米原子力規制委員会(NRC)は21日、東京電力福島第一原発の事故が起きた昨年3月11日から10日間の対応について、会議や電話などでの職員らのやりとりを公開した。ヤツコ委員長は1〜3号機で炉心溶融が起きた懸念を抱いていたほか、4号機の燃料プールの水がなくなっているとの判断が、80キロ圏内の米国人への退避勧告につながったことが記録されていた。
3千ページを超える公開文書によると、NRC関係者らは昨年3月16日の時点で4号機の使用済み燃料プールの壁が爆発でなくなったと推定。水が失われて大量の放射性物質が放出される事態を懸念している。
関係者らの一部は来日して東電本店での会議に参加。会議では水の代わりにプールに砂を入れる意見が出たというが、「明らかに必要なのは水、水、水だ」と感じたと報告した。
事態が悪化すれば80キロ以上の避難が必要との意見や、ハワイやアラスカへの影響を指摘する関係者もいた。委員長はそこまでの影響は否定したが、4号機の燃料プールを心配し、16日「米国で同じことが起きれば80キロ圏内から退避することになる」との幹部らの意見を受け入れ、ルース駐日米大使に避難勧告を助言することを協議した。
そのほか、米国から原子力委員会の近藤駿介委員長に対し何度もたずねたが、燃料がむき出しになっていることは認めなかったことも明らかにしている。
現実には、16日の時点で、日本政府は原発から20キロ圏内からの避難と、20〜30キロ圏内での屋内退避を呼びかけていた。また、その後、1〜3号機では実際に炉心溶融が起きたとみられることがわかった一方、4号機燃料プールに大きな損傷はなく、水はなくならなかったことを東電が確認している。
米国が詳細な記録を残す一方で、日本の原子力災害対策本部は議事録も議事概要も作っていない。藤村修官房長官は22日の記者会見で「誠に遺憾」と語る一方、経済産業省原子力安全・保安院が会議の内容を記した文書を2月中にまとめることになっており、来週半ばぐらいまでに公表することを明らかにした。