ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン埼玉> 記事

「自分の命で償って」死亡男性の母、涙声

2012年02月17日

写真

 首都圏の連続不審死事件で殺人罪などに問われた木嶋佳苗被告(37)の裁判員裁判の第22回公判が16日、さいたま地裁であった。不審死した安藤建三さん(当時80)の長男が現在の気持ちをつづった手紙が読み上げられ、千葉事件の審理が終了した。東京・埼玉事件の遺族の思いも法廷で明らかにされた。

◇「千葉事件」の審理終了

 いきなり住んでいた家が燃え、父の命まで奪われた。焼け跡には手足の先が見当たらず、小さくなった遺体があるだけだった

 安藤さんは2009年5月15日、全焼した自宅から遺体で見つかった。同居していた長男は突然、父親を失った胸のうちを明かし、木嶋被告に問いかけた。

 命を奪っておいて、全く責任を取らないのが許されるのか。なぜこんなことをしたのか。今の気持ち、真相を話してほしい

   ◇   ◇

 09年8月に不審死した大出嘉之さん(当時41)の母は出廷。時折、声を詰まらせながら語った。

 生涯を全うして、みとってもらいたかった。残念で無念。こんな理不尽なことがあるものか。自分が身代わりになれたら……。それが母親の気持ちです

 3人兄弟の真ん中で、ひょうきんな性格だった大出さん。亡くなる直前、母の日にエプロンをプレゼントしてくれた――。母親が思い出を語りながら涙ぐむと、裁判員らもハンカチで目頭を押さえていた。最後に声を絞り出した。

 自分の命で償ってほしい

   ◇   ◇

 東京都青梅市の自宅の寝室で不審死していた寺田隆夫さん(当時53)の姉は手紙に思いを込めた。

 許される行為でない。許されるべき人ではない

◇検察側「三つの事件共通」強調/弁護側「殺害する動機がない」

 不審死した男性3人への殺人罪のほか、詐欺罪など10事件を併合審理した今回の裁判。16日の公判で、予定されていた検察側の立証はすべて終わった。検察側はわかりやすく工夫を凝らし、一方の弁護側は疑問点を明らかにしていった。

 「婚活サイトで出会った男性から次々と金をだまし取り、関係を断ち切るために練炭自殺を装って殺害した」。検察側は三つの殺人事件が共通していることを強調。いずれも木嶋被告が関与している、とした。

 検察側の申請で延べ59人の証人が出廷し、現場の様子や薬物の鑑定結果などについて証言。被害者との間でやりとりされた大量のメールも公開した。検察側は「立証は十分にできた」と自信をのぞかせる。

 「疑わしい事件が三つあるから有罪とはならない」。1月10日の初公判で、弁護側は検察側の狙いに対し、こう反論した。一つひとつの事件で疑問点を挙げ、3人とも殺害していないと立証する戦略だ。

 弁護側は、木嶋被告が「経済的に援助してくれる男性」を結婚相手の条件にしていた、と指摘。同時期に複数の男性と交際していたことや、金品を受け取っていたことを認めたうえで、「殺害する動機がない」と結論づけた。

 17日からは、捜査段階から黙秘を続けてきた木嶋被告が、自ら語る被告人質問が始まる。

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり