現職の東電社員でありながら議員もやっている「東電社員議員」は、東京がもっとも多く4人を数える。4
人とも「東電に勤務している」とのことで、1000万円前後の給料を受け取っているとみられる。
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東京電力に社員として籍を置きながら地方議会の議員を兼務する「東電社員議員」が、10都県議会で少なくとも20人いることが筆者の調査でわかった。東電広報部も認めた。このうちの大半に対して、年1千万円前後の給料が東電から今も支払われており、健康保険や年金の企業負担分を含めると、東電の人件費支出は年間で2~3億円となる。「議員活動は個人の問題」と東電広報部は説明するが、東電批判や脱原発を訴えた議員は皆無で、全員が、原発推進を掲げる東電労組系の政治団体から献金を受けている。税金のように徴収される電気料金を原資に、東電が東電のために“東電工作員”を組織的に地方議会へと送り込んでいる疑いが極めて濃厚となった。
【Digest】
◇東電社員議員20人全リスト
◇給料は県1本――天野千葉県議がやっと回答
◇民主以外「元社員だと思っていた」杉並区議会
◇石黒練馬区議「いいです、いいです(切)」の横柄ぶり
◇新人石黒氏に最多献金1500万円
◇原発に「大きく期待」の相澤八王子市議
◇「早く実現できるプルトニウム利用を」と相澤氏
◇東電社員・OB議員回答状況一覧
◇東電労組団体から社員議員へ献金“計1億円”一覧
◇ 東電社員議員20人全リスト
現職社員であることを東電広報部が認めた地方議員は、次の20人である(カッコ内は直近の選挙時期)。
【東京】=4人
●安斉昭 杉並区議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
●相澤耕太 八王子市議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
●大石富巳夫 立川市議会議員=民主党・2期目(2010年6月)
●石黒達男 練馬区議会議=民主党・1期目(2011年4月)
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【神奈川】=3人
●石渡由紀夫 横浜市議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
●山田益男 川崎市議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
●井原義雄 小田原市議会議員=無所属・4期目(2011年4月)
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【千葉】=2人
●天野行雄 千葉県議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
●吉田峰行 市原市議会議員=無所属・1期目(2011年6月)
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【埼玉】=2人
●矢島章好 春日部市議会議員=民主党・1期目(2010年4月)
●黒澤三千夫 熊谷市議会議員=民主党・2期目(2011年4月)
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【茨城】=2人
●佐藤光雄 茨城県議会議員=民主党・2期目(2010年12月)※元水戸市議
●小室正己 水戸市議会議員=民主党・2期目(2011年5月)
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【群馬】=2人
●角田修一 前橋市議会議員=無所属・1期目(2009年2月)
●山田光次 高山村村議会議員=無所属・5期目(2011年4月)
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【福島】=2人
●高萩文孝 双葉町議会議員=無所属・2期目(2011年11月)
●加藤良一 大熊町議会議員=無所属・2期目(2011年11月)
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【栃木】=1人
●駒場昭夫 宇都宮市議会議員=無所属・2期目(2011年7月)
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【新潟】=1人
●相澤宗一 柏崎市議会議員=無所属・1期目(2011年4月)
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【山梨】=1人
●卯月政人 大月市議会議員=無所属・1期目(2011年7月)
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このほか、現職東電社員として議員をやっているうちに会社のほうを定年退職し、現在は東電OBの議員というケースが2つある。
【千葉】
●大沢久 船橋市議会議員=無所属・8期目(2011年4月)
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【静岡】
●鈴木秀郷 沼津市議会議員=無所属・7期目(2011年4月)
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上の社員議員らが東電から給料をもらっているか否か、あるいは休職中なのか、という点については、東電広報部は「プライバシー」にかかわるとして回答しなかった。政治家とカネの問題がなぜプライバシーなのかはわからない。
安斉昭・杉並区議の件で問い合わせた際には、給料を支給している旨答えたのだが、その後は社員籍の有無以外はいっさい答えなくなってしまった。安斉氏のプライバシーが侵害されたとも思えないので、回答したくないための単なる口実にすぎないと筆者は考えている。
このほか東電OBで茨城県那珂市議の間宮一氏がいる。現在はOB社員だが、過去に市議と現職社員を兼任した時期があったとも考えられる。東電は回答を拒んでおり、現在、本人に連絡をとっているところだ。
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千葉県議の天野行雄氏は、再三の問い合わせに対してようやく回答した。「(報酬は)県のほう一本」とのことである。休職中ということになるが、なぜ当初から明言しなかったのかは不明である。年金や健康保険の掛け金は会社が払っている可能性がある。 |
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◇給料は県1本――天野千葉県議がやっと回答
さて、リストにあげた22人に対して、1月から2月にかけてそれぞれ文書や電話で取材を試みた。その結果、「取材はいっさいお断りします」と答えた安斉氏を含めて、何らかの反応があったのは8人。残りの14人はなしのつぶてであった。
回答の内容を紹介する前に、すでに3度にわたって報告してきた千葉県議会議員・天野行雄氏と杉並区議会議員の安斉昭氏について、あらたにわかった点を報告しておこう。
まず天野行雄氏である.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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杉並区議会の議員のうち、安斉昭氏が現職東電社員であることを知っていたのは一部の自民党議員と民主党会派だけとみられる。民主党会派はそれを公にすることなく安斉氏を監査委員に推薦した。自民・民主系議員のなかでの問題意識は希薄だ。 |
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東電との関係に関する質問を黙殺し続けている佐藤光雄・茨城県議。現在は休職中とみられるが、水戸市議時代は給料を受け取っていた可能性がある。茨城県議会には原発メーカー・日立製作所の現職社員(長谷川修平民主党県議)もいる。 |
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東電社員の相澤耕太・八王子市議は、民主党会派の議員とともに、公費をつかって東電や東電関連会社の原子力施設をたびたび視察している。その報告書には原発容認、原発推進の考えがはっきりと書かれている。 |
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現職社員議員から定年退職に伴ってOB議員になった大沢久・船橋市議は現在8期目、鈴木秀郷・沼津市議は7期目で、20年以上議員をしているベテランだ。どんな「社員」だったのか疑問はぬぐえない。東電から退職金に加えて企業年金を受け取っている可能性は高い。 |
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