工場排水で水質が悪化した尼崎市臨海部の尼崎運河を「青い海」に戻そうと今月、水質浄化施設が稼働した。運河の水をくみ上げ、自然界の貝類や海藻を利用して浄化を図る。行政と大学が連携し、環境学習や調査の場としても応用。全国的にも珍しい試みで、「工都尼崎」を支えた運河に再び人が集う光景を復活させる。(横田良平)
尼崎運河は高度成長期に多数の船が往来した。その後、工場排水が流れ込み、リンや窒素といった栄養塩が増えた。海抜ゼロメートル地帯を守る防潮堤の影響で大阪湾と遮断され、水が停滞。夏場は植物プランクトンが大量繁殖し、赤潮が発生する。水深2メートル以下では酸素不足で植物や魚の死骸が分解されず、海底にヘドロ状に堆積している。
2008年から徳島大の上月康則教授(生態系工学)らを中心に実証実験がスタート。貝や海藻を使って窒素やリンの除去などを進め、一定の効果を得たという。
今回の施設は実験の結果を踏まえたもの。東西約35メートル、南北約10メートルにわたって水をくみ上げ、貝類で汚濁物を除去。藻類をめぐらせた約60メートルの水路を設け、リンなどを取り除く。
浄化した水は浅場に流して、アサリやヨシなどの動植物の生態環境を整える。使用した貝類や藻類は回収して堆肥化する計画だ。
管理は兵庫県尼崎港管理事務所が担う。徳島大や地元の中学、高校も参加し、合同で清掃や生物観察会などに取り組む。徳島大の山中亮一講師(38)は「この技術は世界中で応用できる。市民も参加する水質浄化施設にしたい」と話している。
(2012/01/29 14:00)
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