チェルノブイリとウクライナの子供たちの健康 (25年の観察結果)
エフゲーニャ・ステパノワ医学博士
ウクライナ放射線医学 研究センター
1986年4月26日の深夜、チェルノブイリ原子力発電所の第4原子炉で爆発が起こり、その結果核事故がおきた。国際評価によるとこのチェルノブイリ事故はレベル7(深刻な事故)と分類されている。
結果
・出力が急激に増加(1000倍に)。
・炉心と原子炉の格納容器が崩壊、火事が発生。
・高度2000メートルまでの大気中に放射性物質が放出。
・放射能沈殿物として放射性物質が降下。 主に放射性物質の放出は10日間継続
・全体の放射性物質の放出量 14 x 1018 Bq
事故原因
.非常用システムがOFF。
.技術を守っていなかった。
.原子炉の構造が不安定であった。
熱した原子炉に投下されたもの 2400トン 鉛 1800 トン 砂と粘土 600トン ドロマイト(苦灰石) 40 トン ホウ素化合物
.ヘリコプター乗組員にとって大きな放射能リスクをもたらすこの方法の効果は高いものではない。その第一の原因としては炉心への投下精度が低かったことがあげられる。
5時迄に、(発生から)3時間後に火事は鎮火
4月26日の放射能レベルは毎時100ミリレントゲンに達し、そのためにチェルノブイリ原子力発電所から4km離れたプリピャチ市住民を避難させる決定がされた。
4月26日深夜避難のために1100台のバスと3本の列車が準備された。
4月27日14時プリピャチ市住民の避難が始まった。 3時間(!)で市から45000人が避難、うち17000人が子供であった。 事故直後、チェルノブイリ原子力発電所の30km圏内の住民が避難した。避難は適切で住民保護の政策は正しかった。この策をとったことにより約10000人・Svの被ばく線量を防ぐことができ、放射線の確定的影響の大量発生を避けることができた。
1986年末まで188の居住区域から11万6000人が移転、さらに1993年末までに全部で23万人が移転した。
事故の規模が明らかになるにしたがって汚染居住地域・30km圏内、(>555kBq/m2)からの移転がおこなわれた。
セシウム137による汚染 > 37 кBq/m2
国の面積(km2)
.ロシア 57,900
.ベラルーシ 46,500
.ウクライナ 41,900
.スウェーデン 12,000
.フィンランド 11,500
.オーストリア 8,600
.ノルウェー 5,200
.ブルガリア 4,800
.スイス 1,300
.ギリシャ 1,200
事故当初放射能状況は、第一に半減期の短い核種の崩壊プロセスによって決まった。半減期の短い核種の中で重要な役割を演じたのが放射性ヨウ素であった。その後線量負荷において支配的な役割を果たしたのが半減期の長い核種であった。現在住民の「事故」被ばくの主たる被ばく源となっているのはセシウム137で、セシウム137は総線量の90-95%を占めている。
ウクライナでは放射性セシウムの汚染度にしたがって4つの地域区別分けがおこなわれた:
1. 立ち入り禁止区域 (チェルノブイリ原子力発電所から30km圏、 150万Bq/ m2 以上)
2. 強制(義務)移住区域 >555 kBq/ m2 (年間線量 >5 mSv/年)
3. 保証自主移住区域 185 . 555 kBq/ m2 (年間線量 >1 mSv/年)
4. 放射線環境強化管理区域 37 . 185 kBq/ m2 (年間線量 >0.5 mSv/年).
.ウクライナの法律により、チェルノブイリ事故による住民のリスクグループ(1986年生まれの子供)に対する追加被ばく線量は 1 mSv/年、全生涯で 70 mSvを超えてはならないとされている。
.立ち入り禁止区域の境界地帯は、100年間は人が居住するには適さない。
.第2から第4区域に含まれる居住区域の数は、放射性物質の崩壊プロセスにより時間 が経過するとともに、徐々に減少していく。
ウクライナではチェルノブイリ事故の被災者を登録のために4つのグループに分けている。:
1)事故処理作業にあたった人
2) プリピャチ市と30km圏内から避難した人
3) 放射性物質で汚染された地域に居住している人
4) 被ばくした両親から生まれた子供
被ばくした住民グループの中で特にリスクグループは、子供である。
理由は放射能ファクターの作用に対して成長・発達している体が大きく反応するからである。
今回の報告ではチェルノブイリ事故の影響が下記のカテゴリーの子供の健康に与える影響について取り上げる。
プリピャチ市と30km圏内から避難した子供 汚染地域に居住している子供
胎内被ばくの子供
被ばくした両親から生まれた子供
1986年 ヨウ素の危険性が高い時期における子供の体の反応
「立ち入り禁止区域」から避難した子供たちが訴えた症状
.喉がいがらっぽい、口の中で金属の味がする - 55,7%,
.咳 -31.1%,
.首部分の痛み-29.8%,
.疲れやすい-50.1%,
.頭痛 -39.3%,
.めまい -27.8%,
.不眠 -18.0%,
.失神 -9.8%,
.吐き気と嘔吐 -8.0%,
.便通不順-6.9%.
体の最も典型的な反応:
.呼吸器症候群 -31.1%;
.リンパ組織の過形成 -32.2%;
.胃腸管活動障害 -9.4%;
.心臓血管系の機能障害 -18.0%;
.血液データの変化 -34.2%;
.バセドー氏病の臨床的兆候がない「甲状腺肥大」 - 6.8%
.肝臓と脾臓肥大
1987-1991 年 この時期子供達の不調を訴える回数が増加した:
.極度の疲労 82.7%,
.衰弱 71.7%,
.神経不安定 . 65.9%,
.頭痛 . 52.0%,
.めまい 40.3 %,
.不眠 . 29.6 %,
.胃腸不調 . 52.8%,
.心臓あたりの不快感 26.4%.
臨床検査の際に様々な器官などの機能障害が見られた:
.動脈圧の不安定 . 70.3%;
.肺の吸気機能障害 . 53.5%;
.心臓の機能変化 . 40.0%;
.胃の機能障害 . 39.6%;
.運動後の疲れやすさ . 31.5%;
.免疫力の低下-60~70%
.肝臓機能の一時的障害 . 52.8%.
機能障害が慢性病への移行が30km圏内から避難した子供にも、放射能汚染地域の住民にも見られた。この悪い傾向は、子供が18歳になるまで続いた。
最悪な進展傾向は甲状腺に高い被ばく線量をうけた子供にみられる。このような子供のうち、健康な子供の割合は、2.8%を超えていない。
実際に健康な子供の割合は1986年から1987年の27.5%から2005年の 7.2 % にまで減少した。
慢性疾患をもつ子供の数は1986年から1987年の 8.4 % から2005年には 77.8%にまで増加した。
プリピャチ市から避難した子供にみられた病気疾患レベルは、事故後ずっと比較対象グループより高くなっており、2003年の健康管理の際には避難グループの疾患レベルは対照標準グループと比べて3倍高くなっている。
健康検診管理システムの最初の時期と比べると、もっとも大きな変化は下記の疾患にみることができる。
消化器官の疾患 (グラフ左) 神経系疾患 (グラフ中央) 血液循環系疾患 (グラフ右) (省略)
避難した子供および青少年に呼吸器疾患レベルに関して悪い傾向がみられる。
赤色:慢性気管支炎 黄色:喘息 緑色:気管支炎 (省略)
チェルノブイリ事故の結果、ウクライナには汚染された地域があり、このような地域には250万人以上が住んでいる。しかもその住民の4分の1は子供である。
農産物、乳製品、肉、魚など食品を通じてセシウム137をはじめとした放射性核種が摂取されるのに伴い、内部被ばく長く続く被ばく源が形成された。
食料の内部被ばく線量への関与レベルは 98-99 %で、内訳は下記の通りである。
- 牛乳- 線量の80 %
-肉 - 5-10 %
- じゃがいも - 5-6 %
- 野菜 - 1-6 %
- 魚 - 1.2 %;
- きのこ類 - 2-12.5 %
- パン - 1-1.4 %
ジトミーロフ州、キーロフ州、ロヴェンスク州の個人経営農家では「汚染されていない」乳製品の入手は非常に困難であり、現在でも緊急に解決を要する問題のひとつとなっている。
放射性物質セシウム137は、消化器の粘膜と臓器の実質器官(肝臓、脾臓)に直接影響を与える。
一日の食事量が不規則で、さらにセシウム137が体内に長期間にわたって摂取されることは、胃腸管の羅病率が常に上昇しつづけている原因のひとつである。
汚染地域の子供には消化器系の疾患が明確に増加している。
汚染度 > 555kBq/m2 以上の区域に居住している子供は、比較的汚染の少ない地域に居住している子供と比較して、下記の病気がより多く確認された。
.呼吸器疾患(2.0倍)
.自立神経血管機能障害 (1.52倍)
.肝臓組織の筋腫化 (2.3倍)
. 血液系障害 (2.5倍)
.免疫障害 (1.8倍).
子供に見られる慢性疾患の特徴
・以前には子供には見られなかった病気が 子供にも見られるようになった
・複数の病気にかかりやすくなった
・長く続き、再発する傾向があった
・治療効果が低い
ウクライナ医学アカデミーの内分泌・物質代謝研究所のデータによると、甲状腺ガンにかかった子供の疾患率の上昇は、1989年からはじまった。疾患例数は1990年から2009年まで次第に増加し、2009年は463例であった。
1986年から2008年までこの研究所では甲状腺ガンと診断された患者6049人が手術をうけた。その中の4480人 (74.1%) は事故当時子供で(年齢 0 . 14才) 、1569人(25.9%) は未成年者 (年齢 15 . 18 才)であった.
胎内被曝の影響評価は、次の子供のグループでおこなわれた:
I グループ . 事故当時プリピャチ市から避難した妊娠女性から生まれた子供 。
II グループ . 事故当時強化放射線管理地域(第2区域:>555kBq/㎡、年間線量>5mSv/年)に残り、住んでいた妊娠女性から生まれた子供。
対照標準グループとしては放射線状況が良好な地域に住んでいた1986年に生まれた子供。
線量負荷:
・第Ⅰ、第Ⅱグループの胎児の甲状腺に対する線量負荷は確実な差異はなく、その線量は 0.0から3.35Gyとなっている。
胎児の総被ばく線量は、 4.2から376.0 mSvとなっている。
汚染地域に住んでおり、18才の年齢まで蓄積された子供の総被曝線量と赤色骨髄 の被ばく線量:
・総被ばく線量 10.5-72.1 mSv
・赤色骨髄被ばく線量 -14.1-81.7 mSv
子供の身体発達の障害頻度は、胎児の甲状腺の被ばく線量と結びついている。 緑:対照標準グループ 横軸:線量 (Gy) (省略)
子供の甲状腺の障害が胎児発達期において放射性ヨウ素の被ばく線量と依存関係にあることが指摘された。
黄:I グループ 赤: IIグループ 横軸:線量Gy 縦軸:%(省略)
他の危険ファクターに放射線のリスクが加わったために、異常発達の数が増加した。
子供の複数の小さな異常発達の数と総被ばく線量(R=0.61)と正の相関関係があること、また被ばく時(R= -0.53)の胎児の妊娠年齢との間には負の相関関係があることがあきらかになった。
胎内被ばくした子供にみられる染色体異常の頻度は、胎児の赤色骨髄の被ばく線量と依存関係があると判明。縦軸:染色体異常の頻度 横軸:赤色骨髄に対する等価線量 (省略)
被ばくした両親から生まれた子供たちに見られる特徴:
・安定的に高い羅病率、羅病率はここ5年間でウクライナのデータ(1032.90 . 1335.83 ‰)より上回っており、 1426.78 . 1587.40 ‰となっている。
・実際に健康な子供の数は少なく、5.0 . 9.2%となっている。対照標準グループではこの数字は 18.61-24.60%となっている。
ウクライナの国家登録簿には1986年に事故処理作業者から生まれた子供13,136 人おり、そのうち 1,190人の子供が、先天性発達障害として登録されている。(1000人当たり90.6 人)
先天性発達障害がもっとも多いのは、事故後初期に生まれた子供である。父親が放射能ファクターとの接触をやめてからの時間がたつにつれて、先天性発達障害をもつ子供の数は減少した。 1986年の事故処理作業者から生まれた子供に見られる先天性発達障害頻度 (‰) (省略)
W. Werteleckiのデータによると、ロヴェンスク州の汚染地域で生まれた子供には神経管障害が高い頻度でみられる。 これはヨーロッパ諸国のこの障害の頻度( 10000人の生まれた子供に対して18.3 人)に比較してかなり高い数字となっている。放射能ファクターの影響の可能性についての予測がされており、これらの研究を今後も続ける必要性の根拠となっている。
チェルノブイリ事故処理作業の家族の検査により明らかになった事項
チェルノブイリ事故の処理作業に父親が参加したあとに妊娠および生まれた子供は、事故前に生まれた兄や姉と比べて健康面で劣っている。:
・慢性的身体疾患が事故前に生まれた子供の 35.4%に、事故後に生まれた子供の 64.7%に見られる。
・3つもしくはそれ以上の慢性疾患が事故前に生まれた子供の 23.8%に、事故後に生まれた子供の 57.3%に見られる。
・もっとも低い健康指標をもつのは1987年に生まれた子供である。1987年生まれの子供の中で事実上健康な子供の数は 1.8%である。
・父親がチェルノブイリ事故の処理作業に参加した後に生まれた子供は、 結合組織の異形成症候群などの数多くの小さな発達異常がみられる。
事故後に生まれた子供の染色体異常の頻度は、事故前に生まれた同じ家族の子供よりも高い。理由は染色体の破損が多いからである。
黄緑:事故後に生まれた子供 赤:事故前に生まれた子供 水:父親 黄:母親 (省略)
分子遺伝学研究で下記の事項が明らかになった。
チェルノブイリ原子力発電所事故後に事故処理作業者の家族に生まれた子供は、父親が事故処理作業に参加する前に生まれた兄や姉たちと比較して、DNAのマイクロサテライト部分の突然変異の増加がみられた。
Picture 1(省略)
結論:
.被災者の子供の健康状態にはかなり否定的な傾向が見られる。
.もっとも健康状態の悪いのは、甲状腺に高い被ばく線量をもつ未成年者であることが確認された。
.より幼い年齢で慢性的な疾患が確認された。同時に複数の病気にかかる傾向があり、相対的に治療しても治りにくく、再発傾向をもっている。
.胎内被ばくの子供には、健康異常、身体発達異常、体細胞の染色体異常が高い頻度でみられる。
染色体異常と胎内被ばく線量の間には依存関係があることが明らかになった。
.被ばくした両親からチェルノブイリ事故後に生まれた子供には遺伝子効果の可能性があると推測できるデータがでた。
事故の比較
チェルノブイリ 福島
レベル 7 7
ヨウ素131 1.8 × 10(18乗) Bq 1.5 × 10(17乗)Bq
セシウム137 8.6 × 10(16乗)Bq 1.2 × 10(16乗)Bq
被ばく線量 85-95% 状況不明
福島第一発電所の事故は子供の健康に悪い影響を与えるだろうか?
チェルノブイリ原子力発電所と福島第一原子力発電所の事故はレベル7の評価をうけており、それは放射能大事故に相当する。福島第一原子力発電所の事故当時、環境に放出された放射性核種のヨウ素131とセシウム137はチェルノブイリ事故よりも若干少ないが、両者は比較しうるものである。
したがって、日本の子供たちの健康に対する影響は、チェルノブイリの子供たちに観察されるものと同じようなものでありえるかもしれない。 したがって子供たちは放射能リスクグループにいれるべきであり、幼年期およびその後も常に医学観察のもとにおかれるべきである。その目的は健康障害を防ぐこと、もしくは適切に時期をのがすことなく健康障害をみつけるためである。
チェルノブイリの教訓
1.チェルノブイリと福島第一原子力発電所の事故は、核エネルギー発電においてはもっとも起こり得ない事故でさえ起こりうることを示した。これは技術的な事故がおきた場合にそなえて国家の対応システムをかなり高いレベルで準備し、常にそのシステムを維持しておかなければならないことを証明している。
2.チェルノブイリ事故が大事故であることの認識が遅かったこと、及び住民及び環境への否定的な影響の大きさに関しての理解が足りなかったことが、住民、特に子供の健康に大きな被害をもたらした。医療当局へは時宜を得た情報はもたらされなかったし、医療当局は大きな放射能事故の医学的影響を撲滅する用意ができていなかった。ヨウ素による予防対策の実施は遅れたか、もしくは全く行われなかった。その結果甲状腺ガンの頻度が急激に増加した。特に子供が甲状腺ガンにかかった。
3.事故対策に関するしかるべきシステムが欠如していたことが、事故状況の中で処理作業にあたる用意のなかった人をチェルノブイリ原子力発電所事故の処理対策にあてるために招聘した理由だった。この決定は非効率的であり、こういった人々への健康状態への影響は正当化されるものではない。
4.事故被ばく線量の大部分は事故が厳しい状況になっている時に形成された。したがって人々への健康、特に子供の健康保護に関する行動は第一義的なものではなければならない。プリピャチ市とチェルノブイリ原子力発電所周囲30km圏内からの住民の避難は、正しいものであり、効果的だった。この避難によって住民の被ばく線量を約10000人・Svに防ぐことができた。しかしながら、若干遅かったことが原因で、最大限の効果は得ることはできなかった。効果的であったと認める措置は、1986年の5月から9月までチェルノブイリ原子力発電所から30km圏外の汚染地域から「汚染されていない」地域へ移転させたことである。その結果、子供たちの被ばく線量を30%までふせぐことができた。その後毎年子供たちは4週間以上保養施設にて健康増進をおこなっている。
5.チェルノブイリ原子力発電所事故に関して住民に遅れることなく、しかも十分客観的な情報が伝えられなかったことが、社会に社会心理面の緊張感を生み出す前提をつくりだした。避難と移住のプロセスは、時には家族関係、友人関係、倫理的・文化的価値観を破壊した。さらに、新しく住む場所に関する被災者の選択権も考慮されていなかった。チェルノブイリ事故の教訓は、住民の生活条件を相対的に変えることになる決定をくだす際には、被災者の希望を考慮する必要があることを認識しなくてはならない
6.すべての住民集団は、子供を含めて、チェルノブイリ事故後にも生涯線量レベルの80-95%を超えるような被ばく線量をうけた。この被ばく線量は「チェルノブイリの放射性核種」により形成された。したがって体内被ばく線量を低減するための策を講じる必要がある。その方法は汚染されていない農産物を、まず第一に子供の重要な食料品である牛乳を手に入れる必要がある。
7.健康にかかわるチェルノブイリに関する全ての問題は、もし被災者のモニタリング登録簿が事故後すぐに作成さていたら、より効果的に解決されたであろう。しかし、モニタリング登録簿はかなり後になってから作成された。しかしながら、その後毎年実施されている被災者に対する健康管理システムを含めて、医学モニタリングシステムは、早期の段階で疾患を発見する手段として、正当性があり、タイミングを逃すことなく十分な治療をおこなう可能性をつくリだしている。
8. 子供の健康状態の変化の原因は放射能の影響である。また放射能由来でないファクター、すなわち生活と食料条件の悪化、長期にわたる感情精神面での緊張などもその原因としてあげることができる。したがって放射能事故の悪いファクターの影響をうけた子供たちの健康を維持し、回復するための施策は、医療当局だけでなく国家政策の優先事項に他ならない。
9.住民の放射能の影響に関する知識を高めるために、また精神感情面での緊張感やストレスを軽減するために保健啓蒙活動を常に行う必要がある。また、農村地域では特に住民に対する信頼にたる情報原としての教師、医療従事者、社会福祉関係者などに対して研修プログラムを導入すべきである。
チェルノブイリの悲劇は、全人類の悲劇である。