創る喜び」があります。