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北海道一の美乳 (ニペソツ林道より)
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おっぱい山
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登山口へ向かうシンノスケ三の沢林道は小さな標識が出ているものの目標が少なく分かりづらい。
糠平方面からはニペソツ・石狩岳への林道標識から北へ約4km、三国トンネルからは南へ約11km、東に入る林道である。
シンノスケ三の沢林道を道なりに走ると約4kmの土場に「西クマネシリ岳登山口」の小さな標識がある。ここから西クマネシリの南西尾根に取り付くまでは三の沢沿いに進むのだが、沢の中を進んだり道が無くなっていたりと、分かりにくく迷い易いと評判の林道であった。
覚悟して進むと地元の方達が草刈りをして下さったのか道は明瞭で、しかもこれでもかという位、ピンクテープが吊り下げられている。
お陰で迷う心配は皆無であった。有り難うございます。
沢沿いの道
薄暗い林道、沢の音が響き、トラツグミの「ヒー・ヒ〜ン」という物悲しげな鳴き声の中をテープに導かれ進んでいく、おっぱい山というイメージが強いためか、母の胎内はこんな感じなのかも知れないと思った。
やがて廃屋となった小屋の横を通る。
廃屋
廃屋を過ぎ、少し行くと沢を左に分け、南西尾根に近づいていく。
下山時は左に分けた沢沿いを降りて来る事になるのだろうと概略の地形を頭に入れる。
C1200m付近から道は一二度屈曲するが、ピンクテープとケルンがあるので心配は無い。C1250mから南西尾根の右側を登り始める。
次第に傾斜は増して来るが大した事は無く、所々に咲いている花を愛でながらゆっくり足を進めた。
エゾノレイジンソウ
麗人のオッパイかなど不埒な事を思いつつ、岳樺の明るい木漏れ日の下を登る。
明るい木漏れ日の下
やがてトウゲブキの咲く右側が切れ落ちた斜面に出、林は岳樺からハイマツ帯へと変わっていく。
尾根の傾斜はかなりきついが、時間的には然程の事は無い。
この間にもチシマフウロやゴザンタチバナが元気をくれる。
ピリベツ岳との分岐に出た。
これまで標識や看板らしきものはいっさい無かったのに、黄色のハデな標識が置かれていてチョッピリ違和感が・・・。
ピリベツ分岐
取りあえず右のおっぱいである、西クマネシリ岳への道をとる。
周りの様子が、がらりと変わって岩混じりとなり、岩場の雰囲気に変わっていく。
次第に岩混じりに
不安な所は一つも無いが、足下が覗ける所にはロープが設置されていた。
とても頼れるものではなく、無い方が良い程度のものだ。
こんな所にギンリョウソウがひっそりと生えていた。
ギンリョウソウ
この岩場を登り詰めれば、高度感十分の山頂直下に出る。気持ちの良い所だ。
西側の景観は山頂よりここが優れている。
山頂はここから東に稜線を僅かに辿り、ハイマツに囲まれた場所である。
歩き出して約2時間、まだ朝7時である。
高曇りの空に日射しも薄く、遠くまで見えているのだがクッキリハッキリ、コントラストの利いた視界ではない。
それでも近くのニペソツや昨日登ったウペペサンケ山がどっしりと端座している。
ニペソツ 鋭さを潜めどっしりした印象だ
ウペペサンケ山はその大きな台形を十分に見せつけている。
大きな台形の山容、ウペペサンケ山
目を北西に転ずれば、表大雪の代表選手達がズラリと立ち並んでいる。
旭岳から白雲岳、北鎮岳、黒岳などが一つの山塊となってそびえ立って、いかにも大雪と言った情景である。
表大雪の山々 下に上川に向かう国道が走っている
そして東側にはクマネシリ岳が平らな東尾根を引いて屹立し、なかなかの迫力である。
クマネシリ岳
すぐ北側には、これから訪れる右側のおっぱいであるピリベツ岳が小型富士のような姿を見せている。
ピリベツ岳
ピリベツ岳のさらに北側には武利岳・武華岳や北見富士なども見え、広大な広がりは北国の豊かな大地を感じさせるに十分だ。
ピリベツ岳と左に表大雪、奥に武利岳・武華岳、右に北見富士など
お天気は高曇りだが、下り坂の予感。
次のピリベツ岳へ向かう事にしよう。
西クマネシリ岳山頂部の岩場を慎重に通過し、ピリベツ分岐へ戻る。
岩場にはサマニヨモギがイワブクロとともに花を咲かせていて高山の雰囲気を醸し出しいい感じ。
サマニヨモギとイワブクロ
ピリベツ岳へは両山を結ぶ吊り尾根をコルまで下って一登りだ。
コルまでの下りは結構急で帰りに再び登り返すのは気乗りがしない、出来る事なら登り返さずに対処したいと思う西クマネシリ岳からの下りである。
斜面にはトウゲブキが奇麗に咲いていて虫達を呼び集めている。
西クマネシリ岳が意外な姿を見せている。とてもオッパイには見えない不格好な姿である。
トウゲブキと西クマネシリ岳
コル付近まで降りてきた時。
湿った土に変な模様というか跡があるのに気が付いた、かがみ込んで良く見ると手のひら大の丸みを帯びた足跡である。明らかに鹿のものとは違う、しかも新しい。
まさかと思いつつ、声を出し笛を吹く。
突然、数十m位先の薮から「ザ・ザー」という音とともに右下へ下っていく激しい物音。ちょっと動くことができなかった。
あちらから避けてくれて良かった・・・!
見えなかっただけに恐さが沸き上がる、昨秋狩場山でバッタリ出くわした時よりずっと恐かった。気を取り直してコルを通過、その辺りにはクルマユリが可憐な姿を見せていた。
出会うのは、こんな可憐で可愛いのが良いな。
クルマユリ
ピリベツ岳山頂に着いた。
樹木が切れて少し開けた場所が山頂である。
低くなってきた雲が増え日差しが弱いこともあり、良く言えば静かで穏やか、少し殺風景な山頂である。
先ほど訪れた西クマネシリ岳と吊り尾根が良く見える。
こちらから見ると何の変哲もない形の山だ。
西クマネシリ岳
東側にあるクマネシリ岳に雲が掛かりだした。南クマネシリ岳の山頂も姿を隠そうとしている。
何とか周囲の景観が見られるうちに訪れられてラッキーだった。
そんな思いでピリベツ岳からの眺望を満喫する。
雲に覆われ始めたクマネシリ岳
景観そのものは西クマネシリ岳からのものと大差ある訳ではない。
ニペソツや大雪の山々にも僅かに雲が架かり始めている。
そんな表情を眺めつつ小腹を満たす。
ニペソツや大雪にも雲が架かり始めた
さあ、下山する事にしよう。
おっぱい山からの下山は、一旦西クマネシリ岳まで登り返して登山道を下るのが正規なのだろうが、西側の谷を下って登る時に通った廃屋付近に出る踏み跡があるとの情報を得ていた。
万一、踏み跡を見逃しても小さな谷である。何とかなるであろうとこの谷を降りる気でいる。
胸の谷間から一気にお臍へと下がっていくイメージなのである。山頂のすぐ下から薄い踏み跡が右下の谷へ降りているのを見つけた。
しかしここから谷に入るとトラバース気味に降りていく必要があり、踏み跡を外した後が心配だ。
そこで、コルから真っ直ぐ下へ降りるほうが安全で確実だと判断する。コルまで戻ってから丹念に様子を見ると、明らかな踏み跡が谷に向かっている。
間違いないと確信して踏み跡を辿る。
だが、50mも行かないうちに踏み跡は無くなった。
ままよと、そのまま真下へ混んだ木々をかき分け下っていく。15分位下った所でピリベツ岳方向からと思われる踏み跡と出会う。
鹿の糞が沢山落ちている踏み跡を外さないよう丁寧に辿る。
一つ、二つと赤布がぶら下がっているのを見つけ、安心する。
(大した意味もなくピンクテープが至る所に付けられているルートを通ると、こんなにまでしなくてもと常に感じるのに、疑心暗鬼になっている時は本当に安心し嬉しく思う。人間の心理なんてあやふやでか弱いものですね〜)かなり降りてきた、もう大丈夫だと緊張も幾分溶け気味になる。
沢に出た、後は沢沿いに行けば登山道に出会う筈である。
でも、そう甘くはなかった。大ブキのジャングルが待ち受けていた。
背丈ほどの大きなフキが行く手を阻む。何百mも続いている。
踏み跡も何もあったものではない。
方向と地形で大まかな進路を決め、適当にフキをかき分け下っていく。沢が行く手を遮っていた、沢沿いに行くか、渡るかで迷った。
既に斜度はなく平地に近い。登山道は近い筈と沢を渡ってみる。
渡って対岸を少し進んでみたら、そこに登山道が通っていた。
例の廃屋の少し東側であった。
おっぱい山と言うネーミングと魅力的な姿から訪れた西クマネシリ岳とピリベツ岳。
正直な感想は西クマネシリ岳に高山の雰囲気漂う気持ちの良い岩場があったけれど、他は何の変哲もない平凡な山であった。
名前や姿だけで中身を判断してはいけないという良い証左ではなかろうか。
人の評価もまさに同じであろう。この山を訪れた価値は、両山のコルから道のない谷を降りた事であった。
全体の地形を容易に判断出来る小さく単純な谷で、降りる方向も一定していたから出来たと思う。
途中で出会った踏み跡を何回か外したが、何とか計画通り帰り着くことができた。安易に同様の行動をしようとは思わないけれど、冒険心をくすぐられる面白さだった。