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12.28 放映 NHK「追跡!真相ファイル」

「低線量被ばく 揺れる国際基準」

“生涯100ミリシーベルトとされる被ばくの基準で、本当に健康への影響はないのか?”
福島をはじめ、全国の人々が現実に直面している放射能の脅威。
国は「直ちに体への影響はない」と繰り返すばかりだ。
その拠り所としているのが、ICRP(=国際放射線防護委員会)の勧告。
広島長崎の被爆者の調査データをベースに作られ、事実上の国際的な安全基準となっている。

 

しかし関係者に取材を進めると、1980年代後半、ICRPが「政治的な判断」で、被ばくでガンになるリスクを実際の半分に減らしていた事実が浮かびあがってきた。
当時ICRPには、原子力産業やそれを監督する各国の政府機関から、強い反発が寄せられていたのだ。
そしていま、世界各地で低線量被ばくの脅威を物語る、新たな報告や研究が相次いでいる。

 

アメリカでは原発から流れ出た微量の放射性トリチウムが地下水を汚染し、周辺地域でガンが急増。
25年前のチェルノブイリ原発事故で、大量の放射性セシウムが降り注いだスウェーデンでは、ICRP基準を大きく上回るガンのリスクが報告されている。
いま、誰もが不安に感じている「低線量被ばく」による健康被害。
国際基準をつくるICRPの知られざる実態を追跡する。


上杉隆「原子力国家・日本⑥」

 『TBSは2度死んだ 「原子力国家」日本(6)』       

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5月、ドイツのシュピーゲル誌に掲載された『原子力国家』について、いよい
よ最後の解説を加えようと思う。

12月26日、原発事故調査・検証委員会の中間報告書が出された。

事前に指摘した通り、12月23日に記者クラブへのレクを終え、摺り合わせ
の後、縛りをかけて26日の記者会見とともに500ページを超える報告書が
公表された。

この後に及んで、記者クラブメディアは相も変わらず、「談合」を続けている。

3.11以降、権力側からのスピンコントロールに対して、大手メディアはな
んと無抵抗なのだろう。いや、無抵抗というよりも、進んで従っているその従
順さはもはや喜劇的ですらある。

5月、ドイツの雑誌「シュピーゲル」誌は、コルドゥラ・マイヤー記者の取材
によって、こうしたことをすべて予見していた。

〈原発の大事故が起きてからもなお、東電はジャーナリストを煙に巻こうとし
ている。東電本社の一階には10週間前からテレビ放送局や大新聞社の報道関係
者たちが詰めている。記者会見で彼らに与えられるのは、いかにも精確そうな
生のデータの山だ。しかし、これらのレポーターたちに、何百という脈略のな
い測定値からなにをみつけろと言うのだろう。しかも、これらのデータは、後
になって間違っていたことがよく判明するのである。

データに関して東電の社員は能弁であるが、責任というテーマは避けて通る。
天下り?政治献金?研究費用の肩代わり?これらの複雑なテーマに関する質問
に対しては、東電のスポークスマンは同じ答えを繰り返す。「ノー・コメント」
〉(以上引用)

この記事は半年以上前に発売されたものである。いったいなぜ、日本の大手メ
ディアはこの記事の十分の一でもいいから報じることができないのか。やはり
読者よりも東電が大事なのか。それは換言すれば報道よりも金ということであ
る。

〈それでも印象のよくない報道がされると、いかに東電が神経質に反応するか
を語るのは、テレビジャーナリストの上杉隆氏である。彼は日本のテレビ・ラ
ジオで人気のあるニュースキャスターだ。彼の番組は政治色が濃いのにも関わ
らず、娯楽的要素がある。上杉氏はゴルフが好きな、43歳の明るい人物だ。彼
福島で事故が起きるまで、あまり原子力には関心がなかったという。

ただし、名のある新聞で働く同業のジャーナリストたちに対しては、意見がた
くさんあった。彼等は、報道対象である省庁の宣伝係をしているだけではない
か、と彼は思ってきた。福島の災害発生後、上杉氏は東電のロビーに詰め、原
子炉で今なにが起きているか、知ろうとした。

3月15日、彼は午後1時にTBSの生放送に出演した。そこで彼は、どうやら放射
能が三号炉から出ている模様で、それが海外でも報道されている、と述べた。
「本当は自明なことだったのですが」と彼は語る。しかし放送終了後テレビ放
送局の上司から、番組を降ろされたことを伝えられたのだった。これ以降、上
杉氏はTBSの仕事はしていない。TBSの番組制作のスポークスマンは、「内部で
は上杉氏を降ろすことは以前から決まっていたのだ」と説明している。東電か
らの圧力に関しては否定した。

上杉氏はその釈明を信じてはいない。それからまもなく、別のテレビ番組でも
トラブルが生じたからである。「朝日ニュースター」でも、上杉氏が原子力に批
判的なゲストを自分の番組に招待しようとしたら、電事連が当番組のスポン
サー提供を終了した。放送局は、電事連のスポンサリングはもともと終了する
ことが決まっていた、という。東電スポークスマンは、東電が上杉さんのよう
なジャーナリストに圧力をかけるなど、考えられない、と語った〉

あの三月、私の身に降りかかったことはあたかも夢のような出来事だった。震
災の悪夢から覚めやらぬ中、今度は「言論の死」に直面するという悲劇に遭遇
したのだ。

それは驚くべき情報統制だった。しかも、「言論の自由」が奪われているのに
メディアは何もしない。いや、何もしないどころではない。TBSのように、
権力の横暴に加担した上で、さらに異論を唱える者を次々と排除しはじめたの
だ。

TBSはシュピーゲルの取材に対して、「内部では上杉氏を降ろすことは以前から
決まっていたのだ」と説明したという。

TBSは大丈夫だろうか。TBSはその後、密かに私を出入り禁止にしている。
建物の大きさの割には小さな会社である。

2週間前に突然、契約解除を知らせるという行為は、労働者の権利を著しく損
なうものである。労働基準法でも解雇予告とその期間についてはきちんと定め
られている。ましてや相手はフリーランスの記者である。筆者はまだ恵まれて
いるが、立場の弱い他のフリーランスであったらどうなるのか。震災直後に、
路頭に迷うことさえ有り得る明白な人権侵害事案になってしまう……。

──というような批判も成り立つが、筆者はそうつもりはない。なぜなら、貴
重な人生の時間を、広報番組しか作らないような放送局のために費やすのはま
ったくもって時間の無駄だと考えるからだ。

〈日本政府はその間も、インターネットのプロバイダーに福島に関する「間違
った報道」はネットから外すよう、依頼し始めていた。国民にいたずらに不安
を与えてはいけないから、というのである。「まったくエジプトや中国よりひ
どい」と上杉氏は語る。「公共の秩序と倫理を脅かす」ものはすべて削除するよ
うに、という指示なのだ。

原子力産業がどのように反原発論者を扱ってきたかについて、原発批判を行っ
てきたロベルト・ユンク氏は自著の中で一章を割いている。この章のタイトル
はこうだ。「萎縮させられてきた者たち」。

萎縮させられてきたのは、東電の不正行為を告発した社員であり、そのような
都合の悪い話を報道した上杉隆氏のようなジャーナリストである〉

いったい日本は文明国といえるのか。3月の取材時にマイヤー記者に答えたよ
うに、これではエジプトや中国の方がずっとマシである。なぜなら、言論の自
由がわかるように制限されている国の方が、自由だと思わされて洗脳されてい
るよりもずっと正常化の可能性が高いからだ。

〈福島県前知事である佐藤栄佐久氏のような人物も、その犠牲者であると判断
できる理由がかなりある。佐藤氏は原子力村の権力に抵抗しようと試みたから
だ。彼は原発を抱えるほかの県の県知事と連帯し、原発を批判的に見る枢軸を
打ちたてようとしたのである。

力を持たぬ地方の政治家であった佐藤氏だが、世界中から原子力の専門家を福
島に招待し、日本の新しいエネルギー政策を考えようとした。もしかしたら、
彼はこれまで日本で一番影響力のあった原発批判論者であったのかもしれない。
しかし、彼の政治キャリアは2006年に突如幕を閉じた。

彼は収賄罪で逮捕されたのである。彼と彼の弟が福島県の建設会社から、市価
以上の価格で土地を売りつけた、という容疑だった。

裁判所は佐藤氏に有罪判決を言い渡した。二審の東京高裁では、減刑となった
ものの、有罪判決は変えられなかった。佐藤氏は現在、最高裁で無罪を求め、
闘争中である。

東京の元検事である人物が語るには、佐藤氏の弟は、土地の売買でなんら収益
を上げていない、ということである。それだけではない。当時の担当検事はそ
の後、懲役18ヶ月で有罪判決を受けている。ある高級官僚を取り調べる別の捜
査で、この検事が証拠物件を改竄していたことが判明したのだ〉

いま、佐藤氏の冤罪は確定的になっている。だが、その事実を報じるメディア
は皆無だ。佐藤氏によれば、原発事故以降、自分の元に取材に来たメディアは
外国メディアかフリーに限られるという。大手メディアはまるでその事件がな
かったかのように沈黙している。

その理由は簡単だ。面子だ。記者とマスコミのつまらぬ面子のための正直であ
ることを放棄しているのだ。

自らの誤報を訂正し、原発政策に否定的な人物の名誉を回復することは、アン
フェアな彼らにとっては死を意味するのだろう。

端的にいえば、日本のメディアは卑怯である。そこで働いている記者も卑怯者
である。卑怯の先には憎悪と敗北しかない。

ドイツの哲学者、カントがその著書『永遠平和のために』で喝破したように、
政治も、報道も、結局、正直に勝るそれはないのである。

〈しかし、佐藤氏のような批判者でなければ、いったいどこの誰がこれほどの
大事故の責任者を突き止められるだろう。菅首相が先週の水曜日に出した声明
は、まがりなりにも希望を持たせるものだった。彼は、監督官庁を解体し、日
本の電力会社の地方独占を破り、エネルギー政策を「根本から見直す」つもり
だと表明したのである。

グリーン・アクションの活動家、アイリーン・美緒子・スミス氏は、これらの
約束は信用しないようだ。あらゆる事故が起こるたびに、常々日本が対処して
きたのと同じことになるのではないかと彼女は危惧している。「事故を調査す
る目的で委員会がつくられるのですが、その委員会には、またいつもと同じ人
間が座っているのです」と〉(翻訳・梶川ゆう)

今頃になって検証をしているような政府(委員会)も、そしてメディア(TB
S)も、死んだも同然である。

遅すぎる報道・読売新聞「世田谷で原発由来ストロンチウム89…3月採取」

世田谷で原発由来ストロンチウム89…3月採取

 東京都世田谷区で今年3月に採取された大気中から、東京電力福島第一原子力発電所の事故で飛散したとみられる放射性物質のストロンチウム89が検出されたことが26日、都への取材でわかった。

 文部科学省によると、ストロンチウム89が検出されるのは関東地方では初めて。

 都は3月15日に同区の都立産業技術研究センターで大気を採取し、浮遊物質の詳細検査を実施。その結果、1立方メートルあたり0・1ベクレルの微量のストロンチウム89を検出したという。ストロンチウム89は半減期が50日と短いため、原発事故由来とみられる。半減期が約30年のストロンチウム90は、すでに都内や横浜市で微量ながら検出されていた。ストロンチウムは体内に取り込まれると骨に蓄積されやすいが、都は「ごく微量なので人体への影響はない」としている。

2011年12月26日16時06分 読売新聞)

山形県の瓦礫焼却

山形市の定時降下物(12月21日~22日)からセシウム 福島市の約14倍Merx

山形市の定時降下物(12月21日~22日)からセシウム  福島市の約14倍
[文部科学省-定時降下物のモニタリング(クリックで拡大)]
文部科学省が公表している放射線モニタリング情報の定時降下物の調査結果によると、平成23年12月21日9時~12月22日9時採取に採取された山形市の定時降下物から放射性セシウムが134、137をあわせて41MBq/km2(メガベクレル/km2)検出されている。47都道府県で21日~22日の降下物から放射性セシウムが検出されているのは山形市と福島市だけで、山形市は福島市の2.9MBq/km2よりも多く、約14倍。

既に震災瓦礫の受け入れ、焼却を開始
既に震災瓦礫を受け入れて焼却を開始している山形県は知事、職員ともに放射能防御に対する意識は低く、東日本大震災の復興支援に関する会議でまとめられた意見書では、「いち早く瓦礫を動かすべき。その瓦礫は相当な量になるため、現実的には分別は運んでから。港を使えば迅速に処理ができる。」などという考えが述べられているが、放射性物質に対する言及はなされていない。
[以下の意見概要の全文:(pdfファイル)-pref.yamagata.jp]


エフゲーニャ・ステパノワ医学博士・講演

チェルノブイリとウクライナの子供たちの健康 (25年の観察結果)

エフゲーニャ・ステパノワ医学博士
ウクライナ放射線医学 研究センター


1986年4月26日の深夜、チェルノブイリ原子力発電所の第4原子炉で爆発が起こり、その結果核事故がおきた。国際評価によるとこのチェルノブイリ事故はレベル7(深刻な事故)と分類されている。
  

結果

・出力が急激に増加(1000倍に)。
・炉心と原子炉の格納容器が崩壊、火事が発生。
・高度2000メートルまでの大気中に放射性物質が放出。
・放射能沈殿物として放射性物質が降下。 主に放射性物質の放出は10日間継続
・全体の放射性物質の放出量 14 x 1018 Bq


事故原因

.非常用システムがOFF。
.技術を守っていなかった。
.原子炉の構造が不安定であった。


熱した原子炉に投下されたもの                                                                              2400トン  鉛                                                                1800 トン 砂と粘土                                                               600トン   ドロマイト(苦灰石)                                                        40 トン   ホウ素化合物
                                                                           .ヘリコプター乗組員にとって大きな放射能リスクをもたらすこの方法の効果は高いものではない。その第一の原因としては炉心への投下精度が低かったことがあげられる。

5時迄に、(発生から)3時間後に火事は鎮火

4月26日の放射能レベルは毎時100ミリレントゲンに達し、そのためにチェルノブイリ原子力発電所から4km離れたプリピャチ市住民を避難させる決定がされた。
4月26日深夜避難のために1100台のバスと3本の列車が準備された。
4月27日14時プリピャチ市住民の避難が始まった。                                             3時間(!)で市から45000人が避難、うち17000人が子供であった。 事故直後、チェルノブイリ原子力発電所の30km圏内の住民が避難した。避難は適切で住民保護の政策は正しかった。この策をとったことにより約10000人・Svの被ばく線量を防ぐことができ、放射線の確定的影響の大量発生を避けることができた。

1986年末まで188の居住区域から11万6000人が移転、さらに1993年末までに全部で23万人が移転した。

事故の規模が明らかになるにしたがって汚染居住地域・30km圏内、(>555kBq/m2)からの移転がおこなわれた。

セシウム137による汚染 > 37 кBq/m2  

 国の面積(km2)   

.ロシア 57,900
.ベラルーシ 46,500
.ウクライナ 41,900
.スウェーデン 12,000
.フィンランド 11,500
.オーストリア 8,600
.ノルウェー 5,200
.ブルガリア 4,800
.スイス 1,300
.ギリシャ 1,200


事故当初放射能状況は、第一に半減期の短い核種の崩壊プロセスによって決まった。半減期の短い核種の中で重要な役割を演じたのが放射性ヨウ素であった。その後線量負荷において支配的な役割を果たしたのが半減期の長い核種であった。現在住民の「事故」被ばくの主たる被ばく源となっているのはセシウム137で、セシウム137は総線量の90-95%を占めている。

ウクライナでは放射性セシウムの汚染度にしたがって4つの地域区別分けがおこなわれた:
1. 立ち入り禁止区域 (チェルノブイリ原子力発電所から30km圏、 150万Bq/ m2 以上)
2. 強制(義務)移住区域 >555 kBq/ m2 (年間線量 >5 mSv/年)
3. 保証自主移住区域 185 . 555 kBq/ m2 (年間線量 >1 mSv/年)
4. 放射線環境強化管理区域 37 . 185 kBq/ m2 (年間線量 >0.5 mSv/年).


.ウクライナの法律により、チェルノブイリ事故による住民のリスクグループ(1986年生まれの子供)に対する追加被ばく線量は 1 mSv/年、全生涯で 70 mSvを超えてはならないとされている。
.立ち入り禁止区域の境界地帯は、100年間は人が居住するには適さない。
.第2から第4区域に含まれる居住区域の数は、放射性物質の崩壊プロセスにより時間 が経過するとともに、徐々に減少していく。

ウクライナではチェルノブイリ事故の被災者を登録のために4つのグループに分けている。:
1)事故処理作業にあたった人
2) プリピャチ市と30km圏内から避難した人
3) 放射性物質で汚染された地域に居住している人
4) 被ばくした両親から生まれた子供

被ばくした住民グループの中で特にリスクグループは、子供である。
理由は放射能ファクターの作用に対して成長・発達している体が大きく反応するからである。

今回の報告ではチェルノブイリ事故の影響が下記のカテゴリーの子供の健康に与える影響について取り上げる。     

プリピャチ市と30km圏内から避難した子供                                               汚染地域に居住している子供
胎内被ばくの子供
被ばくした両親から生まれた子供


1986年 ヨウ素の危険性が高い時期における子供の体の反応

「立ち入り禁止区域」から避難した子供たちが訴えた症状

.喉がいがらっぽい、口の中で金属の味がする - 55,7%,
.咳 -31.1%,
.首部分の痛み-29.8%,
.疲れやすい-50.1%,
.頭痛 -39.3%,
.めまい -27.8%,
.不眠 -18.0%,
.失神 -9.8%,
.吐き気と嘔吐 -8.0%,
.便通不順-6.9%.


体の最も典型的な反応:
.呼吸器症候群 -31.1%;
.リンパ組織の過形成 -32.2%;
.胃腸管活動障害 -9.4%;
.心臓血管系の機能障害 -18.0%;
.血液データの変化 -34.2%;
.バセドー氏病の臨床的兆候がない「甲状腺肥大」 - 6.8% 
.肝臓と脾臓肥大                                                                                                      


1987-1991 年                                                                                                   この時期子供達の不調を訴える回数が増加した:
.極度の疲労 82.7%,
.衰弱 71.7%,
.神経不安定 . 65.9%,
.頭痛 . 52.0%,
.めまい 40.3 %,
.不眠 . 29.6 %,
.胃腸不調 . 52.8%,
.心臓あたりの不快感 26.4%.

臨床検査の際に様々な器官などの機能障害が見られた:
.動脈圧の不安定 . 70.3%;
.肺の吸気機能障害 . 53.5%;
.心臓の機能変化 . 40.0%;
.胃の機能障害 . 39.6%;
.運動後の疲れやすさ . 31.5%;
.免疫力の低下-60~70%
.肝臓機能の一時的障害 . 52.8%.

機能障害が慢性病への移行が30km圏内から避難した子供にも、放射能汚染地域の住民にも見られた。この悪い傾向は、子供が18歳になるまで続いた。

最悪な進展傾向は甲状腺に高い被ばく線量をうけた子供にみられる。このような子供のうち、健康な子供の割合は、2.8%を超えていない。

実際に健康な子供の割合は1986年から1987年の27.5%から2005年の 7.2 % にまで減少した。
慢性疾患をもつ子供の数は1986年から1987年の 8.4 % から2005年には 77.8%にまで増加した。

プリピャチ市から避難した子供にみられた病気疾患レベルは、事故後ずっと比較対象グループより高くなっており、2003年の健康管理の際には避難グループの疾患レベルは対照標準グループと比べて3倍高くなっている。


健康検診管理システムの最初の時期と比べると、もっとも大きな変化は下記の疾患にみることができる。
消化器官の疾患 (グラフ左) 神経系疾患 (グラフ中央) 血液循環系疾患 (グラフ右)  (省略)


避難した子供および青少年に呼吸器疾患レベルに関して悪い傾向がみられる。
赤色:慢性気管支炎 黄色:喘息 緑色:気管支炎 (省略)

チェルノブイリ事故の結果、ウクライナには汚染された地域があり、このような地域には250万人以上が住んでいる。しかもその住民の4分の1は子供である。
農産物、乳製品、肉、魚など食品を通じてセシウム137をはじめとした放射性核種が摂取されるのに伴い、内部被ばく長く続く被ばく源が形成された。

食料の内部被ばく線量への関与レベルは 98-99 %で、内訳は下記の通りである。

- 牛乳- 線量の80 %
-肉 - 5-10 %
- じゃがいも - 5-6 %
- 野菜 - 1-6 %
- 魚 - 1.2 %;
- きのこ類 - 2-12.5 %
- パン - 1-1.4 %

ジトミーロフ州、キーロフ州、ロヴェンスク州の個人経営農家では「汚染されていない」乳製品の入手は非常に困難であり、現在でも緊急に解決を要する問題のひとつとなっている。


放射性物質セシウム137は、消化器の粘膜と臓器の実質器官(肝臓、脾臓)に直接影響を与える。

一日の食事量が不規則で、さらにセシウム137が体内に長期間にわたって摂取されることは、胃腸管の羅病率が常に上昇しつづけている原因のひとつである。

汚染地域の子供には消化器系の疾患が明確に増加している。

汚染度 > 555kBq/m2 以上の区域に居住している子供は、比較的汚染の少ない地域に居住している子供と比較して、下記の病気がより多く確認された。

.呼吸器疾患(2.0倍)
.自立神経血管機能障害 (1.52倍)
.肝臓組織の筋腫化 (2.3
倍)
. 血液系障害 (
2.5倍)
.免疫障害 (1.8倍).


子供に見られる慢性疾患の特徴

・以前には子供には見られなかった病気が 子供にも見られるようになった
・複数の病気にかかりやすくなった
・長く続き、再発する傾向があった
治療効果が低い



ウクライナ医学アカデミーの内分泌・物質代謝研究所のデータによると、甲状腺ガンにかかった子供の疾患率の上昇は、1989年からはじまった。疾患例数は1990年から2009年まで次第に増加し、2009年は463例であった。

1986年から2008年までこの研究所では甲状腺ガンと診断された患者6049人が手術をうけた。その中の4480人 (74.1%) は事故当時子供で(年齢 0 . 14才) 、1569人(25.9%) は未成年者 (年齢 15 . 18 才)であった.

胎内被曝の影響評価は、次の子供のグループでおこなわれた:

I グループ . 事故当時プリピャチ市から避難した妊娠女性から生まれた子供 。

II グループ . 事故当時強化放射線管理地域(第2区域:>555kBq/㎡、年間線量>5mSv/年)に残り、住んでいた妊娠女性から生まれた子供。

対照標準グループとしては放射線状況が良好な地域に住んでいた1986年に生まれた子供。

線量負荷:

・第Ⅰ、第Ⅱグループの胎児の甲状腺に対する線量負荷は確実な差異はなく、その線量は 0.0から3.35Gyとなっている。

胎児の総被ばく線量は、 4.2から376.0 mSvとなっている。

 汚染地域に住んでおり、18才の年齢まで蓄積された子供の総被曝線量と赤色骨髄 の被ばく線量:

 ・総被ばく線量 10.5-72.1 mSv

 ・赤色骨髄被ばく線量 -14.1-81.7 mSv


子供の身体発達の障害頻度は、胎児の甲状腺の被ばく線量と結びついている。            緑:対照標準グループ  横軸:線量 (Gy) (省略)

子供の甲状腺の障害が胎児発達期において放射性ヨウ素の被ばく線量と依存関係にあることが指摘された。                                                            

黄:I グループ 赤: IIグループ 横軸:線量Gy 縦軸:%(省略)

他の危険ファクターに放射線のリスクが加わったために、異常発達の数が増加した。

子供の複数の小さな異常発達の数と総被ばく線量(R=0.61)と正の相関関係があること、また被ばく時(R= -0.53)の胎児の妊娠年齢との間には負の相関関係があることがあきらかになった。


胎内被ばくした子供にみられる染色体異常の頻度は、胎児の赤色骨髄の被ばく線量と依存関係があると判明。
縦軸:染色体異常の頻度 横軸:赤色骨髄に対する等価線量 (省略)
 

被ばくした両親から生まれた子供たちに見られる特徴:
                                                               

・安定的に高い羅病率、羅病率はここ5年間でウクライナのデータ(1032.90 . 1335.83 ‰)より上回っており、 1426.78 . 1587.40 ‰となっている。 
                                                                         ・実際に健康な子供の数は少なく、5.0 . 9.2%となっている。対照標準グループではこの数字は 18.61-24.60%となっている。

ウクライナの国家登録簿には1986年に事故処理作業者から生まれた子供13,136 人おり、そのうち 1,190人の子供が、先天性発達障害として登録されている。(1000人当たり90.6 人)

先天性発達障害がもっとも多いのは、事故後初期に生まれた子供である。父親が放射能ファクターとの接触をやめてからの時間がたつにつれて、先天性発達障害をもつ子供の数は減少した。 1986年の事故処理作業者から生まれた子供に見られる先天性発達障害頻度 (‰) ( 省略)


W. Werteleckiのデータによると、ロヴェンスク州の汚染地域で生まれた子供には神経管障害が高い頻度でみられる。 これはヨーロッパ諸国のこの障害の頻度( 10000人の生まれた子供に対して18.3 人)に比較してかなり高い数字となっている。放射能ファクターの影響の可能性についての予測がされており、これらの研究を今後も続ける必要性の根拠となっている。

チェルノブイリ事故処理作業の家族の検査により明らかになった事項

チェルノブイリ事故の処理作業に父親が参加したあとに妊娠および生まれた子供は、事故前に生まれた兄や姉と比べて健康面で劣っている。:

・慢性的身体疾患が事故前に生まれた子供の 35.4%に、事故後に生まれた子供の 64.7%に見られる。
・3つもしくはそれ以上の慢性疾患が事故前に生まれた子供の 23.8%に、事故後に生まれた子供の 57.3%に見られる。
・もっとも低い健康指標をもつのは1987年に生まれた子供である。1987年生まれの子供の中で事実上健康な子供の数は 1.8%である。
・父親がチェルノブイリ事故の処理作業に参加した後に生まれた子供は、 結合組織の異形成症候群などの数多くの小さな発達異常がみられる。


事故後に生まれた子供の染色体異常の頻度は、事故前に生まれた同じ家族の子供よりも高い。理由は染色体の破損が多いからである。

黄緑:事故後に生まれた子供  赤:事故前に生まれた子供  水:父親  黄:母親 (省略)


分子遺伝学研究で下記の事項が明らかになった。

チェルノブイリ原子力発電所事故後に事故処理作業者の家族に生まれた子供は、父親が事故処理作業に参加する前に生まれた兄や姉たちと比較して、DNAのマイクロサテライト部分の突然変異の増加がみられた。

Picture 1(省略)


結論:

.被災者の子供の健康状態にはかなり否定的な傾向が見られる。
.もっとも健康状態の悪いのは、甲状腺に高い被ばく線量をもつ未成年者であることが確認された。
.より幼い年齢で慢性的な疾患が確認された。同時に複数の病気にかかる傾向があり、相対的に治療しても治りにくく、再発傾向をもっている。
.胎内被ばくの子供には、健康異常、身体発達異常、体細胞の染色体異常が高い頻度でみられる。
染色体異常と胎内被ばく線量の間には依存関係があることが明らかになった。
.被ばくした両親からチェルノブイリ事故後に生まれた子供には遺伝子効果の可能性があると推測できるデータがでた。


事故の比較
                        チェルノブイリ              福島 

レベル                      7                     7

ヨウ素131              1.8 × 10(18乗) Bq                  1.5 × 10(17乗)Bq

セシウム137             8.6 × 10(16乗)Bq          1.2 × 10(16乗)Bq

被ばく線量                           85-95%                                     状況不明

福島第一発電所の事故は子供の健康に悪い影響を与えるだろうか?

チェルノブイリ原子力発電所と福島第一原子力発電所の事故はレベル7の評価をうけており、それは放射能大事故に相当する。福島第一原子力発電所の事故当時、環境に放出された放射性核種のヨウ素131とセシウム137はチェルノブイリ事故よりも若干少ないが、両者は比較しうるものである。

したがって、日本の子供たちの健康に対する影響は、チェルノブイリの子供たちに観察されるものと同じようなものでありえるかもしれない。 したがって子供たちは放射能リスクグループにいれるべきであり、幼年期およびその後も常に医学観察のもとにおかれるべきである。その目的は健康障害を防ぐこと、もしくは適切に時期をのがすことなく健康障害をみつけるためである。


チェルノブイリの教訓

1.チェルノブイリと福島第一原子力発電所の事故は、核エネルギー発電においてはもっとも起こり得ない事故でさえ起こりうることを示した。これは技術的な事故がおきた場合にそなえて国家の対応システムをかなり高いレベルで準備し、常にそのシステムを維持しておかなければならないことを証明している。
2.チェルノブイリ事故が大事故であることの認識が遅かったこと、及び住民及び環境への否定的な影響の大きさに関しての理解が足りなかったことが、住民、特に子供の健康に大きな被害をもたらした。医療当局へは時宜を得た情報はもたらされなかったし、医療当局は大きな放射能事故の医学的影響を撲滅する用意ができていなかった。ヨウ素による予防対策の実施は遅れたか、もしくは全く行われなかった。その結果甲状腺ガンの頻度が急激に増加した。特に子供が甲状腺ガンにかかった。
3.事故対策に関するしかるべきシステムが欠如していたことが、事故状況の中で処理作業にあたる用意のなかった人をチェルノブイリ原子力発電所事故の処理対策にあてるために招聘した理由だった。この決定は非効率的であり、こういった人々への健康状態への影響は正当化されるものではない。
4.事故被ばく線量の大部分は事故が厳しい状況になっている時に形成された。したがって人々への健康、特に子供の健康保護に関する行動は第一義的なものではなければならない。プリピャチ市とチェルノブイリ原子力発電所周囲30km圏内からの住民の避難は、正しいものであり、効果的だった。この避難によって住民の被ばく線量を約10000人・Svに防ぐことができた。しかしながら、若干遅かったことが原因で、最大限の効果は得ることはできなかった。効果的であったと認める措置は、1986年の5月から9月までチェルノブイリ原子力発電所から30km圏外の汚染地域から「汚染されていない」地域へ移転させたことである。その結果、子供たちの被ばく線量を30%までふせぐことができた。その後毎年子供たちは4週間以上保養施設にて健康増進をおこなっている。
5.チェルノブイリ原子力発電所事故に関して住民に遅れることなく、しかも十分客観的な情報が伝えられなかったことが、社会に社会心理面の緊張感を生み出す前提をつくりだした。避難と移住のプロセスは、時には家族関係、友人関係、倫理的・文化的価値観を破壊した。さらに、新しく住む場所に関する被災者の選択権も考慮されていなかった。チェルノブイリ事故の教訓は、住民の生活条件を相対的に変えることになる決定をくだす際には、被災者の希望を考慮する必要があることを認識しなくてはならない
6.すべての住民集団は、子供を含めて、チェルノブイリ事故後にも生涯線量レベルの80-95%を超えるような被ばく線量をうけた。この被ばく線量は「チェルノブイリの放射性核種」により形成された。したがって体内被ばく線量を低減するための策を講じる必要がある。その方法は汚染されていない農産物を、まず第一に子供の重要な食料品である牛乳を手に入れる必要がある。
7.健康にかかわるチェルノブイリに関する全ての問題は、もし被災者のモニタリング登録簿が事故後すぐに作成さていたら、より効果的に解決されたであろう。しかし、モニタリング登録簿はかなり後になってから作成された。しかしながら、その後毎年実施されている被災者に対する健康管理システムを含めて、医学モニタリングシステムは、早期の段階で疾患を発見する手段として、正当性があり、タイミングを逃すことなく十分な治療をおこなう可能性をつくリだしている。
8. 子供の健康状態の変化の原因は放射能の影響である。また放射能由来でないファクター、すなわち生活と食料条件の悪化、長期にわたる感情精神面での緊張などもその原因としてあげることができる。したがって放射能事故の悪いファクターの影響をうけた子供たちの健康を維持し、回復するための施策は、医療当局だけでなく国家政策の優先事項に他ならない。
9.住民の放射能の影響に関する知識を高めるために、また精神感情面での緊張感やストレスを軽減するために保健啓蒙活動を常に行う必要がある。また、農村地域では特に住民に対する信頼にたる情報原としての教師、医療従事者、社会福祉関係者などに対して研修プログラムを導入すべきである。

チェルノブイリの悲劇は、全人類の悲劇である。

                                                                                              


環境省「国負担で8県102市町村除染」

国負担で8県102市町村除染

12月19日 16時23分

原発事故によって拡散した放射性物質を取り除く除染について、環境省は来月施行される特別措置法に基づき、国が財政負担をして除染を行う地域のある自治体として、東北地方と関東地方の8つの県の102の市町村を指定することを決めました。

放射性物質を取り除く除染については、来年1月に施行される特別措置法で、年間の被ばく線量が1ミリシーベルト以上、1時間当たりの放射線量にすると0.23マイクロシーベルト以上の地域を含む自治体を「汚染状況重点調査地域」に指定し、各自治体が国の財政負担を受けて除染を行うことになっています。環境省は、19日、岩手県の、3つの市と町、宮城県の8つの市と町、福島県の40の市町村、茨城県の20の市町村、栃木県の8つの市と町、群馬県の12の市町村、埼玉県の2つの市、千葉県の9つの市の合わせて8つの県の102の市町村を「汚染状況重点調査地域」に指定することを決めました。こうした自治体では、今後、詳しい放射線量を測定して実際に除染を行う地域を絞り込み、計画を立てた上で作業を行うことになります。一方、福島県の警戒区域と、年間の被ばく線量が20ミリシーベルト以上となる計画的避難区域については「除染特別地域」と定めて、国が直接除染を行うことになっており、11の市町村の地域を指定することを決めました。この地域では、国が効果的な除染方法を探るためのモデル事業を先月から行っているほか、来月末からは道路や電気・水道といったインフラ設備を中心に本格的な除染を始める予定です。原発事故から9か月がたってようやく本格的な除染を行う仕組みが整うことになりますが、住民が安心して暮らせる程度まで放射線量を下げることができるかどうかや、各市町村のどの地域を実際の除染の対象とするか、それに除染に伴って出る大量の土を保管する場所をどう確保するかなどが課題となります。


高知県ホームページ「土佐湾沖で漁獲されたカツオの放射性物質の検査結果」

土佐湾沖で漁獲されたカツオの放射性物質の検査結果

背景

 カツオは、高知市での一世帯当たり消費量が全国一位である「高知県の魚」です。
土佐湾沖で漁獲される水産物の安全性は確保されていると考えておりますが、秋頃に本県沖へ回遊する「戻りガツオ」に対する県民の皆様の関心が高いことから、放射性物質の検査を7月から当分の間毎月一回行うことにしました。

12月14日の検査結果について

 12月13日に入手したカツオでは、セシウム-134及びセシウム137が微量検出されましたが、今回検出された値は国の暫定基準値の230分の1という極々微量であり、摂取しても健康には全く問題ありません。

検査結果一覧表

                                                           単位:Bq(ベクレル)/kg

試料採取場所試料入手日

ヨウ素-131

セシウム-134

セシウム-137

放射性セシウム
合計
カツオ土佐湾沖平成23年7月14日

検出されず

(検出下限値:0.63)

検出されず

(検出下限値:0.73)

検出されず

(検出下限値:0.93)

カツオ土佐湾沖平成23年8月8日

検出されず

(検出下限値:0.76)

検出されず

(検出下限値:0.68)

検出されず

(検出下限値:0.75)

カツオ土佐湾沖

平成23年9月13日

検出されず

(検出下限値:0.76)

検出されず

(検出下限値:0.73)

検出されず

(検出下限値:0.69)

カツオ土佐湾沖

平成23年10月12日

検出されず

(検出下限値:0.68)

検出されず

(検出下限値:0.72)

検出されず

(検出下限値:0.64)

カツオ土佐湾沖

平成23年11月15日

検出されず

(検出下限値:0.64)

検出されず

(検出下限値:0.67)

検出されず

(検出下限値:0.97)

カツオ土佐湾沖

平成23年12月13日

検出されず

(検出下限値:0.64)

0.77

(検出下限値:0.75)

1.4

(検出下限値:0.83)

2.17

  ※国の魚類摂取制限に関する暫定規制値・・・放射性ヨウ素:2,000Bq/kg、放射性セシウム合計:500Bq/kg

※検出下限値とは・・・測定において検出できる最小値のこと。測定方法の特性により、その値は毎回若干異なります。 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            


東京新聞 「保安院 海への汚染水 ゼロ扱い 」

2011年12月16日

 福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。

 原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計算される。

 しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているのが見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。

 これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。

 試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。

 今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。

 さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化して海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出を見送る方針だ。

 保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。

 「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具体的な期間は「これからの議論」とあいまい。

 今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続けるという。

東京新聞


グリーンピース「冬のお魚調査(東海・関西編)・魚介類加工品調査」

調査結果
冬のお魚調査(東海・関西編)

第1回目と2回目調査の関東・三陸地方で購入した魚介類商品と比較して放射線値は比較的低く、検出サンプル数も低い結果となりましたが(75サンプル中5サンプル)、東日本太平洋側の海域だけでなく、兵庫県を産地として表示する魚介類からも、放射能汚染が確認されました。

  • イトーヨーカドーを除く大手スーパー5社中4社で、魚介類商品から放射性物質(セシウム134、137)を検出し、東海・関西地方にも放射能汚染された魚介類商品が出回っていることが明らかになりました。
  • 汚染度が最も高かった検体はユニー(アピタ)名南店で購入した茨城県産の「ワカサギ」で、1キログラム当たり57.2ベクレルでした。
  • ユニー(アピタ)名南店で購入した兵庫県産のアンコウから、1キログラム当たり16.2ベクレル(セシウム134、137)が検出され、東日本太平洋側の海域以外のエリアを産地として表示する魚介類も、放射能汚染されていることが確認されました。
    ただし現状の穴だらけの表示制度では、このアンコウが実際に兵庫県で漁獲されたものなのか、別の海域で漁獲され兵庫県にある漁港に水揚げされたものなのか、判断することができません
  • 第1回目と2回目調査は関東・三陸地方の店舗で販売されている商品を購入し、ブリ、カツオ、マダラ、メバチマグロなど、大型魚からの放射性物質の検出が目立ちました。
    しかし今回の東海・関西地方での調査では、マダラ(北海道産)、サケ(宮城県産)、サンマ(岩手県産・千葉県産)、カツオ(宮城県産)、などからは放射性物質を検出しませんでした(検出限界未満5Bq/kg未満)。

調査結果

魚介類加工品調査

第2回調査で「さば水煮」の缶詰から放射性物質が検出されたことを受け、新たに都内で缶詰など魚介類を原料とする加工品を購入し、調査しました。

結果、15サンプル中1サンプルから放射能汚染が確認されました。

放射性物質が検出されたのは前回調査と同様「さば水煮」の缶詰(販売者は異なる)で、1キログラム当たり7ベクレルのセシウム137が検出されました。
加工商品は鮮魚と比較して表示義務が甘く、この缶詰の原料が何サバなのかも、いつどの海域で獲られた魚なのかも購入時に把握できません
汚染を検出した缶詰情報(販売者には既に調査結果をお知らせしています。)

  • 商品名:さば水煮
  • 販売者:日本水産株式会社(ニッスイ)
  • 原材料:さば、食塩
  • 賞味期限・製造所固有記号:AM10/5 2014.9.10 (製造日または加工日、さばの種類の明記はなし)

調査の背景

  • 東京電力福島第一原子力発電所の事故により、魚介類が放射能汚染され続けている
  • 流通規制の強化や食品安全の保障は、本来であれば政府が早急に行うべきだが、行政指導が消費者の安全性を確保しきれていない
  • グリーンピースは政府に対し迅速かつ適切な対応を要請しているが、依然として政府の対応がきわめて遅いままで、東京電力による情報開示は満足に進まず、その間に大量の魚介類が広く流通され、消費者の口に入っている
    この現状で、魚介類消費における安心確保に最も敏感に動き出せるのは、流通経路の中で消費者に一番近い位置にあり、消費者にとって最大の魚介類購入先である、大手スーパーマーケット
  • 2011年12月14日現在、大手スーパーマーケットで、魚介類の自主検査の実施、検査結果の公開、自主流通基準の策定を公表している企業は、イオン一社のみしかない。
  • 自主検査の実施や、流通規制の策定を行っていない大手スーパーマーケットが拠り所としている行政指導は、消費者の安全性を確保しきれるものではない
  • 多くの消費者は「暫定規制値以下かどうか」だけではなく、実際に魚介類がどれほど汚染されているのか、その具体的なベクレル値を知りたがっている
  • 魚介類商品は、一部を除きトレーサビリティー・システムが確立されていない
    いつどこで誰が獲ったものなのか、商品から追跡することができない。
  • 魚介類は産地表示義務が甘く、実際に産地表示された海域で漁獲されたものなのか、別の海域で漁獲され産地表示された県にある漁港に水揚げされたものなのか、表示から判断することができない
  • 加工商品は鮮魚と比較して表示に一層抜け穴が多く、今回調査した缶詰の原料も、いつどの海域で獲られた魚なのかも購入時に把握できない。

調査内容

冬のお魚調査(東海・関西編)

  • 調査期間: 2011年11月9日~12月6日
  • 対象スーパーマーケット: イオン、イトーヨーカドー、ユニー(アピタ)、ダイエー、西友
  • 対象地域: 愛知県、奈良県、大阪府、奈良県、京都府の店舗
  • 対象サンプル: 季節の魚で、東日本太平洋側を産地とする魚介類商品と、販売地近海を産地とする魚介類商品を中心に、各スーパーマーケットで15商品ずつ購入。
    ※今回は、東海・関西地方在住の"市民調査員"がボランティアでサンプル購入にご協力してくださいました。
  • 検査方法: 第三者機関で、ゲルマニウム半導体検出器を用いて検査。

加工品調査

  • 調査期間: 2011年11月13日~11月29日
  • 東京都内で購入
  • 対象サンプル: 魚介類の加工品商品
  • 検査方法: 第三者機関で、ゲルマニウム半導体検出器を用いて検査。

グリーンピースの活動

東日本大震災以降、グリーンピースは多くの消費者の方々と共に、政府と大手スーパーマーケットと対話を続け、魚介類商品における放射能汚染の対応強化を要請してきました。 具体的要請は以下の3点:

  1. 魚介類商品の独自の放射能検査を実施し、その結果を公表することで、消費者が選択購入できる十分な情報を提供する。
  2. 政府が定める暫定規制値を安全基準とせず、独自の流通基準を設け公表することで、消費者に安心を提供する。
  3. 水産庁による「東日本沖の太平洋側で獲られる、魚介類商品の産地表示を『水揚げ港』ではなく『漁獲海域』に徹底する」よう求める通知に従い、消費者に選択購入の基準を提供する。

成果

  • 2011年11月30日:西友が、魚介類商品の漁獲海域表示の厳格化と、業界団体を通じての政府への要請の実施を約束
  • 2011年11月19日:イトーヨーカドーが、魚介類商品の漁獲海域表示の厳格化を発表
  • 2011年11月8日: 最大手のイオンが、魚介類を含む食品の、放射能検査の品目数拡大と分析結果の公開、流通基準の設定と公表、漁獲海域表示の厳格化を発表
  • 2011年10月5日: イオンが、サンマやカツオなど4種の秋の魚の、放射性物質の自主検査の開始を発表
  • 2011年10月1日: 水産庁が、東日本沖の太平洋側で獲られる魚介類の産地表示について、「水揚げ港」ではなく「漁獲海域」の徹底を求める通知を出す。
 私たち消費者ができること

業界最大手イオンは、グリーンピースの要請に加え、6,000件の消費者の声を受けて変わりました
他の大手スーパーマーケットも政府ではなく消費者の方向を向いて放射線汚染問題に取り組むよう、毎日行くスーパーマーケットや変わってほしいスーパーマーケットに「お客様の声」を届け、その成長をサポートしてください!


早川由紀夫「チェルノブイリとフクシマの汚染地図による「比較」

フクシマとチェルノブイリの比較(改訂版)

CHER22.jpg
チェルノブイリは、2006年報告書に掲載された地図を色変更したものです。いただいたコメントによると、原図は1989年作だそうです。事故は1986年4月でした。

印刷用PDFファイル
・4月15日発表の「フクシマとチェルノブイリの比較(初版)」

(参考)フクシマのシーベルトからベクレルを計算する表
cherfuku1210.png 1125mextmaps.jpg文科省航空機モニタリング(Cs137)