'12/2/23
引寺被告、手紙で遺族に金の差し入れ要求 マツダ暴走求刑公判
マツダ工場暴走事件で、従業員12人をはねたとして殺人などの罪に問われた同社元期間社員の引寺(ひきじ)利明被告(44)の裁判員裁判の求刑公判が24日、広島地裁で開かれる。22日には、遺族感情を逆なでするかのような被告の手紙が証拠採用された。検察側は死刑求刑も視野に厳しい刑を迫る見通しだ。弁護側は「犯行時は心神喪失状態」として全面無罪を訴える。
この日の審理では、引寺被告が亡くなった浜田博志さん=当時(39)=の妻に宛てた手紙が証拠採用された。「わしが旦那を消したことで、あんたもすっきりしとるじゃろ」「100万ほど差し入れてくれ」などと記述。勾留先から検察を通じて送ろうとしたという。
この手紙をめぐっては、検察側が16日の被告人質問で真意を尋ねた。引寺被告は「マツダ正社員の生活は、派遣切りの苦しみ、悲しみで成り立っていると言いたかった」と説明。「手紙を書くのにちゅうちょはなかった」とした。
また翌17日にあった鑑定人尋問では、医師が「被告には妄想性障害の精神疾患がある」と指摘。被害者や遺族をやゆするような言動は「障害のためか、もともとの厭世(えんせい)的な性格なのか分からない」と述べている。
検察側は被告の刑事責任能力について、公判で認める証言をした精神科医2人の鑑定結果を踏まえ「完全責任能力があった」と主張する。弁護側が否定する殺意は、被告自身が公判で「殺してやろうという思いが強かった」と言及した。
責任能力や殺意が認められれば、殺人1人、殺人未遂11人の無差別殺傷事件となり、死刑求刑の可能性はある。
法廷には、12人の被害者のうち9人が出廷。理不尽な犯行動機を述べる被告に対し、一様に厳刑を求めた。24日には、浜田さんの遺族による意見陳述も予定されている。検察側はこうした処罰感情や事件の社会的影響の大きさなども考慮した上で、求刑に臨む。