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仰天「ハレンチ画像が消えないウイルス」 被害は110万台PC

産経新聞 2月18日(土)14時8分配信

仰天「ハレンチ画像が消えないウイルス」 被害は110万台PC
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利用者が無料動画サイトと思ってクリックしていくと、突然、料金請求画面が現れる仕組みになっていた(写真:産経新聞)
 【衝撃事件の核心】コンピューターウイルスを組み込んだ「4クリック詐欺」のアダルト動画サイトを運営し、約1年間で約6億円を荒稼ぎしていたグループが1月、京都府警などに摘発された。人気アイドルグループ「AKB48」などの芸能情報をエサに詐欺サイトへ誘い込んだ上、約110万台のパソコンを「破廉恥画像が消えない」ウイルスに感染させ、うち約1万人が現金を支払っていたという。ネットユーザーの「スケベ心」をくすぐった驚愕(きょうがく)の手口とは−。

 ■消えない破廉恥画面

 昨年10月5日、山梨県内の男性(68)がネットサーフィンをしていると、「無料」をうたったアダルト動画サイトに行き着いた。

 「年齢認証」「動画再生」など、サイトの指示に従って計4回クリックすると、「6万9千円を支払ってください」という請求画面に続き、「有料会員登録が完了しました」という画面がデスクトップ上に表示されたまま消えなくなってしまった。画面には、卑猥(ひわい)な文句とともに裸に近い女性たちの画像が躍っている。

 困り果てた男性が、画面に表示された連絡先に電話をかけるとコールセンターにつながり、「6万9千円を支払えば画面が消える」と教えられた。画面を消したい一心で、言われた通り全額を支払った−。

 この男性のパソコンをウイルスに感染させたサイトを運営していたとして、京都府警などは今年1月18日、不正指令電磁的記録(ウイルス)供用容疑で、東京都世田谷区、ネット広告会社役員、堀本真也容疑者(33)ら男6人の逮捕に踏み切った。

 府警によると、堀本容疑者らは、4回目のクリックで破廉恥な画面が表示されたまま消えなくなる不正プログラムを使用していた。

 府警がグループから押収したパソコンのデータ解析をしたところ、堀本容疑者らは同様の手口で、国内の約110万台のパソコンを「破廉恥画像が消えないウイルス」に感染させていたことが確認された。

 ■アイドル情報をエサに誘導

 なぜ約110万人ものネットユーザーが、いとも簡単にだまされたのか。「スケベ心」はこれほどまでに人の目をくもらせてしまうものなのだろうか。

 「被害者はアダルト動画が見たくてネットを利用していた人たちばかりではない。巧みに詐欺サイトに誘い込まれていったようだ」と捜査関係者は語る。そこには、堀本容疑者らが仕掛けた巧妙なわながあった。

 グループは、人気アイドルグループ「AKB48」などの芸能情報を紹介するブログも多数運営し、そのブログ内に詐欺サイトへのリンクを貼り巡らしていた。

 アイドルの記事の下に「動画を見る」という文字が続く。アイドルの動画が見られる、と思ってクリックすると突然、アダルト動画サイトにジャンプする。

 「無料」をうたっているが、実はここからが4クリック詐欺サイト。ひとたび迷い込んでしまうと、「後戻りはできない」(捜査関係者)。思わずひっかかってしまう周到な仕掛けが続くのだ。

 「利用規約に同意しますか」「自宅のパソコンですか」「18歳以上ですか」「動画を見ますか」−。

 こうした質問が読みにくいほどの小さな文字で表示され、その下には「はい」という大きな回答。巧みに「はい」を押させようする仕組みである。

 「無料なら見てみようか…」とスケベ心をくすぐられ、ついついクリックしていくと、4回目で「消えない破廉恥画像ウイルス」に感染してしまう。

 被害者の中には、芸能情報を検索しているうちに、いつの間にか4クリック詐欺サイトに引き込まれ、好奇心も手伝って次々とクリックしてしまった主婦もいたという。ウイルスに感染して恥ずかしい画像が消えなくなり、「家族に見られたら困る」と焦りに駆られ、請求された金額を急いで支払ったケースは少なくないだろう。

 その後の捜査で、グループのものとみられる21の金融機関の口座には、逮捕されるまでのたった1年間に約6億円の入金があったことが判明した。約1万人が実際に現金を支払ったとみられる。

 京都地検は2月8日、不正指令電磁的記録供用罪で6人を起訴。府警は別の被害者に対する容疑で6人を再逮捕した。

 前代未聞といえる被害数が明らかになった4クリック詐欺。国民に身近になったインターネットにひそむ犯罪の不気味な影は、社会に波紋を広げた。

 ■クリック4回に隠されたわな

 数年前、1回クリックしただけで料金を請求される「ワンクリック詐欺」の被害が相次いだ時期があった。警察や国民生活センターなどの広報啓発が奏功し、今やワンクリック詐欺の手口を知らないネットユーザーはごくわずかだ。

 このため、「クリックしなければいい。だまされる方が悪い」と思う向きもあるかもしれない。だが、ここにも4クリック詐欺の巧妙さがあるのだ。

 「1回目のクリック直後に何も変化が起こらないため、『このサイトはワンクリック詐欺ではない』と思わせる効果がある」

 違法アダルトサイト契約をめぐるトラブル解決を支援している行政書士の吉田安之さん(クーリングオフ行政書士事務所)はこう指摘する。「ワンクリック詐欺の手口が有名になりすぎたため、利用者側も1回目をクリアすると安心して次に進んでしまう。それを悪用している」

 さらに、4回も自らの意思でクリックしているだけに、請求画面に直面した利用者は「自分に手続き上のミスがあったのかもしれない」と思い込み、言われるがままに料金を支払ってしまうことが多いという。

 しかも料金名目で請求されるのは7万円程度だ。法外な金額ではなく、小遣いからすぐに支払えそうな金額に設定しているところもミソのようだ。

 中には「料金は12万円です」という表示が出た後、「3日以内に支払えば6万9千円」と期限付きの“ディスカウント”を装うサイトもあった。「デッドラインを設定することで利用者の冷静さを失わせる仕組みだ」(吉田さん)という。

 捜査関係者によると、堀本容疑者は「以前にワンクリック詐欺サイトを運営していた。アクセスが少なくなったため、4クリック詐欺サイトを立ち上げた」と供述している。知人などを通じてITに詳しい人物を募集し、随時改良を加えていたとみられる。

 約110万人ものネットユーザーを狼狽(ろうばい)させたグループの摘発は、捜査当局との間でイタチごっこが続くネット犯罪に歯止めをかけるきっかけになるのか。

 京都府警は共犯とみられる男2人の逮捕状を取って行方を追うとともに、詐欺容疑での立件も視野に全容解明を進めている。

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最終更新:2月18日(土)14時8分

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